2020年12月01日

コラム セミナー/登壇

アドテック東京2020に、電通デジタルから6名が登壇

※所属・役職は記事公開当時のものです。

2020年10月29日~11月6日、アジア最大級のマーケティングカンファレンスである「ad:tech tokyo2020(アドテック東京2020)」が、オンライン×オフラインのハイブリッド形式にて開催されました。

12回目の開催となる今年のカンファレンスには、合計59セッションに総勢211名の現役トップマーケターが登壇。電通デジタルからも6名が登壇しました。本稿では、その6つのセッションの内容を、電通デジタル社員の発言を中心にしたダイジェストでお届けします。

広告とPRの境界線

デジタルマーケティングの隆盛によって広告の均一化が進むにつれて、PRの重要性が増しています。またSNSの浸透に伴い、コミュニケーションのDtoC(Direct to Consumer)化が進み、PRと広告との境界線が曖昧になってきました。本セッションでは、PRの本質と重要性についてディスカッションが行われました。

株式会社吉野家 CMO田中安人氏がモデレーターを務め、株式会社博報堂ケトル 代表取締役社長共同CEO太田郁子氏、ベクトルグループ 取締役副社長 吉柳さおり氏と共に、株式会社電通デジタル 代表取締役社長執行役員 川上宗一がスピーカーとして参加しました。

「COVID-19においての市場変化とPR視点の重要性」に関して、川上は、「コロナ禍においてSNSの利用率が急上昇したことによって、PRの本質が従来とは変わってきた」と指摘。生活者とのつながりが、メディア介在型から、SNS等を通じたダイレクト型に変化したことで、ネット上でPRの価値が大きく上がったと説明しました。その上で、9月のシルバーウィークをきっかけに社会全体に態度変容の兆しがあることに触れ、この変化を踏まえてどういった仕掛けを行うか、考える時期に来ているという見方を述べました。

もともとPRは広告と違って、イメージではなく具体性が求められるものでしたが、DtoC化することで、その傾向がより鮮明化。効果的なPRを打つためには、企業文化そのものが生活者に受け入れられるものではなくてはならないと、スピーカー全員が異口同音に話しました。

川上は、「企業文化や信念の有無は簡単に生活者に見透かされてしまう」とし、PR施策を打つ際には、その前に自社のキャラクター性を振り返り、認識してそれを踏まえた施策を考えることが大切だと強調。「生活者の感情にフィットしたPRを打つためには、外部のエージェンシーを活用してほしい」と述べました。

「現在のPRでは、社会的な価値・共感を創造するコンテンツの重要性が増しているが、その成果は数値で出せるのか?」という質問に対して、川上は、「数字で示しつつ、数字以外の定性的な根拠も示す、その両軸が必要」と回答。また、その両方をクライアントとエージェンシーが分かち合うことで強いPR体制が作れると言い、「そのためにも、クライアントとエージェンシーとの信頼関係を築き、商品開発の段階から同じ目線で社会と切り結ぶ施策を考えられるようなチームを作っていきたい」と答えました。

川上宗一(電通デジタル)

川上宗一(電通デジタル)

データを企業間でシェアすることのメリットとデメリット

人起点によるデータ活用がマストな昨今、3rdパーティデータをどのように収集、活用するかは、あらゆる企業にとって大きな課題です。本セッションでは、各企業の担当者が事例を紹介し、実施に伴う課題について意見が交わされました。

モデレーターを務めたのは、株式会社電通デジタル デジタルストラテジー事業部 マネージャー 有益伸一。CCCマーケティング株式会社 デジタル企画Division General Manager 小林浩輔氏、サッポロビール株式会社 アシスタントマネージャー 堀内亜依氏、ニールセンDirector of MEFF, Japan and Korea 皆川治子氏がスピーカーとして参加しました。

セッション冒頭にて、モデレーターを務めた有益より、なぜ現在、企業間の3rdパーティデータ連携の重要性が増しているのか、それに至る経緯が説明されました。

デジタルマーケティングでは、データを収集し分析することで、生活者個々に最適化したサービスを提供します。しかし、1stパーティデータだけでは顧客理解の深化に限界があります。生活者に関する基本的なデータ、例えば属性、購買、アクセスログ、営業進捗などしか収集できないからです。顧客理解の解像度を上げるには、外部から自社サイト外行動データ、位置情報、興味・関心情報、テレビ視聴情報などのデータを得て、1stパーティデータと掛け合わせる必要があります。そのために3rdパーティデータの取得や連携が、従来以上にマストな施策になっていると、有益は説明しました。

