2020.04.15

NewsPicksのライブ経済情報番組「The UPDATE」で見えてきた、動画プラットフォームとしてのTwitterの新たな可能性とは?

2018年6月、株式会社ニューズピックスと株式会社電通は業務提携を行い、両社の合弁による新会社、株式会社NewsPicks Studiosを設立しました。NewsPicks Studiosは、5G時代へ向けて新通信環境に最適化した新たなコンテンツ(ポストテキストコンテンツ)の創出を目指しており、その第1弾として2019年1月より、Twitter上からのライブ配信によるオリジナル経済番組「The UPDATE」を配信しています。
この取り組みにおいて電通デジタルは、広告商品の設計と、広告をご出稿していただく広告主のサポートを担当しています。
配信開始から1年が経過し、2020年3⽉には、いよいよ5G(第5世代移動体通信)サービスが開始されました。
本記事では改めて、「The UPDATE」を制作した経緯と成果、なぜTwitterで配信することになったのか、また、媒体社の立場からTwitterの動画プラットフォームとしての実力をどう見ているのかなどを、株式会社NewsPicks Studios COO木野下有市氏、CGO(Chief Growth Officer)塩見拓也氏に伺いました。電通デジタルからはTwitterを担当するプラットフォーム部門の小堀進也が同席し、Twitterの動画プラットフォームとしての実力と魅力をご紹介しています。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

株式会社NewsPicks Studios
取締役COO

木野下 有市

株式会社NewsPicks Studios
CGO

塩見 拓也

プラットフォーム部門
部長

小堀 進也

NewsPicksのライブ配信番組「The UPDATE」とは

──ご担当されている業務を、それぞれお聞かせください

塩見 : NewsPicks Studiosで、ビジネスサイドの責任者をやっています。制作チームと一緒に番組を作りながら、「The UPDATE」の広告媒体としての価値を高めるために、広告主を探して、1個1個案件を作っていくという、広告企画の部分を担当しています。

木野 : 下NewsPicks StudiosのCOO(チーフオペレーティングオフィサー)として、塩見が担当している広告領域も見つつ、制作を含めた事業開発を管轄しています。その他、コーポレート業務として、予算策定や人材採用など多岐な業務を担当しています。

小堀 : 私は電通デジタルで、ソーシャルプラットフォームの担当をしています。常日頃から、プラットフォーマーの皆さんと一緒に、どうすれば、それぞれのプラットフォームの価値や売り上げを増やしていけるかを企画、実行しています。今回のプロジェクトも、広告会社の立場からさまざまな場面で関わらせていただいています。

塩見拓也氏(NewsPicks Studios)

──NewsPicksのライブ配信番組「The UPDATE」は、どういう番組なのでしょうか?

木野 : 下簡単に言うと、「経済版 朝まで生テレビ」です。気鋭の若手経済人や論客、専門家に来ていただき、1つのテーマについて、丁々発止で討論していただきます。ターゲットは、20~30代の「変化・挑戦を求めるビジネスパーソン」。経済トピックを中心にしたいろいろなテーマを扱いながら、彼らの興味を引くような番組作りを心掛けています。

放送時間は1時間、編集なしのライブ配信が最大の特徴です。そのメインプラットフォームがTwitterなのも、「The UPDATE」の特徴だと思っています。

毎週火曜日22時から、Twitterの他、NewsPicksのアプリ上でもライブ配信をしています。過去の放送は、NewsPicksアプリのアーカイブページの他、「見逃し配信」という形でYouTubeでも配信をしています。

木野下有市氏(NewsPicks Studios)

──電通デジタル、さらには電通グループ全体として、今回のプロジェクトのどの部分に、もっとも価値を感じたのでしょうか?

小堀 : 今回のプロジェクトの目的の1つに、Twitterの価値の向上があります。そのために、他のプラットフォームにはない魅力を磨いて、それを押し出す必要がありました。

その魅力とはいったい何か。Twitterは「What's Happening」――すなわち「今、何が起こっているのか」がわかるプラットフォームだとしています。そのため、日本市場においても、リアルタイム性が求められる領域に成長のチャンスを見出しています。電通グループとTwitter Japanはこれまで、スポーツコンテンツを中心にさまざまな取り組みを推進してまいりました。

そうした状況で、経済というこれまでにない切り口で、「今、何が起こっているのか」を知るための新しい動画メディアを作ろうとするNewsPicksとTwitterが掛け合わされれば、大きな可能性があるのではと考えました。

──電通デジタルは今回のプロジェクトでどのような役割を担っているのでしょうか?

