2020.05.19

ARはコマースをどう変えていくのか?

ARプラットフォーム「ARaddin™」を活用した新たなマーケティングソリューションとは

電通デジタルは、ARプラットフォーム「ARaddin(アラジン)™」を開発・運用するZEPPELIN(ツェッペリン)と、2019年11月に業務提携契約を結び、「ARaddin™️」を活用した新たなマーケティングソリューションの開発を共同で行っています。

目指しているのは、オンラインとオフラインの境目のない、新しいコマースのかたちです。

ARを活用した新しいコマースは、私たちにどんな未来を見せてくれるのか。デジタルコマース事業部 事業部長の三橋良平と、株式会社ZEPPELIN代表取締役社長 鳥越康平氏による対談レポートです。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

デジタルコマース事業部
事業部長

三橋 良平

株式会社ZEPPELIN
代表取締役社長

鳥越 康平

コマース視点から見た「ARaddin™️」の魅力

──「ARaddin™️」とは、どういうサービスなのでしょうか?

鳥越 : AR(拡張現実)を活用して、広告からコマースまでを一気通貫で行うプラットフォームです。ARプラットフォーム上で、企業や人がクリエーティブを作って発表したり、商品を売買したりできるようになります。将来的には、楽天やAmazon、Google広告といったプラットフォーマ―を超える規模を目指しています。電通デジタルは、そのビジョンを実現するための大事なパートナーです。

──業務提携のきっかけは、何だったのしょうか?

鳥越 : もともとは、TikTokのような動画のシェアリングプラットフォームを作ろうしていたのですが、さまざまな理由により開発を一時中断していました。

2019年の夏ごろ、たまたま弊社の社員と電通デジタルの社員が知り合いで、それをきっかけに三橋さんを含めた数人でお会いして、「ARaddin™️」の原型となるアイデアをお話ししました。そこから、ARに関する部分だけは使えそうと分かり、急速に事業が立ち上がりました。それが「ARaddin™️」です。

鳥越康平氏(ZEPPELIN)

──三橋さんは「ARaddin™️」のどこに興味を持たれたのでしょうか?

三橋 : 私は2001年、電通に入社、2008年に「47CLUB」を運営する事業会社に出向し、3年で黒字化した後、電通に戻って、それ以来ずっとコマース領域を担当しています。電通デジタルに入ったのは、2016年です。私が現在所属するデジタルコマース事業部は、モール型EC、自社ECやテクノロジーを使った企業の収益源づくり、新しい購買体験づくりといった企業のコマース事業をサポートをしています。

長年この領域を担当してきて、ずっと課題にしていたのが、オンラインとオフラインをどうつなぐかということでした。ECと店舗の2つの異なる売り場体験を、1つの体験として融合するためには、新しい技術が必要だと思っていました。漠然とではありますが、おそらくそれはARだろうと考えていたときに、ちょうど鳥越さんにお話を伺ったわけです。

今回の提携に関しては、どちらかが積極的に働いたというよりは、お互いがそれぞれ、自分が携わる業務の未来を話しているうちに、共通点が見えてきて、自然にまとまったという感じです。

三橋良平(電通デジタル)

ARプラットフォームをリリースした理由とは?

──「ARaddin™️」を構成する技術であるARについてですが、「Pokémon GO」のヒットがあるにしても、まだ一般消費者にはなじみの薄い技術のイメージもあります。

鳥越 : ARのさきがけと言えば、2009年に提供が開始された「セカイカメラ」がありますが、残念ながら2014年でサービスを終了しています。

2016年に「ポケモンGo」がリリースされたものの、おっしゃるとおり、今なおARに関して、生活者の理解が進んだとは言いがたいのは事実です。それでも、ARを前面に押し出したサービスをリリースするのは、2019年にAppleの「ARKit(エーアールキット)」、Googleの「ARCore(エーアールコア)」というARフレームワークが相次いでアップグレードされて、非常に高品質になったことが大きく影響しています。

おそらく今後は、これらのフレームワークを使ったアプリが多数開発されて、ARは生活者にとってより身近な技術になっていくはずです。だからこそ、われわれは「ARaddin™️」というプラットフォームを活用して、コマースの分野で一歩先んじていきたいと、今この時期にアクセルを踏んだわけです。


なぜARでコマースなのか?

──ARとコマースの関係性について、現時点ではどのようなイメージをお持ちですか?

三橋 : この20年で、ネットでモノを買うことは一般化して、さまざまなものがデジタルで売買されるようになり、コマースの概念が拡張しました。今、しきりにOMO(Online Merges with Offline)やO2O(Online To Offline)と言われていますが、オンラインとオフラインの融合は、まさにARの真骨頂です。ARとコマースの相性は非常に良い。「ARを見る」ことが日常になれば、「ネットでモノを買う」ことが普通になったように、「ARを通じてモノを買う」こともいずれ普通になるだろうもと考えています。

ARと言えば、その名のとおり、実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示させるという機能ですが、もっと本質的な機能に「情報を圧縮する」というものがあります。この機能をコマースと結びつけることで、ユーザー体験は大きく拡張していきます。

例えば、ARプラットフォーム上で気になる商品を見ると、その商品に関する基本情報、価格だけでなく、それを買ったユーザーのレビューまで一気に一覧できます。商品を探すだけで、それに付随する情報を一気に引っ張ってくることができるのです。また、その集約された情報の時間軸での推移もデジタル上に残ります。

早々にそういったショーケースを、われわれが協力して作っていくことで、生活者にとって「ARを見る」「ARを通じてモノを買う」という行為が日常化するようスピードを上げて取り組んでいく予定です。現実かARかを意識しなくなる状況に一気に持っていきたいと思っています。


状況が人間の変化を加速させるかもしれない

──実際にリリースできそうなサービスなどはありますか?