3rdパーティデータを取得することで、何ができるのか。有益は、①フルファネルでの統合マーケティング、②デジタル/リアルを横断したデータ収集、③人基点でのデータ統合、の3つを示しました。これらは、複雑化したカスタマージャーニーの中で良質なマーケティング施策を実施するために必要なポイントでもあると言います。また、3rdパーティデータの取得による具体的なメリットとしては、①精緻な施策のプランニングができるようになる、②ターゲティングの精度がより向上する、③施策の効果検証がオン/オフ横断でできるようになる、という3点を挙げました。

一方で、データ連携には、特に個人情報保護法の観点からリスクもあると指摘します。変化する社会情勢を踏まえたリスクマネジメントを行いながら、データドリブンによるさらなるマーケティングの高度化を行うべきだと強調しました。

最後に行われたディスカッションでは、これからのデータ連携の可能性や課題のほか、コロナ禍前後を比較して見えてきた変化について、活発な意見交換が行われました。

スピーカー各氏の意見を踏まえて、最後に有益は、「これからのマーケターは、先行き不透明な未来に向かって、変わっていく時流をどう捉えていくかというのがキモになる。そのために必要なのが、企業間のデータ連携だ」と強調。「ぜひ、いろいろな企業と組むことを恐れずにチャレンジしてほしい」と呼びかけて、セッションを締めくくりました。

クッキーレス時代突入!顧客とのつながりをどう強めるのか?

大手プラットフォーマーによるクッキーの利用制限が広がる中で、これまでクッキーによって拡大してきたデジタルマーケティングは大きな転換点を迎えています。企業は、この変化に対して、どう対応していくべきか。本セッションでは、技術的な側面、マインド的な側面の両面から、顧客とどうつながりを持つべきかについて、各社から方法が紹介されました。

本セッションのスピーカーは、株式会社電通デジタル ソリューション戦略部 マネージャー 荒川拓のほか、デル株式会社 コンシューマー&ビジネスマーケティング統括本部 部長 横塚知子氏、博報堂DYメディアパートナーズ メディアプラナー 伊藤里佳子氏の3名。モデレーターは、株式会社Legoliss データアーキテクト 加藤英也氏が務めました。

はじめに荒川が、デジタルマーケティングにおいてクッキーレスがトレンドになった経緯と、それに伴って登場したData Clean Roomの解説を行いました。

荒川は、クッキーレスのトレンドには2つの流れがあると言います。1つは、ITPの進展、Google Chromeのクッキー制限、iOS14以降のIDFA(iOS端末の広告識別子)のオプトイン化によって、デジタルマーケティングのキーIDの消失/制限が現実化したこと。もう1つは、GDPR、CCPAなどの法規制によって個人データ保護の機運が高まり、結果的に大手プラットフォーマーのWalled Garden化が進み、プラットフォーマーデータの利用が制限されたことです。この2つの流れが、多くの企業に1stパーティデータの重要性を改めて認識させることになったと指摘します。それに伴って1stパーティデータを、どのように収集し、溜め、活用するかが、大きな課題となっていると説明しました。

その解決策としては、シグナルを用いた広告配信や、クッキーに頼らないコンテキストターゲティング活用のほか、Data Clean Roomの活用を挙げました。

Data Clean Roomとは、データの統合/分析といった特定の目的のために、特定の人だけがアクセスできるデータ環境のことです。荒川は、大手プラットフォーマー各社はWalled Garden化を進める一方、それぞれこうした環境を整備しているとして、今後は、事業会社/広告会社個別にData Clean Roomが提供され、その中でデータ分析を行うことがクッキーレス時代の対応策のひとつになるだろうと展望を述べました。

