2020.05.15

近未来の事業構想を行う発想支援ツール「未来曼荼羅」とは何か?

電通デジタル加形拓也に聞く10の質問

「未来曼荼羅」とは、近未来に起こることが予想される60の「未来トレンド」をまとめた発想支援ツールです。2010年に電通と共同でリリースし、以降、多くのクライアント企業の経営戦略立案や事業シナリオの策定、商品・サービス開発などに活用し、高い評価を受けてきました。

数年おきに内容を改定しつつ、クライアント企業に対して内々に提供する参考資料として活用してきましたが、2019年9月に最新トレンドを盛り込んだ大規模改訂を行い、新規事業策定、新規サービス開発で活用するための発想支援ツールとして、本格的な提供を開始しました。

電通デジタルでは、この「未来曼荼羅」を活用することで、クライアントの「近未来のありたき姿」や、外部環境における変化ドライバーの特定をスムーズにし、よりスピーディーな新規事業策定、サービス開発のお手伝いをしたいと考えています。

本稿では、「未来曼荼羅」策定メンバーであり、それを活用したコンサルティングサービスを実施する加形拓也が、「未来曼荼羅」とはいったいどういうものなのか、10の質問に答えるかたちで、その詳細をご紹介します。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

サービスイノベーション事業部
事業部長/コンサルティングディレクター

加形 拓也

Q1:「未来曼荼羅」とはひとことで言うと、何なのか?

「未来曼荼羅」とは、近未来に起こることが予想される60の「未来トレンド」をまとめたマップ形式の発想支援ツールです。

中長期(3~5年)の期間において、確実に変化していくトレンド、変化する可能性が高い60のトレンドを「未来トレンド」として選定。「人口・世帯」「社会・経済」「まち・自然」「科学・技術」の4領域に分けて、1枚のマップにまとめています。

円の中心部にマクロなトレンドを、周辺部に行くほどミクロなトレンドを配置して、現状を把握しやすいように編集しています。

また、それぞれの「未来トレンド」ごとに、1ページで概要をまとめた冊子(約60ページ)を作成しており、正式には、マップと冊子のセットをまとめて「未来曼荼羅」と称しています。

「未来曼荼羅」の目次部分。4領域、60テーマを一覧している
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それぞれのテーマごとにその概要を1ページにまとめている
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60のテーマではグローバルなトレンドも押さえていますが、基本方針としては、日本の生活者の行動や気持ちが、どういう風に変わっていくのかというところにフォーカスを置いています。

また、「曼荼羅」の名のとおり、幅広いトピックを対象に網羅していることが、ひとつの特徴です。中長期にわたる新規事業やサービスを考えるためには、自社が得意とする領域だけで考えるのではなく、社会とどうかかわっていくかという視点から検討する必要もあるからです。

そのためにも、まずは「未来曼荼羅」にひととおり目を通すだけで、検討すべき現状を把握できる内容になるように、トピックの取捨選択を行っています。


Q2:「未来曼荼羅」にある60の「未来トレンド」は、どのような基準で選ばれているのか?

「未来曼荼羅」は、日頃さまざまな業界の事業・サービス開発をサポートしている電通デジタルのサービスイノベーション事業部のメンバーを中心に、電通グループ各社内外で未来予測や事業開発に携わっている社員が加わり、20名ほどでプロジェクトチームを作って改訂を行っています。

メンバーは、日常から、さまざまな業界の変化や、その変化に伴う生活者の未来について考えています。「未来曼荼羅」で取り上げる「未来トレンド」のベースは、そうした彼らの経験や皮膚感覚に基づいてピックアップされます。

最新の大規模改訂は2019年。その際のメンバーによる追加候補は150~200ほどありました。その中から最終的に60に絞り込むために、討議のほか、別途リサーチもかけながら決めていきました。


Q3:「未来曼荼羅」はどこで入手できるか?

私たちのチームでは、クライアントの新規事業開発や、サービス開発のための約3か月の伴走コンサルティングプログラム「未来デザイン」を提供しています。「未来曼荼羅」は、「未来デザイン」のプロジェクトに関わるクライアントメンバー全員が、「未来はこうなっていきそうだ」という理解や見立てを統一するための支援ツールとして提供しています。「未来曼荼羅」単体での提供は、現時点では予定していません。

なお、コンサルティングプログラムで提供する「未来曼荼羅」は、紙資料としてお渡ししています。マップがA3横1枚、冊子はA4縦で60ページほどのボリュームです。

サービスイノベーション事業部では、「未来曼荼羅」を活用した新規事業構想体験ワークショップを定期的に開催しています(無料)。ご参加いただくと、「未来曼荼羅」の実物をご覧いただくことができます。

また、電通デジタルホームページ上から、冊子の一部を抜粋したサンプルPDFをダウンロードしていただけます。


Q4:「未来曼荼羅」はどれぐらいの規模の企業を対象としているか?

