2019年7月29日(月)、電通ホールにて、宣伝会議主催のイベント「Commerce Marketing Conference ~顧客体験(CX)が、ブランドの価値を変える」が開催されました。第5部のパネルディスカッション「電通グループのソリューション」では、電通、電通テック、電通リテールマーケティング、電通tempo、電通ダイレクトマーケティング、電通デジタルがそれぞれ、コマースマーケティングにおける各社の取り組みを紹介しました。電通デジタルからは、エクスペリエンス部門デジタルコマース事業部事業部長・三橋良平が登壇し、LTVの向上を目的とした「Eコマースブランディング」を中心にお伝えしました。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
グループ資源を組み合わせて3つの領域でイノベーションを推進(電通)
セッションのモデレーターを務めたのは、電通のソリューション開発センターコマースマーケティング2部長・根本淳氏です。
根本氏はまず、デジタルシフトが急速に進展する環境において、生活者の顧客体験によってブランド価値を高めるために必要な4つのフェイズを示しました。
- データをモニタリングする
- 行動をモデリングする
- CXをデザインする
- CXの運用をきちんとやりきる
その上で、電通グループとしてイノベーションを起こしたいと考えている、3つの領域について説明しました。
- Eコマースの決済に関する領域
- 顧客の右脳領域、感情領域
- 顧客とのコミュニケーション領域
根本氏は「電通グループにはさまざまな領域で実績を誇る会社がある。われわれは電通グループの資源を最適に組み合わせて、企業の皆様の課題を解決するようなご提案をしていきたい」と述べ、電通グループ各社のソリューションの紹介へと移りました。
ロボティクスの活用(電通テック)
電通テックは、デジタルを起点としたプロモーション領域全般の課題解決を担う会社です。デザイン&プロダクトファーム部門事業統括・水谷拓志氏は、コマースマーケティングにおけるロボティクス活用について講演しました。
リテールコマースの領域では今後、店舗の無人化、決済のスマート化など、次世代店舗化が進んでいくと考えられています。水谷氏は「ロボットはその中心的役割を担うのではないか」と展望を述べ、会場に設置したロボットを相手に、店頭での買い物を想定したデモを行いました。
今回使用されたロボットは、中国深センのベンチャー企業UBTECH Robotics, Inc.が開発したCruzr(クルーザー)です。デモでは、人工知能を使ったチャットボットによる商品レコメンデーション、在庫のデータ確認、顧客の顔認証、コールセンターへの接続、ビデオチャットなどが披露されました。
デモを終えた水谷氏は、「テクノロジーの進化によって、実際にリテール領域でのロボ活用というのが実現性を帯びてきた」と語り、「店内デバイスとしてのロボは、省力化、省人化、そして新しい顧客体験を生み出すものになる」と期待を寄せました。
デジタルマーケティングプラットフォームを顧客企業と共同開発(電通リテールマーケティング)
電通リテールマーケティングは、店頭マーケティングの専門家集団であることを目指し、ID-POSのデータ分析や、店頭施策の立案において、独自のリテールマーケティングサービスを展開する会社です。統合店頭マーケティング事業部ビジネス・ディベロップメント部部長・倉田哲宏氏は、流通企業と共同で開発したデジタルマーケティングプラットフォームについて講演しました。
開発した背景について「リアル店舗のリテールでは、広告接触から購買までの検証ができていないのではないか。そうした課題を解決するために開発した」と語り、デジタルマーケティングプラットフォームで得られる3つのメリットを説明しました。
1つめは、広告配信と売り場がしっかり連動していること。広告を配信しているのに売り場には商品が並んでいない、という状況を作らないようにします。
2つめは、広告接触から購買までが検証できること。広告に接触した人が実際に来店して購入したのか、さらにその後再購入したのか、1つのプラットフォーム上でPDCAを回せるようになっています。
3つめは、リアル店舗でのCRMが可能であること。リアル店舗の購買データを使って顧客の育成ができ、成功モデルを確立することが可能となります。
デジタルで活きるプロモーション力(電通tempo)
電通tempoは、大手GMSの折り込みチラシからスタートし、52週365日販促で培ったプロモーション力が強みの会社です。オンライン/オフラインのメディアを活用し、流通小売業や外食産業などのプロモーション領域の課題解決に取り組んでいます。統合ソリューション部専任部長・園原直氏は、顧客企業の要望から問題解決に至った事例として、全国展開をしているディスカウントストアでのプロモーション事例を2点紹介しました。
まず1つ目の事例として、「店舗ごとに配信できるアニメーションバナーが欲しい」という要望に応えた、「自動『大量生成』アニメーションバナー」を紹介しました。全国約200店舗の商圏ごとに、年齢2セグメント×性別2セグメントで4セグメントを作成、合計約800バナーを自動で大量生成するシステムを開発。ポイントは、折り込みチラシのデータを使って制作できるため制作現場の負担が低いこと、制作、配信、来店計測、レポーティングまでを、折り込みチラシのスケジュールで展開できる点です。静止画バナーと比べて、CPA、CPC、リーチ数、さらには来店数も80.2%上がったという成果を発表しました。