最後に総括として、クッキーレス時代のデータ活用に向けたアクション案として、①マーケティング利用可能な1stパーティデータ(ゼロパーティデータ)を増やす、②目的に応じてプラットフォーマーと1stパーティデータの連携を強化し、効果的な面/施策を発見する、③利用シーンの多い1stパーティデータを統合し、分析や施策の効率を高めるためにCDPを構築する、の3点を提案。これによって、より1stパーティデータ活用を推進していくべきだとして、発表を締めくくりました。

荒川拓(電通デジタル)

荒川拓(電通デジタル)

デジタルマーケターの人材育成で外せないこととは

リアルの行動がデジタルに内包されつつある現在、企業ではデジタルマーケターの育成が慢性的な課題となっています。29日午後のセッション「デジタルマーケターの人材育成で外せないこととは」では、デジタルマーケターの役割、能力、育成環境、これからの変化について、白熱した議論が行われました。

モデレーターは、株式会社電通デジタル アカウントプランニング部門 事業部長 杉本晃一。株式会社ジェイアール東日本企画 メディアマーケティングセンター センター長 直井伸司氏、日本マイクロソフト株式会社 セントラルマーケティング本部本部長 白戸順子氏、株式会社リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター センター長 宇佐川邦子氏がスピーカーを務めました。

セッションは「デジタルマーケターとは何か?」という、杉本の質問から始まりました。スピーカー各氏からは「デジタルマーケターはそもそもマーケターであるという意識が必要」「顧客視点でエクスペリエンスを最大化するために、デジタル/アナログは関係なく、ジャーニーごとに最適な設計を描ける人間こそがデジタルマーケター」といった意見が出ました。

それを受けて杉本は、「デジタルに留まらない能力を発揮するためには、個人の努力ももちろんだが、会社による環境づくり、仕組みづくりも重要になってくるのではないか」という見方を示すと、スピーカー各氏からは一様に賛同の意見が述べられました。個人の自発性や資質に頼るだけではダメで、会社としてその能力を育む仕組みを提供する必要があるという点については、今なお大きな課題であることが浮き彫りになりました。

セッションの中で、あるスピーカーから「デジタルマーケターに求められる能力とは何か?」と問われた杉本は、「瞬発力」と即答。「クライアント企業からは『デジタルを活用して顧客体験を向上させたい』といった曖昧な内容の依頼もある。そういった課題に瞬時に回答するためには、引き出しをたくさん持ったうえで、一瞬で必要なものを取り出して、依頼内容の解像度を一気に上げる能力が求められている」と持論を述べました。

セッションで出されたさまざまな意見を踏まえて杉本は、「顧客の体験価値を向上させられるデジタルマーケターを育てるには、個人の資質や能力というよりも、会社や組織の話になってくるのではないか」と総括。「個人個人の自主性を大事にしつつ、チャレンジと失敗から学べる環境を、会社が文化として整備しなくてはなりません」と締めくくりました。

ショッピング体験の未来像

2020年、新型コロナウイルス感染症の影響で、外出を伴う行動が制限されたことにより、ショッピング体験のデジタル化が急速に加速しました。30日午後のセッション「ショッピング体験の未来像」では、デジタル化の進展に伴い、オンラインとオフラインを含むあらゆる顧客接点の役割をどう捉え直していくべきかについて、議論が行われました。

本セッションでは、株式会社 NTTデータ SDDX事業部長 内山尚幸氏がモデレーターを務め、株式会社コメ兵 執行役員マーケティング統括部長 藤原義昭氏、株式会社博報堂 行動デザイン研究所 所長 中川浩史氏とともに、株式会社電通デジタル デジタルコマース事業部 デジタルプランナー 髙木真樹がスピーカーとして登壇しました。

セッションでは、アジェンダとして用意された質問に答える形で進行しました。「OMOはオムニチャネルとどう違うのか?」という問いに対して、オムニチャネルは企業視点、OMOは顧客視点であるという意見が出たのを踏まえ、髙木は、「オンラインとオフラインを相互連携した上で、蓄積したデータをもとに、不の解消にとどまらない新たな顧客体験をスマホユーザーを中心に最適化し、いかに顧客起点で作り上げるかが大事」と見解を述べました。