「未来曼荼羅」を必要とする企業としては、いわゆる大規模の企業を想定しています。ざっくりとしたイメージですが、社員数数千人規模で、多くの事業会社を傘下に持つ組織構造の企業と考えていただいていいと思います。

大企業が新規事業開発を行う際に、最初の段階でつまずきやすいポイントが2つあります。

1つは、新規事業開発のためのリソースが豊富なゆえに、どの分野に踏み出すのかという部分で迷うこと。

もう1つは、会社組織自体が専門分化しているため、新規事業開発を検討するメンバーも同様に専門分化しており、現状把握や認識の一致が難しいこと。

「未来曼荼羅」は、大企業ならではのこうした問題を解決するための発想支援ツールとして活用いただけると思っています。


Q5:「未来曼荼羅」はどういう風に活用されることを想定しているか?

新規事業開発というと、今までやってきたこととはまるっきり違う、まったく新しいことをやらなければならないと思い込んでいる企業がとても多いです。そういった大きなスケール感で考え始めると、結局、どうすべきかわからないまま行き詰まり、新規事業開発そのものが頓挫してしまうケースは珍しくありません。


そうならないために、まずは、未来の社会がどんな方向になりうるのかということを幅広く予測する。そのうえで、自社のリソースを活用して、どの社会課題に対して向き合い、どの未来にコミットできるかを検討する。その議論のための足掛かりとしてご活用いただきたいと思っています。


Q6:「未来曼荼羅」はどういった経緯で作られたのか?

「未来曼荼羅」は、2010年、10年先に通用するような製品開発のため、未来に起こりうる事象をまんべんなく検討すべく、電通のマーケティングチームによって作られました。その時すでに「未来曼荼羅」という名称があてられており、そのまま引き継がれて今に至っています。

その後、数年おきにアップデートを行いながら、おもにコンサルティングの現場を中心に、社内資料として活用し続けてきたこともあって、電通グループの各社内では認知率も高く、比較的よく知られたツールです。

この10年でさまざまなクライアントに提供してきました。この1年、サービスイノベーション事業部イノベーションデザイングループだけでも10社ほどに提供し、活用していただいています。


Q7:「未来曼荼羅2019」「~2020」「~2020-BEYONDコロナ-」はどこが違うのか?

現在使用している「未来曼荼羅2020」は、2019年9月に発表した「未来曼荼羅2019」をさらにアップデートしたものです。

2019年の改訂に際しては、60の「未来トピック」のうち、半分以上内容を変更しました。さらに、2019年から2020年にかけて多くの分野で新しい調査結果等が出たものを反映して「未来曼荼羅2020」とし、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大により、さらに急速な変化が現れたことから、これまでの内容を大幅に改訂して2020年4月末に「未来曼荼羅2020-BEYONDコロナ-」として供用開始しています。

本記事制作中の2020年4月現在、新型コロナウィルスの感染拡大がいつまで続くのかまったく予断を許しませんが、「未来曼荼羅2020-BEYONDコロナ-」では社会の急激なパラダイムシフトに着目しています。"withコロナ"であっても"afterコロナ"であっても不可逆的に変化していくことはなにか、という観点で消費行動や生活者の個人データに対する意識など、新たに8つのテーマを追加しました。既存の各テーマについても見直しを行っています。

本来「未来曼荼羅」は2年に1回を目途に改訂を行っており、2019年の改訂はその定期的な作業の一環でした。これまでは、さほど大掛かりに内容を変更することはありませんでしたが、世の中の変化が激しくなっており、今後も社会情勢の変化を見極めながら高頻度で改訂を加えていこうと考えています。また、そのための情報収集・議論は、日々メンバー内で行っています。


Q8:「未来曼荼羅」を使ったコンサルティングサービスの具体的な事例は?

