CRO(コンバージョン率最適化)がデジタル上のコミュニケーションで重要であり、コンバージョン増加を支えるアプローチであることは、こちらの記事でもお伝えしました。Webサイト全体を俯瞰し改善するCROは、対象がオウンドメディアかペイドメディアかにより、手法が異なります。今回は、広告からの着地ページであるランディングページを対象としたLPO(ランディングページ最適化)についてご紹介いたします。
LPOとは、Web広告や自然検索、SNSなどから訪れたユーザーの購買行動に繋がるアクションを改善し、コンバージョンを増加させるマーケティングを指します。効果は高く、単純計算ですが、コンバージョン率を2倍にすれば、同じ広告費でもコンバージョン数は2倍、売り上げも2倍に伸びます。しかもその効果は長く持続する点が、短期集中の集客キャンペーンとは異なります。
電通デジタルCROグループには、LPOによって、これまでに数多くのクライアントの売り上げ増加や、集客コスト効率化に貢献して来たからこそ見えた、オウンドメディアとは異なるペイドメディアでの方程式やナレッジがあります。
今回は、CROグループのグループマネージャー好村俊一がファシリテーターとなり、CROグループのコンサルタント薫森竜夫、大森湧太に、これまでに取り組んだLPOの案件を例に、コンバージョン率を改善するための大事なポイントについて話を聞きました。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
広告とファーストビューの連動改善により、コンバージョン率の改善率173%を実現
好村 今回紹介する案件の概要を教えてください。
薫森 クライアントは情報・通信業界の会社です。サービス内容は電子決済サービスで、その加盟店の新規獲得を目的としたランディングページのLPOを担当しました。
コンバージョンとして定めたアクションは「Webサイトからの仮申し込み」です。
実施したLPO施策ですが、弊社の広告部門と連携して、検索キーワードや広告バナーを複数のカテゴリに分類し、それぞれに対応したランディングページのファーストビューを作成。ファーストビューの出し分けを行うことで、直帰率の改善によるコンバージョン率向上を狙いました。
結果、施策実施前は0.41%だったコンバージョン率は0.72%へ上昇し、改善率としては173.1%を実現しました。
紹介する案件の概要
クライアントの業種 | 情報・通信 |
---|---|
商品/サービス | 電子決済サービス |
コンバージョンとして定めているアクション | Webサイトからの仮申し込み |
LPO実施前のコンバージョン率 | 0.41% |
LPO実施後のコンバージョン率 | 0.72%(改善率173.1%) |
LPO施策の主な内容 | 検索キーワードや広告バナーのカテゴリに応じた、ランディングページのファーストビューの出し分け |
好村 ランディングページを改善するにあたって、どのような要素を改善すべきか、ポイントはありますか?
薫森 ランディングページの改善ポイントは、3つあります。ファーストビュー、CTA(Call To Actionの略。コンバージョンを促すボタンやテキストのこと)、それからコンテンツです。
これは電通デジタルでも複数社に対して改善を行った施策においても効果的でしたので、この3つを重要なポイントとして挙げています。
逆に、この3つのポイント以外をいくら改善しても、コンバージョン率アップにはそれほど大きなインパクトはありません。コストや時間の無駄になってしまう可能性が大きいです。
好村 効果の観点から優先順位はありますか?
薫森 やはりファーストビューの優先度が一番高いです。それはWebサイトへ来訪したユーザーが、必ず目にするエリアだからです。事前分析でファーストビューに課題があるとわかれば、3つのポイントのうち、視認率がもっとも高く流入時のモチベーションに大きな影響を与えるファーストビューから改善しましょうという提案をします。
好村 ファーストビューを改善するにはどういうアプローチをとりますか?
薫森 まずは、Google アナリティクスやヒートマップツールというアナリティクスツールで現状を分析します。
ヒートマップツールを活用すると、ランディングページの中で、ユーザーの興味があるエリアと興味のないエリア、スクロールの深さ、離脱するポイントなどが分析できます。
今回の案件では、ファーストビューからセカンドビューに至るまでの離脱率が、70~80%程度ありました。サービスに興味があって、わざわざ広告バナーをクリックして来訪したユーザーの70~80%が、ほんの数秒で離脱してしまっていた。これは非常に大きなボトルネックです。
この分析結果を踏まえて、何が大幅な離脱の要因となっているのか、仮説を立て改善案を提案しました。
好村 高い離脱率の要因は何だったのですか?
薫森 広告とファーストビューの内容不一致です。一般的な例ですが、バナー広告で「今なら手数料無料」や「お得なキャンペーンやってます」と訴求しているのに、ランディングページにこの訴求ポイントが示されてないことが非常に多いです。今回の案件もまさにこのケースでしたので、ここから仮説を立てて改善策を考えました。
バナー広告やリスティング広告で訴求しているポイントをファーストビューにも掲載するように修正し、ユーザーに安心感を与えることで離脱を防ぐ、という施策です。
具体的には、訴求するポイントの違いによってカテゴリを「比較評判」「費用手数料」「導入検討」「事例や実績」の4つのカテゴリに分類し、それぞれに対応したランディングページのファーストビューに対応するクリエイティブを制作し、それをA/Bテストツールを活用して出し分けを行いました。
施策を実施した結果、離脱率は顕著に低下しコンバージョン率を大きく改善することができました。
まとめると、バナー広告や検索キーワードとファーストビューをきちんと連動させることで、ユーザーの期待に応えられたことが、コンバージョン率アップにつながった要因だと思います。
好村 広告バナーや検索キーワードとファーストビューを連動させる手法は、他の会社でもできそうな感じがします。電通デジタルならではの強みはどこにありますか?
