2020.10.26
グローバルでOne to Oneの顧客体験を届けたい。ブランディングを徹底した「ザ・ギンザ」ECサイトリニューアル
資生堂グループ、プレステージスキンケアブランド「ザ・ギンザ」は、グローバルに広がるお客様に向けて、2020年4月にブランディングを強化。これに伴い、Webサイトのリニューアル、そしてシステムの刷新によって徹底したブランド体験を設計・実現しました。すでにECの売上が2倍以上になるなどの成果が上がっています。電通デジタル(旧電通アイソバー)が支援させていただいた顧客体験設計のプロジェクトについて、資生堂の森薫さま、電通デジタル(旧電通アイソバー)の鈴木大介に聞きました。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
ブランディングと一気通貫したEC体験に課題
――「ザ・ギンザ」は、長い歴史のあるブランドですね。はじめにブランドの特徴と、現在お客様にどのように受け入れられているかを教えてください。
ザ・ギンザ 森さま(以下、森):「ザ・ギンザ」は1975年に銀座のファッションブティックから始まったブランドで、スキンケアラインは2002年にスタートしています。国内のお客様にも長く支持をいただいていますが、2016年以降に中国のトップ女優の方々に自然と愛用されることが相次いで、近年は中国を中心にグローバルへと顧客層が広がっています。
そこで、ブランドの世界観を幅広いお客様により深くお伝えし、お客様一人ひとりの“タイムレスな美”の追求に寄り添うために、「ザ・ギンザ」は2020年4月にブランディングを強化しました。スーパーモデルの冨永愛さんをグローバルブランドミューズにお迎えし、ブランドのタグラインも刷新。また、オンラインでも統一された世界観を提供するため、Webサイトと裏側の仕組みもリニューアルを図りました。
――ブランディングを強化すると同時に、Webやシステムも刷新されたのですね。どういった課題があったのでしょうか?
森 : 主に、2つの課題がありました。ひとつはブランディングと一気通貫した体験が設計できていなかったこと。もうひとつは、プレステージブランドとして、お客様にパーソナライズした丁寧な対応をしきれていなかったことです。
ひとつ目については、実は以前はブランドサイトとECサイトが別々に存在していたんです。ブランドの世界観を体験しながらスムーズな購買へとつなげられず、ブランドサイトからECへたどり着く前に離脱されるなど、機会損失がありました。そこで2つのサイトを統合した上で、ブランディングと購買のためのUI/UXを両立したいと考えていました。併せて、前述のように各国のお客様に使っていただけるよう、多言語対応も必須でした。
2つ目は、主に裏側のシステムにかかわる問題ですね。属性やご要望が異なるお客様に、オンラインでもきめ細かな個別対応をしたいと思っていましたが、実際にはメールも画一的な内容に留まり、配信のための顧客情報も手動で抽出するなど、理想からは遠い状態でした。今回、Salesforce Commerce Cloud(以下、SFCC)の構築と、マーケティングオートメーションツールのSalesforce Marketing Cloud(以下、SFMC)の連携、さらにCRM(Customer Relationship Management)やOMS(Order Management System)も見直して、自動化できるところは自動化し、パーソナライズしたアプローチの実現を目指しました。
各国の消費者理解に基づく電通デジタル(旧電通アイソバー)の体験設計に期待
――今回、Webサイトのリニューアルと裏側のシステム刷新のパートナーとして、電通デジタル(旧電通アイソバー)とタッグを組まれた理由や期待を教えてください。
森 : パートナー選定にあたっては、SFCC、SFMCの構築や連携はもちろん、グローバル視点での使いやすさや今後の展開を踏まえ、ECにおける多国籍の消費者行動をよく理解されていることが最も重要でした。私たちが目指したのは単なるサイトリニューアルとシステム構築ではなく、多様なお客様に最適な顧客体験を創出することだったので、グローバルでの深い顧客理解が大事だと考えたのです。その点、実際に今回のプロジェクトを担当いただいた電通デジタル(旧電通アイソバー)のチームでは、中国やベトナムのメンバーの方からも随時的確なアドバイスをいただけて、安心して取り組めました。
――そうだったのですね。では鈴木さん、プロジェクトの概要とポイントをうかがえますか?
電通デジタル(旧電通アイソバー) 鈴木大介(以下、鈴木) : 今回は、EC機能のリニューアルとバックエンドのシステム構築を同時におこなうという、大きなプロジェクトになりました。
全体像として、まずフロントエンドはSFCCでのECサイト構築及びUI/UX刷新と、Alipay(支付宝)やUnion Pay(銀聯)など決済方法の充実、多言語展開が中心ですね。バックエンドはSFMCとの連携、またCRMソリューションのSatisfaの導入や、OMSのシステムも新規導入しました。そのうち当社はSFCCの構築にメインで携わるほか、各ベンダーさまとやり取りして全体を統括するPMO(プロジェクトマネジメントオフィサー)としても支援させていただきました。
――たしかに、大規模なプロジェクトですね。また「ザ・ギンザ」さまサイドの、「単なる構築ではなく顧客理解を踏まえた豊かな体験を創出したい」というご意向は、そう簡単なものではなかったのではないかと思います。
鈴木 : そうですね。プレステージブランドならではの視座の高さや、お客様のことを深く考えておられる姿勢はすばらしいと感じましたし、プロジェクトへのご期待もよくわかりました。
その上で、電通デジタル(旧電通アイソバー)の深い消費者理解の知見と、それを各国の視点で具体的な体験設計に落とし込めることは、グローバルでさまざまな企業をご支援している私たちだからお役に立てる部分だと思いました。
ECの購買件数と売上は2倍以上、予想を上回る伸長に
――システム構築と全体のプロジェクトマネジメントの面では、どういったハードルがありましたか?