小堀 : 電通デジタルの役割は大きく2つで、1つは魅力ある広告商品を設計すること。もう1つは、番組に魅力を感じて広告をご出稿いただく広告主のサポートです。広告主の商品・サービスの魅力や特徴が、視聴者により良いかたちで伝わるよう、タイアップ手法なども含めてプランニングさせていただいたり、広告運用を行ったりしております。

小堀進也(電通デジタル)

──動画配信に際して、Twitterというプラットフォームを選んだ理由はなぜでしょうか?

 

木野下 : 2014年から5年ほどアメリカにいたのですが、Twitterで配信されるニュース番組が非常に増えていました。例えば、BuzzFeed Newsの「AM2DM」や、Bloombergによる「QuickTake(旧TicToc)」などです。

「AM2DM」は平日午前中にTwitterオリジナルコンテンツとしてライブ配信される1時間のモーニングショー、「QuickTake(旧TicToc)」はライブ配信ではなく、1~2分の短尺に編集されたビデオ/音声ニュース専用のメディアで、Twitterだけでなく、複数のソーシャルプラットフォームで配信されています。いずれも、かなりのビュー数(動画の再生数)が出ているうえ、銀行、自動車メーカーなど、多くの企業が広告主として名を連ねていることに驚きました。この流れは日本にも来るはずだと思ったのです。

BuzzFeed NewsやBloombergに相当する存在として、NewsPicksがTwitterと組んでライブ配信による動画番組を始めたら、これは相当な広告価値のあるコンテンツになるはず。Twitter Japanに相談したところ、Twitter Japanもアメリカでの成功事例を踏まえて、まさにこのビジネスモデルをスタートしたいと思っていたところだった、ということで、トントン拍子に話が進んだという経緯があります。

そこで、2018年6月に電通とNewsPicksの合弁会社NewsPicks Studiosを設立し、2019年1月から「The UPDATE」が始まったというわけです。

──開始から1年経った現在、手ごたえはいかがですか?

塩見 : 「The UPDATE」がターゲットにしている、20~30代の「挑戦・変化を求めるビジネスパーソン」というユーザー層は、これまでマス媒体ではアプローチする手立てがほとんどなかったこともあって、この層にリーチしたいとする広告主からの引き合いが多く、大きな手ごたえを感じています。


「The UPDATE」の広告形態と出稿価値

──番組内での広告の形態と種類について、簡単にご説明ください

塩見 : 「The UPDATE」の広告形態は、大きく分けて2つあります。

まず1つは、「The UPDATE」本編に対するスポンサードです。議論中のテーブル上に商品を置いて、プロダクトプレースメント的に見せます。かつ、番組の途中で広告主のためのミニコーナーを差し挟みます。

また、この素材に関して、プレロールでTwitter広告が入ってくるようになります。ライブ配信中はもちろん、翌日以降に配信されるダイジェスト動画にもプレロール広告が表示され、コンテンツマーケティングの役割も果たせます。

もう1つは、いわゆるタイアップコンテンツの制作・配信です。The UPDATEに出演する人気プロピッカー(経済、ビジネス、医療、テクノロジーなど各分野のスペシャリスト)が出演する番組コラボコンテンツを制作して、Twitterから配信しました。

──広告主が「The UPDATE」に広告を出稿するメリットと、期待できる効果は?

