電通デジタルと電通コンサルティングは、未来起点の経営戦略立案や新規の事業/サービス開発に活用できる「未来曼荼羅」というツールを提供しています。時代の変化に合わせて定期的にアップデートを重ねており、2022年3月28日に最新版「電通未来曼荼羅2022 Beyond covid-19」を公開しました[1]。このリリースに合わせ、2022年4月に活用方法を体験するワークショップ形式のオンラインセミナーを開催しました。その概要を紹介します。
※この記事は、2022年4月に開催したウェビナーを採録し、再構成したものです。
中期未来トレンドを予測する未来曼荼羅
「未来曼荼羅」は、企業活動に大きなインパクトをもたらすことが見込まれる未来トレンドを72の視点から予測し、「人口・世帯」「社会・経済」「科学・技術」「まち・自然」の4つのカテゴリーに分類して、コロナ禍の状況も踏まえながらまとめた、中期未来予測ツールです。多くの企業の経営戦略立案や事業シナリオの策定、商品・サービス開発などに活用され、高い評価を受けてきました。
未来曼荼羅を活用した支援の実績紹介
セミナーではまず、電通コンサルティング 加形拓也氏が、「未来曼荼羅」を活用した事業構想支援の実績をいくつか紹介しました。
1つ目は、所有にこだわらない顧客層が増えていると考えているマンションデベロッパーに対して、実態やニーズの把握、次世代サービスの提案を行った事例でした。分譲マンションのシェアリングサービス立ち上げを支援した事例も紹介されました。
次に、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが始まっている金融業界の事例として「手段としてのDXではなく、デジタルを活用してどのように自社の事業を伸ばすか、新しい事業を作るかという構想が必要という点から関わった」(加形氏)ケースが紹介されました。
新規事業構想の体験ワークショップ「エキナカのショッピングモールは、どうしたらもっと愛されるか?」
続いて、未来曼荼羅を使って、どのようにアイデアを作るかを体験する、オンラインワークショップが実施されました。ディスカッションテーマは、「エキナカのショッピングモールは、どうしたらもっと愛されるか?」です。
ワークショップは、参加者にいくつかのブレイクアウトルームに分かれてディスカッションしてもらい、その後メインルームに戻って「自社資産の棚卸し」や「Desire Pathの発見」に関して電通デジタル 長宝から共有した上で、最後に「未来の社会を見立てる」ということで、仕上げのディスカッションを行います。
ワークショップは、以下の図の左から右へ、4つのステップで進めます。
また、ワークショップのルールとして、以下の3点が共有されました。
①自由にアイデアや意見を出す
②他の方のアイデアや意見は否定しない
③笑顔で楽しむ
「未来の社会を見立てる」パート1
あるブレイクアウトルームでの様子を紹介しましょう。ディスカッションは、「miro」というオンラインホワイトボードツールを利用して実施されました。参加者はまず、配布されている未来曼荼羅の「未来トピック」という資料に目を通し、そのトピックの中から自分が気になるものを選んで貼り付け、理由を説明するという作業からスタートしました。
○ステップ①「影響のありそうな未来トピックを考える」
Aさんは「地域文化、郷土愛の強化」「リセールビジネスの加速」、Bさんは「ネオ農業ビジネスの活性化」「単身世帯の増加」、Cさんは「求められる多様な海外文化との融合」、Dさんは、「ネオ農業ビジネスの活性化」をそれぞれ選び、その理由について、自身の原体験や生活での実感、社会課題、ビジネスモデル、人々の幸せという観点から理由や意見を述べ、ディスカッションしました。
○ステップ②「特に影響の大きそうな未来トピックを決める」
ここまでのディスカッションを、共通するもの、かつショッピングモールが介在する余地がありそうなものという観点で、チームがまとめたのが以下のようなポイントです。
・地元コミュニティが強まる(若者の地元愛が増える、コミュニティスペース)
・ローカルで循環していく(循環の拠点としてこのショッピングモール)
・ローカルで循環やCtoCのトラブルを防ぐために介在する余地がありそう
・海外顧客を地域民がガイドすることで、外への還元はどうなるか
これらの要素を「影響が大きいと考えられる未来変化」と定義。これが起こることによって生活者の行動や気持ちがどのように変化するかについて、さらにメンバーでディスカッションを進めました。