鳥越 : はい、現在考えているのは、「ARaddin™️」を活用したARコマースです。現在は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、日常の買い物にもためらいを感じる人がたくさんいます。そういった方々に対して、外出することなく、自宅にいながらいつもと変わらない買い物体験を提供することができると考えています。弊社では、この4月に、配達時のコロナ感染リスクを減らす「非接触配送™️」を開始しました。ユーザーは配送してほしい商品を、「ARaddin™️」を通して購入することができます。

──デジタルコマースが進化した今なお、現実の店舗が残っているのは、「実際に見て、触って、使ってみないとわからないよね」というショーケース的な需要が根強いからだと思います。なかなかそのへんの習慣とか感覚というのは、いきなりは変わらないものだと思うのですが、ARはそこを一気に超えられるのでしょうか?

三橋 : 平時であれば、やはりその山は越えられなかったと思います。しかし、2003年に中国でSARSが流行したとき、感染防止のために外出を自粛した人たちがネットで買い物をするようになったため、アリババを筆頭に各種ECサイトが大きく売り上げを伸ばし、ネットで買い物をするという行為が浸透しました。並行して、キャッシュレス、ソーシャルサービス、イベント、教育の分野でのデジタル化が一気に進んだと言いますが、今の状況はそれと似ていると思います。買い物をしたいけど、できない。だったら、テクノロジーの力でこの不都合を解決しできないか。そこに、手触り感のあるARプラットフォームが受け入れられる余地が出てくるはずです。

鳥越 : この状況は、今なお終わりが見えません。これまで当たり前に行ってきたことが物理的に抑制されるのであれば、人間のほうが変わるしかない。買い物をするという行為が、自然と変わっていくだろうと思います。


「ARaddin™️」が目指す世界とは?

──今後、「ARaddin™️」を介して、どういった世界を目指していこうと考えていますか?

鳥越 : そもそも、この「ARaddin™️」を始めた理由のひとつに、現状の広告への疑問がありました。今なお、一方的に情報を与え続けるような、インタラプション(割り込み、邪魔)マーケティング的な広告が非常に多い。そんな現状をどうすれば変えられるのだろうと思ったときに、「テクノロジーの力で、ユーザー自身が広告に楽しんで参加できるような仕組みを作ればいいんだ」と気づいたんです。それを可能にするのがARなのだと。

「ARaddin™️」を活用することで、広告だと思わないぐらいにさりげなく、いつの間にか自分の日常の中に自分の好きなものが現れて、もしそれが気に入れば、そのまま買えるというスムーズな流れを持ったコマース世界をどんどん広げていきたいと考えています。

──コマースに関わるクライアントの多くに共通して見られる課題はありますか? またそれは、デジタルコマースからARコマースに変わることで解決可能なのでしょうか。

三橋 : マーケットイン的な考え方だけでモノづくりをするのは、モノづくりを生業にする人にとって、本質的なことではなく、 「うちの商品って、ここが本当にいいんですよ!」と言いながら売るほうが、作るのも売るのも楽しいだろうし、それに賛同するファンもできやすいのではないかと思います。そういう世界が来るように、電通デジタルは、売るための仕組みや仕掛けを作ってお手伝いしたいと思っています。

広告とはそもそも、モノを売るために認知を取るという過程のひとつです。かつてはそのつながりはシンプルなものでした。メディアの多様化、デジタルマーケティングの隆盛に伴って複雑化していきましたが、今また再び、「欲しい人にしっかり情報を届ける」ことが、シンプルに行える世の中になってきているような気がします。

売り場で気持ち良い体験をして、商品を買う。商品を使って気に入ったら、今度は別の商品を買って、ブランドのファンになるという、シンプルかつヒューマンタッチな「モノと自分との関係」を作る売り方や見せ方ができるようなお手伝いをしたい。ごくごく当たり前の話なのですが、そういった本質こそが大事だと考えています。

鳥越 : これからは、プロダクトアウトでモノを作ったら、絶対にどこかのニッチには刺さるという時代がやってきます。なぜなら、AIが自分の好みを全部解析してくれて、その膨大なビッグデータでマッチングができるようになっていくからです。商品そのものに魅力がありそして、その商品を好む人とマッチングができれば、良い「モノと自分との関係」が構築されると思います。

三橋 : いうなれば、商品がメディア化してきます。D to C(Direct to Consumer)への流れがさらに加速していくのではないでしょうか。

鳥越 : こうした変化はARによって、近い将来必ず現実のものになると思っています。それを考えると、私自身もわくわくするし、未来が本当に楽しみです。

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