2019.10.23

「CRO成功事例から考える! 機械学習の時代に、マーケッターが価値を発揮する方法」セミナーレポート

2019年8月28日(水)、オウンドメディア事業部 CROグループ CROストラテジスト 好村俊一と、ソリューションアーキテクト事業部 デジタルイノベーショングループ シニアコンサルタント 森一真が、エイクエント・エルエルシー主催の「CRO成功事例から考える!機械学習の時代に、マーケッターが価値を発揮する方法」に登壇しました。 最先端のAIテクノロジーを活用したマーケティングソリューションをご紹介します。

機械学習ソリューションを活用したデジタルマーケティングにおける課題解決のスペシャリスト2名による

  • データ活用に関するマーケッターの課題
  • データアナリストが直面するマーケティング・顧客体験上の課題解決の最新事例

を織り交ぜたイベントとなりました。

WebサイトのCV(コンバージョン)数を伸ばすための施策は、大きく分けると、Webサイト流入数を増やすか、コンバージョン率を上げるか、このいずれかにあてはまります。このうち、コンバージョン率(CVR)を上げるための取り組みのことを、CRO(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率最適化)といいます。具体的には、ランディングページの改善、エントリーフォームの改善、Web接客の導入などです。

一般的に、CROを開始してからしばらくは、コンバージョン率はぐんぐん改善しますが、ひととおり施策を施し終えると、上がりにくくなってきます。人間がどんなに頑張っても100mを5秒で走れることはないのと同じように、コンバージョン率改善にもどこかに限界があるからです。問題は、自社サイトのコンバージョン率にまだ改善できる余地があるのか、もう限界なのか、その見極めが難しいということです。

電通デジタルが担当したある金融会社のCRO案件でも、同じ悩みに直面していました。CROの実施により、初年度は申込者数増加に成功したものの、次年度におけるCV数のさらなる増加施策に頭を悩ませていました。担当者は「すでにCROで売り上げを増加させられる限界に達しているのではないか......」と思うと同時に、「いまだ自分が発見していない伸びしろがあるのかも......」という考えも抱いていました。

そこで、機械学習ソリューションをCROのマーケティング技法に活用することで、人間の力では到達できない領域に"解"を見つけることができるのではないかとの考えに至り、CROマーケティング領域と機械学習領域が連携し、ソリューション開発に取り組みました。

結果、機械学習を活用した顧客セグメンテーションおよびパーソナライズ最適化のソリューションを開発し、月間数千万円の収益純増を見込む改善に成功。本レポートでは、その一部をご紹介いたします。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

オウンドメディア事業部
CROグループ
CROストラテジスト

好村 俊一

ソリューションアーキテクト事業部
デジタルイノベーショングループ
シニアコンサルタント

森 一真

エイクエント・エルエルシー
マーケティングマネージャー

宮崎 洋史

CROソリューションとは

CROは、CVR(Conversion Rate:コンバージョン率)を高めるWebソリューションの1つです。 好村はCROの目的を、「来訪した訪問者のCVに至る率を最大化させ、売り上げを上げること」と定義し、その簡単な方程式を示しました。図1は、「CVRを増加させるための方程式を理解し、それに足る情報を加えることで改善を行う」ことでCVRが最大化するという方程式を示しています。

図1:CVRを増加させるための方程式
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CVRを増加させるために重要な要素について、好村は「"誰に"・"いつ"・"何を"の3つを解読することが改善の近道」と語り(図2)、続けて「徹底的なデータドリブンで線と面から問題を見つけ出し、課題に落とすことでCVR改善はできる」と、CVR改善の重要な考え方を示しました。

図2:売り上げを上げるために重要な考え方
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CROソリューションが直面した苦悩とは

好村は次に、CROソリューションを活用した事例をもとに、AI(機械学習)を取り入れた背景を説明しました。
CROの導入目的は、「自然検索経由でのオウンドメディアにおけるCV数増加」を目的とした施策を実施することでした。
まず初期CRO施策として、顧客行動から顧客を属性ごとに類型化し、類型化されたグループからWebサイト内回遊状況を可視化。さらに、Webサイト回遊状況とページ内行動からコンテキストを読み解き、課題を見つけた結果、約113%CVRが改善され、広告価値換算で年間数億円に及ぶCVを獲得することができました。

しかしながら次年度、さらなるCV数増加を目指すにあたって、好村は「人間の力だけでは分析・アプローチの限界があった」と言います。CVRを改善するにあたっての原則として、統計的有意差による再現性が求められます。そのため、さらにCV数を増加させなければならない場合、それだけのサンプル数に見合う数=かなりの大数に対したアプローチが基本となります。

