生活者のオンライン上の行動と共通ポイント機能が結びつき、さらにリアル店舗での電子決済も連携することで、新たな経済圏が登場している。その中でも最大級の規模を誇るのが「楽天経済圏」だ。楽天グループと電通デジタル、電通はこの分野で連携し、企業のマーケティング活動に革新をもたらす独自のマーケティングソリューションを開発した。その目指すものは何か。楽天グループ、電通デジタルのキーマンが語り合った。
※2021年12月時点の情報です。
裾野の広さとアクティブさが楽天経済圏の強み
――まず、経済圏とは何か。その概要と、とりわけ楽天経済圏にはどのような特徴があるかを教えてください。
電通デジタル・藤田 佳吾(以下、藤田) 現在言われている経済圏とは、顧客IDとそれに連動するポイントをベースにした消費行動のグループのことです。
楽天経済圏を例に挙げますと、楽天カードの利用者が、楽天市場で生活用品を購入して貯まったポイントを使ってファストフードでランチを食べる、または楽天証券で投資に使ってみるというように、生活の中で楽天ポイントの価値が徐々に高まっていきます。その結果、経済圏の中でポイントを貯めたり使ったりしながら、経済を回していく生活者が増えています。こうした経済圏は、楽天経済圏の他にも、通信キャリア系や共通ポイントカード系など国内に複数存在します。
電通デジタルでは、国内に複数ある経済圏について、大規模かつ詳細な調査を実施しました。その結果、規模では楽天経済圏と別の某共通ポイントカード会社の経済圏が二強であることが分かりました。また、楽天経済圏は他の経済圏と比較して、積極的にポイントを収集している生活者が多いことも分かりました。
この結果から、2つのことが言えます。まず楽天経済圏は、圧倒的な量の購買データを蓄積しているということ。もう一つは、オンライン、オフラインにまたがる70を超える楽天グループのサービスを積極的に利用するユーザーの行動を分析することで、全く新しいマーケティング施策を実行できるということです。つまり、今やポイントを意識した購買行動を取る生活者の方が多数派であるという認識です。
楽天グループ・秦 俊輔氏(以下、秦) 楽天経済圏というと楽天市場だけの利用者を想像するかもしれませんが、それは違います。楽天カード、銀行、保険、旅行などのサービスも非常に充実しています。これらのサービスを、1つのIDで利用できる点が、生活者にとって大変大きなメリットだと思います。そして、サービスの利用に応じて共通ポイントである楽天ポイントが貯まっていくわけです。
オンライン、オフラインの行動データを統合することで顧客理解を深める
――一方、企業のマーケティング活動は、生活者の行動が多様化する中で模索が続いています。経済圏データの活用はどんな効果がありますか。
秦 オンライン、オフラインを問わず、1つのIDに基づくユーザーの行動を理解することができる点に、経済圏データの強みがあります。また、今後期待できるのは新たに加わった楽天モバイルです。ユーザーの活動がモバイルにシフトする中で、これらのデータは非常に価値が出てくると感じています。
電通デジタル・松下 健太郎(以下、松下) 楽天経済圏を利用したキャンペーンは、他の経済圏と比べてユーザーの反応が非常に良いと実感しています。それはやはり、使えるサービスの裾野が非常に広いことと、アクティブなユーザーが多いからだと思います。 また、楽天グループのサービスはUXが素晴らしく、どうすればユーザーに複数のサービスをスムーズに回遊してもらえるのか、そしてサービスに対する関与度を高め、繰り返し使ってもらえるのか、これらが非常に考え抜かれていると思います。
藤田 経済圏データの価値の一つは、オンライン、オフラインを問わず、ユーザーが購入したという事実がIDに基づいている点です。これは、シンプルですが価値のあることで、これまでの企業のマーケティングでは、検索や閲覧など「関心」がある層に対するアプローチが中心だったところが、購入がIDに基づくことで「購入」層やそれに近しい特徴をもつ人へアプローチすることが可能になります。つまり、経済圏データを活用することで、企業のマーケティング予算の効率化が期待できるということになります。
――楽天グループでは、経済圏データのメリットを生かしたマーケティング施策を用意されています。
秦 はい。その一つに「Rakuten Pasha」というサービスがあります。これは企業が店頭で販売する商品のキャンペーンを実施する際、キャンペーンに参加した楽天会員が対象商品購入時のレシートをスマートフォンで撮影、送信すると楽天ポイントが付与されるというサービスです。これによって企業側は、どんな層がいつどこで商品を購入したかというデータの分析結果を得ることができます。
これだけでも、非常に価値が高いデータですが、この施策は単独のキャンペーンで終わりません。経済圏の良さを生かして、例えば同じ飲料を店頭で何度も購入しているユーザー層には、楽天市場でお得なまとめ買いをおすすめすることができます。ユーザーと長期でコミュニケーションを取っていくことができるのも、経済圏データ活用の醍醐味だと思います。