塩見 : Twitterの魅力は拡散性の高さにあります。ビジネス系の話題は、興味がある人はすごくいるけど、ナショナルスポンサーが求める規模で考えると、やはり少ない。しかし、Twitterの拡散性を活用することで、コアなターゲットを軸にしながら大きく広げていくことができるわけです。昨年実施した番組スポンサード企画は、どれもエンゲージメントの数字も良く、数百万から1000万の再生数を達成しました。規模の観点からも広告主にご満足いただいております。

小堀 : スマホの普及や生活習慣の変化とともに、テレビCMだけではリーチしにくいターゲット層が増えていますが、それを補完する場所として、Twitterが選ばれていると思っています。実際、Twitter広告における動画広告が占める割合は、今50%を超えているんです。

他の動画メディアと比べて特長は大きく2つ。1つは、塩見さんも指摘したとおり、拡散性。YouTubeの場合、リーチに強みがあり、拡散性の観点では、Twitterの場合はリツイートや「いいね」されることでどんどん話題が広がっていく。そういった拡散性は強みだと思います。

もう1つは、ブランドセーフティーです。Twitterインストリーム動画広告の在庫となるコンテンツでは、Twitter Japanがきちんとコンテンツの安全性を審査し、優良なコンテンツをセレクトしています。この仕組みが、広告主の広告出稿に対するブランドセーフティーを担保するとともに、良質なコンテンツがそろっていることを強みとしています。

──ご出稿される広告主は、どういう業種が多いのでしょうか?

塩見 : NewsPicksのアプリでは、金融やBtoB企業の広告が非常に強いのですが、「The UPDATE」では、飲料の広告主とも良い実績を創れております。ただ、全体的には特にこの業種というものはなく、幅広くお声がけいただいています。

最近ではJAL、JALPAKなど、本当にさまざまな企業、団体とタイアップさせていただいています。それも「The UPDATE」のコアターゲットである「挑戦・変化を求める20~30代」への訴求ニーズが、私たちが当初思っていた以上に、いろいろな業界にあったからだと思います。

「The UPDATE」は、そういった広告主のニーズに合った形でカスタマイズして広告価値を作ることができる媒体になってきたと感じます。

木野 : 下広告の売れ方も、普通のマス媒体と違って、さまざまなパターンがあります。もちろん従来どおり、広告主からテーマを持ち込まれて、それを元に制作することもあります。また、通常の編集コンテンツとして制作していたところ、テーマを知った企業が急にスポンサーにつくこともあります。こういった部分は、ソーシャルプラットフォームならではのスピード感が活かされています。

塩見 : ただ、やはり討論番組なので、完全に広告主の言いたいことをそのまま言うことは基本的には難しいですし、出演者が何を言うのかは本当にわからないですよとは、お伝えさせていただいています。とはいえ、討論が面白くなりそうな切り口ならば、広告主と一緒に作っていくのは、スポンサーシップのやり方としてありだとしてやっています。
JAL、JALPAKの「なぜ日本人はハワイに魅せられるのか」などはこのような形で広告主と一緒にテーマを設定した例です。

広告主によってこまめにトピックを設定できたり、逆に設定したテーマによって機能的に広告主を探したりできるのは、やはりテレビとは大きく違う部分です。

木野 : 下最近はありがたいことに、多数お声がけをいただけるようになってきました。大型案件が目白押しで、非常にいい形で集まっています。

ただ、あまりにスポンサー色が強すぎると、視聴者の気持ちは離れてしまうものなので、その辺のバランスは大事にしなければいけない。幸いなことに、NewsPicksはすでに5年ほど、経済専門の活字媒体として、特にオンライン上で独自の存在感を作り上げてきたブランドでもあるので、そういった媒体特性を踏まえてお付き合いいただける広告主が多いのは、非常にありがたいと思っています。

一方で、NewsPicksのブランドイメージとは相容れないお申し出については、お断りすることもあります。何でもいいとなればコンテンツの価値は守れない。コンテンツの価値を守るためにも、明確な線引きは必要だと実感しています。

──Twitterを活用した今回のプロジェクトで、電通デジタルがこれまで培ってきた知見はどのように生かされていますでしょうか。また、電通デジタルのTwitter担当だからこそできたこと、という強みはどのような点でしょうか?

小堀 : 私たちは、過去にもTwitter Japanと連携して、スポーツコンテンツでインストリーム動画広告の商品設計・販売・運用を行ってまいりました。その経験から、Twitter・コンテンツホルダー・広告主・電通デジタルにとって「四方よし」となるためのスキームを、ステークホルダー間で密に連携を取り、スムーズに組み立てていくことができました。


動画プラットフォームとしてのTwitterの可能性

──今後、Twitter上でのライブ配信番組をさらに広げて、コンテンツを増やしていく予定はありますか?