次年度目指すべきさらなる改善施策は、より大数における課題(ボトルネック)を解消する施策となるため、施策の粒度や分析の深度をもっと深める必要がありました。人間の力でできうる分析の限界や、施策検証における再現性の判断が不可能なのではないかと考え、分析力をカバーする打ち手を模索していました。

電通デジタル 好村俊一

機械学習とは

続いて森が、機械学習の概要や基本的な考え方を説明しました。機械学習は、データから有用なパターンをアルゴリズムにより自動抽出することで特定の課題を解く手法です。おおまかに「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3カテゴリが存在します。ここで言う「教師」とは、入力と正解がセットになった学習データのことです。

森は「一番わかりやすく、また、ビジネスに使われやすいのが教師あり学習」と語りました。「教師あり学習では、例えばA/Bテスト接触後の顧客にどのような行動の変化があったかを説明したり、顧客がリピート購入する可能性をスコアリング(図3)することができる」と説明しました。

図3:新規購入者がリピート購入するかどうかのスコアリング
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マーケティング領域特有の難しさ

森は「AI(機械学習)をマーケティングで有効に活用するには、マーケッターがある程度おさえるべきポイントがある」(図4)としながらも、「現状はマーケッターとデータサイエンティストの連携がうまくいっておらず、目に見えて成果が上がっているプロジェクトはまだ少ないのではないか。業務効率化のためのAI(機械学習)システム開発と違って顧客心理が絡むため、データ分析を理解するマーケッターと、マーケティング思考を理解するデータサイエンティストがお互いに協力してプロジェクトを進めなければ簡単には成功しないだろう」とマーケティング領域におけるAI(機械学習)活用特有の難しさを語りました。

図4:AI(機械学習)の活用でマーケッターがおさえるべきポイント
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また、そのような難しさへの現実的な対策として、「通常、ビジネスで良く使われるのは教師あり学習だが、データを類型化する教師なし学習手法(図5)や各種可視化技術をうまく組み合わせて使うことで、データサイエンティストはマーケッターの理解を助けることができる」と森は説明しました。

図5:教師なし学習手法や可視化技術によるセグメントの把握
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AI(機械学習)を活用した施策とは

前述のCROが直面した課題をカバーしつつ、CROマーケティングを踏襲したAI(機械学習)施策を活用すれば、さらなるCV数増加という目的達成ができると考え、森はAI(機械学習)によるモデル構築・データドリブン施策を実行しました。 「今回のプロジェクトで実施したフローは大きく5つある」と説明し、続けて「モデル構築後の示唆抽出が重要である」と強調しました。

図6:AI(機械学習)を使った施策のフロー
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「AI(機械学習)により、人間の力では判断が困難な顧客データの特徴やCVに至る確率を、人間が理解可能な粒度に解釈し、顧客の購買行動を時系列に可視化するモデルを学習。それにより、顧客一人ひとりの時系列行動を加味したCV確率の変化点を捉えることに成功した」とまとめました。

つまり、人間の分析では「判断できない」もしくは、「多すぎる・細かすぎる」ものとして除外してしまうような複雑なパターンでも、AI(機械学習)の力で大量の過去行動ログから「カギとなる重要な特徴の組み合わせ」を抽出し、さらなるパーソナライズ化を実現する施策開発に成功したことになります。その結果、「毎月数千万円の増収効果を得られた」という結果につながったと説明しました。

電通デジタル 森一真

機械学習の時代にマーケッターが力を発揮するためには

好村は「昨今、労働市場から働ける人材が少なくなることが予測されており、労働力を担保する必要がある。その1つがAI(機械学習)だと考えております。また一方、AI(機械学習)が人間の職を奪う時代とも言われており、とても難しい時代であると考えます」と時代の流れをふまえつつ、「AI(機械学習)はやはり、まだデータでしかないので、それを読み解くのは人間(マーケッター)の仕事だと思います。AI(機械学習)に寄り添い、活用することで、人間の価値を見つけることが大事だと考えます」と、マーケッターの発揮すべき価値を語りました。

森は、「各領域をオーバーラップできる人材がマーケッターとしての価値が高いと考えます。高度に複雑化したデジタル時代の顧客体験を扱うため、AI(機械学習)を扱えるデータサイエンティストを含む社内外の各種ステークホルダーに歩み寄り、意見や示唆を集約したうえで戦略を立案・推進することができるマーケッターは高い価値を発揮できると考えます。 また、そのような次世代のマーケッターに寄り添った分析が可能なデータサイエンティストは、これからいっそう高い価値を発揮するでしょう」と語り、今回のセッションを締めくくりました。

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