○ステップ③「生活者の行動と気持ちを考える」
ディスカッションでは、以下のような意見が出ました。
・地元コミュニティの強化がキーワードになりそうだが、コミュニティが強くなるといい面もある一方、煩わしさというデメリットも出てきそう
・ショッピングモールの生活圏内で会員制の農園があり、スマホで遠隔から水やりするとか、UFOキャッチャーのように収穫するとか、ゲーム感覚で育てる場所があるとおもしろそう
・たまに草刈りに出向いて、そこで会員同士が友だちになり、採れたて野菜を使ってバーベキューするのはどうか
・自分が育てた作物を売ることで、モールが「買う場所」だけでなく「売る場所」にもなる。CtoCやCtoBのような、ビジネスの変化も考えられる
・野菜だけでなく肉、つまり畜産も……というのは難しいか。遠くの牧場を借りておいて、たまに世話をしに行くが、行けないときは遠隔でピピッと餌やり、みたいなイメージ
・育てた動物の肉を食べるのは、泣きそう
・食育につなげるという手はあるかも
・教育観点なら、子どもたちがドローンを操作できる場所があるとおもしろい
グループワークではこのように、会話がつながっていき、自由にアイデアを発散させます。
「未来の社会を見立てる」パート2
実際のコンサルティングサービスでは、上記のようなディスカッションと並行して、電通デジタルがリサーチした内容をもとに顧客企業にカジュアルなインタビューを実施し、自社資産など未来に生かせる会社の強みを見える化します。以下の図は、見える化に使うフォーマットです。
さらに、有識者などのリサーチネットワークを活用しながら、「どうすれば事業化できるか」「事業化するとしたら生活者に価値を提供するにはどうするか」を調べます。その後、プロジェクトメンバーでの議論を重ねながら、未来の社会変化において強みを生かせる半歩先のチャンスを発見していくことになります。
見つけた『半歩先のチャンス』は、生活者インタビューや有識者へのヒアリング、またそうして深掘りした内容についてのディスカッションを複数回繰り返すことでで、より精度を高めていきます。そうすることで、Desire Path(生活者が潜在的に求めていたもの)を発見することができます。
Desire Pathを発見したら、アイデア創出のフェーズに入ります。まずは質より量で、ワークショップ形式で100個以上のアイデアの種を発想し、評価チェックリストを使って絞り込みます。最終的には、確度の高いアイデアを10から20案程度をコンセプト化します。
以下の図は、アイデアを絞り込む際に活用するアイデアチェックリストです。このリストは、プログラム開始前にアイデア採用要件を議論して、参加者が何を大切にしているかという目線を合わせて作ります。そのことを図の左側で説明しています。
アイデア出しの段階では、思いつきを促すためにさまざまなツールを使います。例えば、思いつきを刺激するような写真、9象限に分けた視点、リフレーミングといったものがあります。
○ステップ④「愛されるためのアイデアを考える」
最後のグループワークはアイデア創出のフェーズです。前半でブレインストーミング的に出てきたポイントを、それによる影響や自社の資産状況などを考慮して具体化します。
まず、各参加者が具体的なサービスのアイデアを考え、それを「miro」に書き出してディスカッションするという流れですが、セミナーは簡易版ということで、アイデアを書き出すところまでが実施されました。
アイデアについては、メインルームに戻ってから電通デジタル 山嶋が、いくつかピックアップして紹介しました。
最後に山嶋は、「新しい事業を考えるときには、どうしても既存の自社資産に目線が行きがち、縛られがちです。しかし未来曼荼羅を使って未来に目線を合わせることにより、資産を生かしながら、新しくて楽しいことをするにはどうすればいいか考えるようになります。それが新規事業を考える必要な視点であると同時におもしろさだと思っています」とまとめて、ワークショップを終了しました。
脚注
1.^ "電通デジタルと電通コンサルティング、 afterコロナ時代の未来トレンドを72の視点で予測する 「電通未来曼荼羅2022 Beyond covid-19」を発表". 電通デジタル. 2022年3月28日.(2022年6月21日閲覧)。
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