薫森 仰る通り、やろうと思えば他の会社でもできると思います。ただ、本当にきちんとできている会社は案外少ないと思っています。
ファーストビューに限った話でも、競合調査や3C分析で多くのWebサイトを見ていますが、大手企業のWebサイトであっても、バナー広告とランディングページの訴求内容を連動できている割合は2~3割程度です。多くは広告とは違う内容をランディングページのファーストビューに掲載している印象です。
電通デジタルには、我々のようなCRO/LPOに特化したコンバージョンに向き合う専門部隊がいることで、クリティカルな改善ができるのが1点目の強み。
さらに、デジタル上の顧客体験に合わせてパーソナライズさせることが2点目の強みだと感じます。
流入経路によってユーザーのニーズやモチベーションは異なります。異なるからこそ、配信手法やキャンペーンなどが複数存在するわけであって、でも、ランディングページの情報が同一というのは一定の効果は上げられても最大化はできません。
ユーザーの多種多様なニーズに合わせて個別最適化していくことで、ランディングページのパフォーマンスを最大化させるという戦略性やランディングページでの成果にこだわる体制が強みと言えるでしょう。
好村 コンバージョン率を高めるには、ランディングページ単体ではなく、広告や検索キーワードとの連動を踏まえた上での改善が大事です。流入ユーザーごとのニーズをしっかり捉えてカテゴリごとに最適化、ゆくゆくは個別最適によるパーソナライズをして、コンテンツの出し分けをしていくということが、コンバージョン最大化につながると感じました。
さらに言えば、ユーザーの状況に合わせたデータ連携、データ連動により、デジタル上の顧客体験を拡張していくことによって、ランディングページの中でも、コンバージョンを獲得できる確率を上げられる可能性があることがわかりました。
CRO/LPOを着実に進めるためのKPI設定方法とは?
好村 今回紹介する案件のあらましを教えてください。
大森 私が担当してきたクライアントの案件を例にしながら、ランディングページにおいてKPIを設定するうえで重要なポイントについてお話ししたいと思います。
好村 LPOを実施する前の準備として、KPIの設計や設定が重要なのはなぜですか?
大森 適切なKPIを設定していないと、クライアントの事業のKGI(重要目標達成指標。多くの場合は売り上げ)への好影響が見込めないからです。
KPIはKGIを細分化した指標です。たとえば、通販サイトであれば、売り上げがKGI、Webサイトの訪問者数やユニーク購入者数、1人あたりの購入単価、購入数などがKPIとして設定されます。
これらのKPIの中から、CRO/LPOの目標となる指標がコンバージョンになります。
つまり、CRO/LPOを実施する前にはコンバージョンの設定が必要、コンバージョンの設定にはKGIに紐づくKPIを把握しておくことが必要、ということになります。
好村 KPIを設定したうえで適切なコンバージョンを設定するために重要なことは何ですか?
大森 適切なコンバージョンを設定するためには、ユーザーのアクションハードル(障壁)の高さを見極めることが重要です。
たとえば、自動車、家電製品、家具といった耐久消費財のメーカー直販サイトの場合、普通の人であれば購入するのは数年に1回、物持ちのいい人なら十数年から数十年に1回です。これらのサイトで、「購入」をコンバージョンに設定するのは不適切です。なぜなら、「購入」というアクションのハードルが高すぎて、コンバージョンがなかなか発生しないからです。コンバージョンの発生頻度が少ないと、PDCAサイクルが回しにくく、スピーディーな改善が望めません。
この場合は、カタログのダウンロードや、FAQページの閲覧、機能比較ページの閲覧など、もっとユーザーのアクションハードルを下げたものをWebサイトのコンバージョンとして設定することが望ましいです。
逆にアクションハードルが低すぎた事例として、過去に私が担当した案件で、「LINEの友だち追加」をコンバージョンに設定しているクライアントがいました。
「友だち追加」は簡単にできるので、頻繁にコンバージョンが発生していたのですが、友だち数が増えても、売り上げにはほとんど影響がないという課題がありました。そこで、「友だち追加」よりアクションハードルの高い「問い合わせ」をコンバージョンとして設定しました。「友だち追加」をしてくれるユーザーよりも「問い合わせ」をしてくれるユーザーのほうが、母数は少ないですが、より真剣に購入を検討しているため、結果として売り上げに繋がるユーザーを多く獲得することができました。
この2つは極端な例ですが、扱う商材によって、何がWebサイトにとってベストなコンバージョンなのかを見極めるのは、CROの基本中の基本。ですが、意外とできていないことが多かったりします。
好村 どうすれば適切なKPIを設定できますか?そのために重要なことは何ですか??