鈴木 : ブランドの世界観の徹底と、ECサイトとしての要件やSFCCのベストプラクティスという2つの観点を、いかに高度に両立するかが難しかったですね。
今回に限らず、ブランディングの観点ばかりを優先すると、ときにECとしてのスムーズな購買体験や各種ツールでのベストプラクティスに必要な要素が後回しになり、結果として質の高い顧客体験が実現できないこともあります。SFCCの活用を含めたECの運用や、マーケティングオートメーションとの連携については当社に豊富な知見があるので、それらとブランドが目指すことのバランスを図りながら、どのような形で着地させるかを常に見据えて進めていきました。
また、今回は当初予定も4月のローンチでしたが、コロナ禍の影響もありECサイトの整備が急務になっていったので、プロジェクトの進行との兼ね合いで優先すべき点とローンチ後に対応する点のフェーズ分けも緻密におこなっていきました。
――では、具体的にWebリニューアルとシステム刷新の成果について教えてください。
森 : 第一四半期(1-3月)と第二四半期(4-6月)で比較すると、ECの平均MAU、注文件数、売上はいずれも2~3倍になった格好ですね。もちろんある程度の目標は立てていましたが、それを上回ってここまで伸びるとは想像していなかったので、私たちのチームだけでなくブランドのトップも驚いていました。
――それは、目を見張る数字ですね!
森 : そうなんです。冨永愛さんのミューズ就任のPRを、日本と中国で同時に推進したこととも呼応して、Webサイトに来ていただくよいスパイラルを生み出せたと思います。今年はコロナ禍の影響により、業界を問わずEC化が進んではいますが、私たちのサイトでは5月以降、ECの顧客の中でも新規の方が多いという状況が毎月続いているんです。私たちのコミュニケーションが潜在的なお客様にもしっかり届き、サイトを訪れた方に相応の割合でご購入いただけて、以前のような機会損失を防げていると実感しています。既存のお客様からも、わかりやすくなったと評判です。
また、このタイミングでEC購買の4つの特典をわかりやすくし、メンバーシップクラブのご案内へとつなげています。これも、購買の伸長の一因だと思います。
中国への本格進出とオフライン・オンラインの融合へ
――課題のひとつだったパーソナルなアプローチも、実現できるようになったのですか?
森 : はい、それも高い成果につながっています。SFCCとSFMAの連携によって、顧客ごとにリピート購入のご案内や請求されたサンプルの感想をお聞きするフォローアップなど、パーソナルかつタイムリーなメールコミュニケーションが可能になりました。それも大幅に自動化が進められたので、煩雑な手作業の手間も時間も短縮し、その分をより細かな顧客分析やカスタマージャーニーの理解、次のアクションを考えることに費やせるようになりました。
――ここまでの成果の要因を、電通デジタル(旧電通アイソバー)としてはどう分析していますか?
鈴木 : 前述のような当社の強みを発揮できたことに加えて、「THE GINZA」さまサイドとしっかりワンチームになれたことが大きかったと思います。SFCC以外のシステム構築自体は他のベンダーがそれぞれ推進されましたが、顧客の実際のニーズを踏まえたカスタマージャーニー設計については「THE GINZA」さまサイドに知見があるので、それを当社もよく理解して、各ベンダーを束ねるPMOとして全体のマネジメントを進められたと思います。
――今回のプロジェクトを弾みに、グローバルでさらに多くの方に「ザ・ギンザ」の良さと世界観を知っていただけそうですね。森さまから、電通デジタル(旧電通アイソバー)と組んだ感想や今後の期待、またブランドの展望をお聞かせいただけますか?
森 : 今回はWebと裏側のテクニカルな部分、また行動や文化の面も含めて国を超えた消費者理解の部分の両面で、鈴木さんをはじめ電通デジタル(旧電通アイソバー)の皆さんに助けていただきました。繰り返しになりますが、安心感がありましたね。「ザ・ギンザ」としては、おっしゃるようにさらなるグローバル展開の推進が大きな方針なので、今後もサポートいただけたらと思っています。
グローバル展開でまず注力するのは、中国です。この5月には中国・北京と上海の国際空港にある、アジア最大のトラベルリテーラーであるチャイナデューティーフリー空港免税店内に、ブランド初の海外店舗をオープンしました。2021年には中国本土への進出も目標にしています。今、20-30代の若年富裕層が増えており、その方々はオンラインとオフラインを自由に行き来するので、その行動を前提とした体験の設計にもっと力を入れていきたいです。
――オン・オフの体験設計も、電通デジタル(旧電通アイソバー)が得意とする部分ですね。
鈴木 : そうですね。チャネルを横断した体験設計や、コマース領域の知見、そしてグローバルネットワークの強みを活かして今後もぜひご支援させていただけたらと思います。
森 薫 もり かおる
ザ・ギンザ グローバル ブランド ユニット コミュニケーション グループ
コミュニケーション スペシャリスト
外資系化粧品会社で約12年間勤務したのち、2019年より㈱資生堂・現職にて従事。 現在はザ・ギンザ グローバル ブランドユニットにてコミュニケーションを担当。
○ライター : 高島 知子
○カメラマン : 八田 政玄
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