以前、外部のセミナー(日経クロストレンド)で少しお話しましたが、現在、株式会社ニチレイとともに「未来曼荼羅」を起点にした新規事業創出に継続して取り組んでいます。

具体的な内容は、次の記事で掲載予定の、ニチレイの小泉雄史様との対談でご紹介するので、ここでは基本的な流れだけお話しします。

ニチレイの事例では、新規事業創出のために、ホールディングスから4名、各事業会社から2~3名ずつ参加して、総勢15~16名のチームが結成されました。

メンバーは事前に「未来曼荼羅」を読み込み、気になるトピックをピックアップした上でブレストに参加。議論を進めていきます。

網羅的にトピックが盛り込まれている「未来曼荼羅」を起点とすることで、現在の自分たちのビジネスを超えた問いが生まれてきます。その問いに対して、新たにリサーチを加えて仮説を作るということが、新規事業や新規サービスを考えるうえで、もっとも大切なプロセスになります。

加形のチームが新規事業開発の際に実施する「未来デザインプログラム」のワークプラン例。「未来曼荼羅」を活用したブレストは、「①未来社会の仮説を立てる」ためのチームビルディングとして実施される
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「未来曼荼羅」を基軸にセッションを繰り返し、多くのアイデアを出していく
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仮説が出てくるようになれば、事業の方向性も見えてくるようになります。あとは、ワークショップでテクノロジーの変化を一覧できる弊社オリジナルのカードによる発想や、さまざまな業界の先端サービスについて、サービスのGOOD POINT、実装に使われている技術やビジネスモデルなどをまとめた『Edge Service Dictionary ~先端サービス辞典~』(電通デジタル作成、一般には入手不可)から刺激を受ける発想法など、さまざまな手法を組み合わせながらアイデアをたくさん出していき、コンセプトを作っていきます。そこに、自社のリソースを組みわせることで、どのような事業が実現可能かを一覧化した「未来事業コンパス」を作成します。

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出てきたアイデアをさらに深掘りしてコンセプトを立て、そこに活用可能な自社のリソースを組み合わせる。具体的な新規事業アイデア集である「未来事業コンパス」を作成する
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「未来曼荼羅」を使ってブレストを行い、「未来事業コンパス」という形に出力するまでの期間は、おおむね3か月~3か月半。近年は特に多くの企業で、構想の部分はなるべく手短に行い、いかに早く実現に向けて動き出せるかということを重視しているので、そのためにも「未来曼荼羅」の活用はマストだと思っています。


Q9:「未来曼荼羅」に興味があるが、何から始めたら良いのか?

まずはご連絡をいただければと思います。事例紹介セミナー等を高頻度で開催していますので直近の予定をご案内いたします。

大企業で新規事業プロジェクトの構想~実装を行う場合、予算も数千万以上になり、関わる部署も多様になりますので、私たちがサポートするプロジェクトでもオーナーはボードメンバーとなることがほとんどです。そういったポジションの人が先頭に立つような社内の合意形成がなければ、なかなか推進できないと思います。

ただ、プロジェクトのはじまり自体は、上級職からの呼びかけよりも、やる気のある1人の社員の方から始まることが多い印象を持っています。

ニチレイの事例に関しても、たまたまわれわれのセミナーにいらした経営企画の部長職の方との名刺交換から始まりました。それがきっかけで、まずは主だったメンバーの方と電通デジタルの社内で「未来曼荼羅」を使ったブレストを行い、そのあとニチレイ社内でも同様の勉強会を行い、徐々に他の社員を巻き込んで社内に改革の雰囲気を醸成させながら、順序立ててプロジェクト化していきました。


Q10:「未来曼荼羅」の詳細や、「未来デザイン」に関するコンサルティングサービスについて、詳しく知るにはどうしたらいいか?

こちらについても、まずはお気軽にご連絡ください。

2020年からは「未来デザイン」のプロセスをすべてオンラインで行えるように使用ツールを改訂しました。こちらから予約してご参加いただけます。メールやテレビ会議などを通じて貴社の課題をお伺いしながら最適なやりかたを一緒に考えるところから始めさせてください。

先にも述べたように、サービスイノベーション事業部では、「未来曼荼羅」を起点にした事業創造プログラム「未来デザイン」に関する無料セミナーを定期的に開催しています。ここで「未来曼荼羅」をご覧いただけるほか、新規事業創出のための具体的なプロセスをご紹介しているので、ぜひ、併せてご参考にしていただければと思います。

※次回は加形とニチレイご担当者様との実例対談編です
ニチレイはなぜ、新規事業のアイデア発想に「未来曼荼羅」を活用したのか?

未来曼荼羅 2020 サンプル

冊子の一部を抜粋した未来曼荼羅 2020 サンプルは下記からお申込みいただけます。

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