大森 施策を実行することによって増やすことができる指標を、KPIとして設定することです。
日々の施策によってコントロールできない指標や、外的要因によって上下する指標をKPIに置いてしまうと、「どの施策がKPI達成に効果的だったのか?」の評価ができません。
好村 その他に、KPIの設定で難しいことや注意すべきことはありますか?
大森 クライアントのWebサイト構造の問題や環境、セキュリティなど、実はクライアントによって事情はさまざまでKPIの設定が難しいケースはあります。また、計測できない指標をKPIとして設定しているケースがありました。設計を行う上では、Webサイトの定量分析を行って、本来計測したかったKPIと高い相関関係がある指標をKPIに設定するのが良いと思いますので、ぜひ相談してほしいですね。
注意すべき点で言うと、よくある一般的なKPIツリーに基づいたKPIを設計してしまうことです。一概に駄目だ、というわけではありません。しかし、業種業態やサービスは多様で同じものはありません。クライアントのサービスやビジネスモデルに則しないと、納得性が得られなかったり、本質の問題には気づけないので注意が必要です。
好村 KPIやコンバージョンは一度設定すれば、見直しなどはしなくても良いのでしょうか?
大森 一度決めたKPIを長期間使い続けることはお勧めしません。コロナ禍の影響や決済手段の多様化、新たなサービス・アプリの出現などの影響によって、ユーザーの行動は徐々に変化していきます。時代や状況に合わせて、企業側もKPIをアップデートする必要があります。
また、大事なのは、KPI設計においても、何度もPDCAを回していきながら、クライアントと共にデータを確認し、日々KPIを研鑽し精度を高めること。そのデータをクライアントと共有し、目線を合わせながら私たちもユーザーを知っていくことにあり、サービスやWebサイトに沿った独自のKPIを追求することが重要です。KPIはサービスの指標でありながら、ユーザーを知るツールにも、クライアントと目線を合わせることにも大切なことだと思っています。
好村 ありがとうございます。KPI設計において、現状把握できる環境の整備が重要、また設計には"納得感"のあるKPIを設計する必要があり、数値を捉えるだけではなく、ユーザーを知る活動やクライアントと伴走するために重要なツールであることがわかりました。
電通デジタルのCROグループは、コンバージョン率さえ改善すればいい、という考え方はしていません。もちろん、コンバージョン率アップが一番の目標ではありますが、コンバージョンにつながるKPIを適切に設定し、その数値もきちんと伸ばしていくことは顧客育成の文脈でも事業成長を支える意味でもとても重要です。一般的なCROに関する説明では、意外にその部分が語られないケースもありますので、クライアントには長期の顧客育成の観点で、KPIが重要であることも伝えていきたいと考えています。
◇ ◇ ◇
好村 広告経由でコンバージョン率を最大化させるために、配信を最適化したり、ランディングページをキャンペーンに応じて量産するケースも多くあります。もちろん、そうしたプロモーションでも一定の成果を得られることもありますが、多大な費用や工数に対してリターンが比例しない場合もあります。
また、LPOを機械的な手法で高速にPDCAを回される場合もありますが、局所最適に陥ってしまう弊害もあれば、施策だけ多く打っているだけで本質的な改善ができず、低い改善に留まることもあります。
正しくLPOを行うことで、合理的に成果を伸ばすほか、きちんとデータを捉えることで、自社のナレッジを蓄積でき、新設するランディングページに勝ちパターンを反映するなど効率的なシナジー効果を生み出すことが期待できます。
大事なことは、
- 広告配信を最適化する
- ランディングページを量産し続ける
- 機械的に高速なPDCAサイクルを回す
- データを捉えて効果的要素を重点的に改善する
の1つだけを行うのではなく、あらゆる手段の中から最適なアプローチを選択し実行することにあります。
CROの観点からは、自社のWebサイトの現状を正確に把握し、適切な手段で、適切な施策を適切に実施することが着実なグロースへの近道だと考えます。
また、このようにいくつもの手段からコンバージョン率改善を追求するためには、クライアントの広告部門やSEO部門、コンテンツ制作部門、外部の広告代理店、広告クリエイティブ制作会社、SEO会社、Webコンテンツ制作会社などとの協調・連携が必要になってきます。
電通デジタルCROグループは、そうした複数の社内部署、外部のパートナーと連携をとりながらCRO施策を進めていく案件もこれまで数多く担当してきました。
一方で、電通デジタルは、アカウントプランニング部門やアドバンストクリエーティブセンター(広告クリエイティブ部門)、SEOの専門部署、さらにはCRMを専門とする部署も抱えている総合デジタルマーケティングカンパニーです。シームレスな統合マーケティング戦略の立案と実行をご希望の場合は、CROグループを窓口として一括して請け負うことも可能です。
ランディングページのコンバージョン率が伸び悩んでいる、あるいは現在進めているCRO施策が正しいかどうか確信が持てない、複数の部署が縦割りになっていて効率的にCROを実践できない、といった課題を抱えているようであれば、お気軽にご相談ください。
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