「現在は、商品の品質だけによる差別化が難しくなっています。売って終わりではなく、売った後も顧客に継続的に利用してもらえるサービスとセットで考えなくてはいけません。オンライン/オフラインの統合により、購買前後の顧客体験を含めたかたちでショッピングを設計する。市場における「最高品質」ではなく「顧客体験を軸にした市場の完全独占」を狙っていくことがOMOの成功に欠かせないポイントです」

次の質問、「コロナによって生活者の何が変わったのか?」に対しては、生活者の基本的な欲求が変わった、という調査データが紹介されました。具体的には、「安全」「簡便」「損失回避」に関する欲求が高まりを見せましたが、その傾向は徐々に変化しつつあるということです。髙木は、自分自身の体験を踏まえ、「チャネルがリアルからデジタルへ変化し、より複雑化したことで、AIやデジタルテクノロジーに触れる機会が増えたのではないか」と話しました。

最後に、「小売事業者、広告代理店、デジタルエージェンシーはこれからどういう風に変わっていかないといけないか? 未来に向けて取り組まないといけないことは何か?」という質問が投げかけられました。スピーカー各氏がそれぞれの展望を述べた後、髙木は、デジタル領域の支援に関して、いくつかの事例に挙げながら、「出したら売れる」といったデジタルコマースの誤解を改善するためにもユーザー目線のコミュニケーション体験とブランドの見せ方、つまりブランドのデジタルトランスフォーメーション(BDX)が大事になってくる、という見方を示しました。

「私たちは、寄り添い力は誰にも負けない気持ちで、クライアント企業を支援しています。これからはデジタルを活用して、CXを軸にした顧客に愛されるブランドの創造、ファンのコミュニティ構築を推進し、もっと日本のEC化率を上げられるようにサポートしていきたいと考えています」

髙木真樹(電通デジタル)

髙木真樹(電通デジタル)

アップデートすべき「ブランドセーフティ」の重要性

ここ数年、日本国内の多くの企業で「ブランドセーフティ」への意識が高まっている状況を受けて、30日午後、「アップデートすべき「ブランドセーフティ」の重要性」というタイトルでセッションが行われました。

モデレーターを務めたのは、株式会社電通デジタル プラットフォーム戦略部 グループマネージャー 富田匠。ヤフー株式会社 MS統括本部トラスト&セーフティ本部長 一条裕仁氏、ネスレ日本株式会社 統括部長 野澤英隆氏、日本マイクロソフト株式会社 セントラルマーケティング本部 デジタル & イベントマーケティンググループ 部長 松田恵利子氏がスピーカーを務めました。

まず富田から、ブランドセーフティが注目されたきっかけと、アドベリフィケーションについての基本的な説明があり、なぜ今、ブランドセーフな広告配信手法が求められているのか、その背景について説明がありました。

次に、スピーカー各氏がそれぞれ、ブランドセーフティにおける自社の取り組みを紹介しました。各氏とも、アドベリフィケーションツールを導入し、アンセーフな媒体や配信面に出稿しないという対策は常識であるという点については意見が一致。ただ、ツールによる監視だけでは不十分であり、業種や商品、広告の種類などの場合に応じて、セーフリスト、ブロックリスト、人の目による目視、第三者の監査機関の利用、媒体への働きかけが必要とも語りました。

また、今後も出てくるであろう新たな問題に対しては、広告主、媒体社、代理店の三者が一体となって、市場を健全化していく取り組みを続けていく必要があるという認識を示しました。

最後に富田から、2021年春に発足する監査・認証機関「JIQDAC」について言及がありました。JIQDACは、日本アドバタイザーズ協会(JAA)、日本広告業協会(JAAA)、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が三位一体となって、広告品質の課題を解決することを目的として設立される予定の組織です。デジタル広告の品質に関わる業務プロセスの監査基準を設定して、それに沿った業務を適切に行っている事業者を認証、公開することで、市場から信頼されることを目的としています。

富田は、「日本でも監査団体が発足し、これからは日々のデジタルメディアにおけるマーケティング活動で、アドベリフィケーションを意識することは当たり前のこととして取り組んでいかなくていけない時代になる。今日のお話を、皆さまの会社で施策を考える材料にしてほしい」と述べ、セッションを締めくくりました。