木野 : 下今年の春夏を目途に「経済」をテーマにした新番組を企画中です。

われわれは、「経済」の定義を、かなり広く大きく捉えています。そもそも、われわれの日常生活はさまざまな経済活動の上に成り立っていることを考えれば、身の回りにあるあらゆる出来事を、経済という切り口で取り上げることは可能だと思います。

また、NewsPicksのファンの中心は40歳以下、20~30代のユーザーが全体の8割。こういった若いユーザーにきちんと刺さる企画を考えて、Twitter Japanと一緒に展開していきたいと思っています。

──動画プラットフォームとしてのTwitterの可能性について、お考えをお聞かせください

小堀 : 拡散性に加えて、「よりよく共存できるプラットフォーム」というのが、Twitterのもう1つの強みだと思っています。

例えば、テレビで放送されている、ドラマや映画、スポーツ中継やニュース番組などを見ながらTwitterでつぶやく、ダブルスクリーンでのいわゆる「ながら視聴」は、Twitterユーザーの利用動向として、ごく普通に見られる行動となっています。

たくさんつぶやかれることで、コンテンツにも注目が集まり、それがさらに多くのつぶやきを集めることになる。既存のコンテンツビジネスと共存でき、さまざまな用途で活用できるプラットフォームというのは、かなり強いポイントだと思います。

事実、近年Twitterを動画コンテンツが見られる場所だと認識するユーザー割合の高まりに合わせて、動画プラットフォームとしての魅力に気付き始めたコンテンツホルダーも増えてきました。特に、テレビやラジオ・雑誌など、いわゆるマスメディアがTwitter上で動画コンテンツを積極的に配信しており、動画プラットフォームとしてのTwitterの価値がさらに高まってきています。

塩見 : やはり、Twitterと言えば、拡散性とそれによる話題という大きな魅力があります。
たとえライトユーザーであっても、Twitterを開けばほぼ必ず、数万リツイートを集めた、いわゆるバズったツイートを目にすると思いますが、そういったマス感を体現しているのは、やはりすごいと思います。

木野下 : 「The UPDATE」の開始に際して、準備期間も含めると1年半ほど、Twitter Japanとさまざまなやりとりをさせていただきましたが、商品開発に関して非常にアクティブに機能している会社だなという印象を持っています。

「The UPDATE」も立ち上げ期は広告が入らなかったので、先行投資期間が続きましたが、その辺をサポートしてくれるようなディールを特別に準備していただいたり、今もプロモーション協力という形で幅広く支援していただいています。営業に関しても、当然、われわれが広告代理店経由で集めたり、NewsPicksが直接集めてくる案件が多いですが、最近ではTwitter経由での案件も増えていて、いろいろな側面でサポートしていただいています。

今や、当初ベンチマークにしていた、海外のライブ配信番組よりも、「The UPDATE」のビュー数(動画の再生数)のほうが多い状況になって、つい最近、Twitter本社の幹部が見学に来てくれました。

われわれとしても、Twitter Japanと協力して、Twitterでライブ配信動画を見るという文化・スタイルを定着させていきたいと思っています。

──最後になりますが、今後、電通デジタルはTwitterというプラットフォームを通して、どのようなことをしていきたいとお考えでしょうか?

小堀 : Twitterは日本において、まだまだユーザー数を伸ばしています。それは、Twitterで「いま」を見る・知る・感じることができることに、ユーザーの皆さんが利用価値を感じているからではないかと考えます。2019年の新元号発表やラグビーなどのモーメントにおいて、Twitter上でも大きな盛り上がりが起こったことは、その証左と考えます。
今後もスポーツをはじめとしたさまざまなイベントや社会的なムーブメント、モーメントにおいて、Twitterユーザーがさらに増えていくのではと考えます。Twitterの価値がさらに高まると考えられる中で、Twitter Japanと一緒に、広告主の広告価値を高めることができる広告商品を企画していきたいと思います。

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