経済圏データの分析から生まれたもう一つの広告プロダクトが、楽天市場の「RMP - Showroom」です。ECサイトは、購入するものを決めてからやってくるところだと思われがちですが、楽天市場で行動する人のデータを分析すると、必ずしもそうではないことがわかります。1人当たりの滞在時間の長さやPV数の多さより、特定の商品を求めずに、何か良いモノはないかと回遊しているユーザーも多くいることが分かります。
これは楽天市場に限りませんが、ECサイトは、商品を購入する場所から、ユーザーと企業の接点という役割ももつようになっています。初めて商品を認知する場でもあり、理解を深めるためにも使われています。
そうしたユーザーに対して、企業が楽天市場をメディアとして使える広告プロダクトが、「RMP - Showroom」です。楽天市場の中で、商品の良さをより深くアピールできるキャンペーンを実施しながら、フルファネルのマーケティングを実施することができます。
経済圏データを生かし切る施策で売り上げにつなげていく
――電通デジタルとしては、楽天経済圏データの活用に対してどんなことを行っていますか。
松下 楽天グループと電通デジタル、そして電通の3社の連 携によって、現在、独自のマーケティングソリューションを開発、提供しています。
まず、楽天IDに基づく行動データ分析によるターゲティングを、主要プラットフォームへのセルフサーブの広告配信にて、実現しています。ここでいう行動データとは「楽天市場というECでのお買い物データ」にとどまりません。「1つの楽天IDに、楽天ポイントカードに加盟している大手ドラッグストアチェーン、ファストフードチェーンなどのオフライン上の購買から、ユーザーのライフステージまで、広く深いデータを蓄積している」という楽天経済圏の強みを生かし、自由度の高いターゲティングが可能です。
次に、広告配信が実際の購買に寄与したか。どのようなターゲティング、クリエイティブが最も購買を押し上げたか。そういった効果検証も、オンライン/オフライン双方で楽天経済圏データをひも解くことで可能になります。
分析の視点でもう一つ。広告配信前のプランニング段階での0次分析を行えば、商品を購買、または購買につながる行動をしている人の属性を事前に可視化し、精度の高い施策へつなげることもできます。
藤田 企業はこれまで、購買の前段階の認知や興味、資料請求といったいわば「中間KPI」を指標としてPDCAを回すケースが大半でした。しかし、この新しいソリューションを活用することで、「購買」から逆算した精度の高いメディア施策や、深い顧客理解に基づく新たな顧客体験を提供することが可能になります。より多くの企業にそうした価値を実感していただき、売り上げの向上につなげていきたいと考えています。
――経済圏データの活用における電通デジタルとのパートナーシップは、企業のマーケティングにどんなメリットをもたらしますか。
秦 経済圏データは、企業にとって購買まで含めた顧客理解の道を開く画期的なものです。ですが、単にユーザーの行動を可視化して終わりではありません。最終的に、企業の売り上げを向上させるために生かされなければ意味がないのです。
そのためには、この新しいデータを使い、どうやって顧客体験を設計していくかが最も重要になります。我々が考えているスキームはありますが、1社では足りないところもあります。そこに電通デジタルの企画力や知見を加えていただき、サービスの提供価値を上げていくことが必要だと思っています。これからも、両社の連携をさらに強固なものとしていくことで、企業のマーケティングを改善していけると確信しています。
松下 楽天経済圏データがもっているポテンシャルは非常に高く、当社としても、まだまだ開発の道半ばと感じています。
そして、データをひも解いて得られる示唆自体も非常に重要ですが、それを活用してどのような施策につなげるか。その打ち手の充実化にも、注力したいです。かつ、楽天市場というECはもちろん、外のメディア、オフラインと縦横無尽に打ち手を広げていけるか、という視点でも、楽天グループと一緒に推進していければと思います。
藤田 経済圏データの活用はまだ始まったばかりですが、早い段階で着手することで、競合他社に対して優位に立つことができます。ただし、有効に使いこなすにはノウハウが必要で、経済圏そのものの特徴に加え、様々なメディアの知識も求められます。当社は経済圏データの活用にいち早く取り組んできましたが、企業のマーケティング活動をアップデートすべく、これからも実績を積んでいきたいと思います。
本記事は日経BPの許可により「日経ビジネス電子版Special」2021年12月24日公開に掲載された広告から抜粋したものです。
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