松永: 実はいろんな記事で3〜4年前から「コンサル会社v.s.エージェンシー」という話が出ていました。つまり、新型コロナの影響でコンサルの仕事が変わろうとしているのではなく、ここ数年、コンサルは大変革を迫られていた、というわけです。
多くの人が「コンサルは企業の経営者と経営の話をしている」と、思ってるようですが、それは勘違いです。そういったコンサルタントはごく少数だというのが私の感覚です。ほとんどはシステム周りの仕事を主としていると言えるでしょう。
コンサル業界での大きな動きを挙げるなら、「デザイン思考」が持ち込まれたたことです。
その背景として、UberやAirbnb、WeWorkに代表されるように、既存の業界にまったくの新興勢力が切り込み、業界の勢力図を書き換える存在に成長しつつあることが挙げられます。既存の企業らは、そうしたビジネス環境の変化に適応して、生き残りをかけて新しい事業の開発を進めようとしています。それなのに、従来のコンサル的考え方である「ベスト・プラクティスを分析して…」と言っていては、間に合いません。
そうしたこともあり、コンサルファームは革新的な発想を持つ「デザイン思考」な企業を買収し始めたのです。
ただ、この手法は米国などではうまくいくものの、日本ではまだそうなってはいません。なぜこの違いが生じるかというと、買収後に誰がリーダーになるか、という点が大きく異なるからです。
米国の場合、コンサルファームが有望なデザイン系企業を買収した際、その買収した企業のトップがデザイン事業を引き継いでリーダーとなるのがメジャーなやり方です。しかし、日本の場合は「デザイン系企業のトップにはコンサル経験がないから」との理由から、自社内の必ずしも適任ではない人材に買収した企業のトップを任せる傾向があります。
デザイン思考を取り入れるために買収した企業なのに、一度自社に組み込むとそのリーダーはデザイン思考が身に付いていない人に変わってしまう、ということです。これではうまくいかなくなるのも当然でしょう。
新型コロナの影響で、以前よりさらに厳しい状況になった企業が多いと思います。しかも、その多くの企業が、「何か新規の事業を立ち上げるにしてもどうしたらいいかわからない。誰に相談したらいいか分からない!」という状態に追い込まれています。実際、私がコンサル時代に取引したクライアント企業は、今でも私に直接相談してきています。
これは、私自身が昔ながらのコンサルファームの古い論理思考ではないところに価値を感じていただいている証拠といえるでしょう。