2つ目の事例は、「自動生成のWebバナーと連動する形でLP(ランディングページ)も店舗ごとに生成し、デモグラで出し分けしたい」という要望に応えた、「自動生成・動的LP最適化システム」。クリックしたバナーによって、コンテンツが動的に組み変わる仕組みで、「実際にサイト滞在時間を延ばすことができた」と実績を強調しました。
また、社内マーケティングプロジェクト「キザシ発掘Lab®」による、「夏至カレー」の仕掛けを紹介しました。流通、メーカー、電通グループで展開した結果、「レトルトカレーの売り上げでは、昨対比で188%という伸びを示し、売り場の売り上げに貢献することができた」として、マーケティング、プロモーション両方で、強みを生かした成果を上げていると語りました。
ライブコマース市場の拡大を期待(電通ダイレクトマーケティング)
電通ダイレクトマーケティングは、その名のとおりダイレクトマーケティングの専門会社です。おもに通販会社、EC事業者を対象に、アクイジションからCRMまで、ダイレクトマーケティングにかかわるすべての領域をサポートしています。コンサルティングオフィスECソリューション開発部部長・清水宣行氏は、ライブコマースのソリューション「LIVE★X(ライブクロス)」を紹介しました。
ライブコマースとは、リアルタイムで配信されるライブ動画を通して、視聴者の質問やコメントに配信者が答えつつ、気に入れば商品の購入もできるという、双方向性を持ったEコマースです。すでに世界では、1回の配信で2億円を売り上げる例があるなど、これから日本でも大きく成長する可能性がある市場です。
そのライブコマースをアフィリエイト型で行えるLIVE★X(ライブクロス)は、集客、キャスティング、番組構成、広告配信、番組配信、決済、受注まで一括で手配可能なワンストップ型サービスです。インフルエンサーやMCのキャスティング費用は固定で発生するものの、それ以外はアフィリエイト型の成功報酬のため、低コストで始められ、効率の良いCPOが目指せます。
清水氏は、「現在、SNSやECでもライブコマース機能の実装が進んでいる。通信キャリアが動画見放題プランを出すなど、この市場の拡大を後押しする要素が多いと考えている」と話し、今後の市場拡大に期待を寄せました。
「Eコマースブランディング」でLTV向上(電通デジタル)
電通デジタルは、デジタルマーケティングのすべての領域に対して、コンサルティング、開発・実装、運用・実行支援機能を持ち、統合的なサービスと、最先端のマーケティングサービスを提供しています。今回の講演では、「デジタルコマースチームが担うEコマースブランディング」と題して、エクスペリエンス部門デジタルコマース事業部事業部長・三橋良平が、電通デジタルとして取り組んでいる「Eコマースブランディング」について紹介しました。
三橋はまず、「最近、ものが売れるきっかけや売れ方が変わってきている」として、「ここ数年、流行ランキングには、テレビではなくて、WebやSNSで目にする商品が出てきている。2017年になるとその傾向が顕著になり、2018年にはSNSから売れ始めた商品が目立ってきた」と流行の起点が変わっていることを指摘しました。
すなわち、今までの常識とは異なるメディア接触を経て売上が伸びている事例が多数出てきていると話し、「売れ方のプロセスや、ブランドの作られ方が変わってきているということなのではないか」という見方を示しました。
ブランドの作られ方が変化している背景として、三橋は「環境のデジタル化」に言及。24時間365日、30cm以内にあるスマホで、欲しいときに欲しい情報が手に入ることが当たり前になった結果、「身近な人に聞く、その分野に詳しそうな人のSNSを見る、SNSで検索した情報を信用するようになった。これはまさに消費者が購買を主導する時代になったと捉えている」と語りました。
「そのような時代には、商品・サービスならではの理想の体験価値と、ユーザーにとっての理想の体験価値、この2つが重なる部分を意識して作っていくことこそが、『ブランドを作る』ことになっていくと考えられます」。
こういった状況を踏まえ、電通デジタルでは、売り場のチャネル設計と、お客様の顧客体験を整備することで、LTV(ライフタイムバリュー)を向上させていく「Eコマースブランディング」を、企業の皆様に提案しています。三橋はその3つの方法を提示しました。
- 入口と売り場の構築・整備
SNSやコンテンツを活用して顧客体験価値を向上させ、売り場にお客様を引き込みます。オウンドECを構築したり、プラットフォームEC上の売り場を整備したりするためのプランニングと実施を行います。 - 既存顧客に向けてのアプローチ
新規顧客だけでなく、既存顧客のLTV向上施策も並行して行います。ECサイトの改善、アプリの改善、サービスの開発など、既存顧客の体験価値を向上させます。 - 継続購入に向けてのアプローチ
既存顧客に対してはさらに、それまでの接点を活用した継続購入、再購入を促す施策を実行。最適な接点やメッセージ、タイミングでアプローチをすることで、ファン化を狙います。
最後に、三橋は「我々は、テクノロジーとアイディアで新しい体験、サービス、ブランド、ビジネスを作るお手伝いをしている会社。Eコマース上でもしっかりブランディングをサポートしていきたい」と力強く語り、パネルディスカッションを締め括りました。
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