デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が進むマーケティングにおいて、顧客一人ひとりの期待やニーズに応えたコミュニケーションを行うことは、成功のための重要な要素です。本記事では、顧客に寄り添ったコミュニケーションを可能にする手法について、その概要を電通デジタル 金子隼也、アドビ 萩原未来氏が解説します。
※この記事は、2022年7月に開催したウェビナーを採録し、再構成したものです。
ビジネス成長のための3つの課題
電通デジタル 金子隼也(以下、金子) : DXを行い、ビジネス成長を目指す企業には、共通する3つの課題があります。
1. 顧客との関係性をデジタル・リアル横断で構築
今日では、顧客がデバイスやシチュエーションを問わず一貫したブランド体験を得ることが当たり前になっています。その期待に応えるためには、デジタルとリアルを横断して、関係性を構築していかなくてはなりません。
2. 顧客ごとに寄り添った体験
情報過多な日々の生活の中で顧客に選ばれるために、企業は、一人ひとりに最適化されたコミュニケーションを行う必要が出てきています。
3. 顧客ニーズを取り込んだサービス拡充・改善の実行
顧客の声や行動データ、Web情報などを収集・分析して、サービスを改善し、顧客体験の品質を継続的に向上させることが求められています。
これらの課題を解決していくことで、売上向上や業務効率化によるコスト削減、あるいはその両方が実現可能です。
顧客はパーソナライゼーションを期待している
ここからは3つの課題の2つ目「顧客ごとに寄り添った体験提供」、すなわちパーソナライゼーションを掘り下げていきます。
パーソナライゼーションとは「個々の顧客の興味関心に基づいたコミュニケーションを行うこと」です。
年齢、性別、居住地、家族構成、職業、収入といった「属性情報」ではなく、「興味関心情報」をベースに、「適切なタイミング」「幅広い接点」で、一人ひとりの顧客と深くコミュニケートし、質の高い体験を提供することをパーソナライゼーションと呼びます。
なぜ、いまパーソナライゼーションが重要なのでしょうか?それは、顧客が期待する体験が多様化し、自分に合った情報をタイムリーに受け取ることを期待しているからです。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートによると、「パーソナライズされた体験を期待している」と答えたユーザーは71%、「パーソナライゼーションに優れた会社は、他に比べて40%多く収益を得ている」という結果も出ています[1]。
また、企業がパーソナライゼーションを進めるのに比例して、「コンバージョン」「1訪問者あたりの売り上げ」「注文単価」といったKPIも大きく改善しているというデータもあります[2]。パーソナライゼーションは、ビジネスにおいて待ったなしで取り組むべき課題です。
従来型と大規模パーソナライゼーションの違い
パーソナライゼーションは、「従来のパーソナライゼーション」と「大規模なパーソナライゼーション」に分けられます。
従来のパーソナライゼーションは、スケーラビリティ(拡張性、規模拡大性)を発揮できない問題を抱えています。具体的には、チャネルごとに個別設定されている、集計作業などをバッチ処理で行っている、コンテンツの制作・提供に時間がかかる、プライバシーへの配慮が不足している、などです。
一方、大規模パーソナライゼーションは、統合管理されたシステムにより、一貫性を持つコンテンツを顧客に合わせスピーディに作成、オンライン・オフラインの各チャネルに最適化し、リアルタイムに提供します。
大規模なパーソナライゼーションに求められる条件
アドビ 萩原未来氏 : 大規模なパーソナライゼーションをどう実現するか。膨大なコンテンツやそれに関連するデジタルアセットをパーソナライズし、さまざまなチャネルを通しユーザーに配信していかなければいけません。
具体的な例で説明します。1つの商品に対するデジタルアセット(ここでは画像のみ)は、一般的に25程度とされます。仮に45個の商品を15の地域やマーケットへ配信すると、16,875のデジタルアセットを管理しなくてはなりません。
これらのデジタルアセットをもとに、顧客ごとにパーソナライズしたコンテンツを作成し、さまざまなチャネルに配信するとなると、いったいどれぐらいの数になるのか、想像できません。この膨大なデジタルアセットとコンテンツをどのように管理していくかが、1つの課題になります。
また顧客は、複数のチャネルを徘徊しています。商品ページを見て、販売元の会社を確認し、ショッピングポータルサイトへ行き、価格を比較し、クチコミサイトやSNSでの評判をチェックします。こうして自分が買うべきベストな商品は何か、確認していくわけです。
この際、ブランドから統一されたブランディングメッセージが配信されていれば、知覚品質やロイヤルティ、信頼度が向上しますが、バラバラであればそれらは低下します。
常に正しいブランドメッセージを発信し、顧客とのエンゲージメントが深まれば、ブランドの認知度は上がり、メールの開封率や広告の費用対効果も向上していきます。現在のデジタルマーケティングにおいて、統合された顧客体験管理は非常に重要なのです。
こうした課題を解決し、大規模なパーソナライゼーションを実現するのが、Adobe Experience Platformです。
顧客体験管理に特化したAdobe Experience Platform
Adobe Experience Platformは、顧客体験の管理に特化した、業界初のデジタル基盤です[3]。あらゆるデータを顧客プロファイルに変換し、常に適切な顧客体験を提供可能にします。
○顧客プロファイルを管理するReal-Time Customer Data Platform
Adobe Experience PlatformのAdobe Real-Time Customer Data Platform(以下Adobe Real-Time CDP)は、オンライン・オフライン、そして複数のチャネルのユーザー行動履歴を集約し、顧客プロファイルを管理するソリューションです。
既存のCRMの顧客データやメールなども1つのプロファイルとして持つことができます。匿名データについても、行動データやファーストパーティデータなどをまとめることで、より精緻なパーソナライゼーションを提供可能にします。
またAdobe Real-Time CDPは、さまざまなデータを集約し、Web広告、メール配信、BI分析、機械学習へも活用できます。
○顧客体験を創出するAdobe Journey Optimizer
顧客体験を創出するソリューションであるAdobe Journey Optimizerでは、オムニチャネルでのメッセージ配信やオファーコンテンツの表示をデザインできます。
Adobe Real-Time CDPと連携することで、リアルタイムの顧客インサイトを利用し、AI学習を行った上でユーザーのオファーを自動化・最適化できます。
メールやアプリへのプッシュメッセージに加え、カスタムアクションでAPIを呼び出せば、既存のメッセージ配信ツールと連携し、FacebookやSlackへの配信なども行えます。アドビ以外の他社のソリューションと容易に連携できることもポイントです。
また、ジャーニーデザイナーという、ユーザーにパーソナライズされたコンテンツを配信する機能では、直感的に配信をデザインできます。
このようにAdobe Journey Optimizerで実施した効果測定は、AI機械学習を活用したAdobe Customer Journey Analyticsで解析することで、目に見えなかったカスタマージャーニーを可視化することが可能です。また、ダッシュボード機能を使えば、経営者やビジネスユーザーにリアルタイムでインサイトを提供できます。
デジタルアセット管理にはAdobe Experience Manager Assets
一方、膨大なデジタルアセット管理には、Adobe Experience Manager Assetsを使います。
Adobe Experience Manager Assetsは、アセットにメタデータを使用して管理情報を付与し、業務を効率化できます。画像そのものの属性情報に加え、商品のSKUなどを付与することで既存の画像を再利用しやすくなります。
また、Smart Tagと呼ばれるAdobeのAI機能(Adobe Sensei)を使った自動タグ付け機能を利用することで、ユーザーの興味関心を可視化できます。
例えば、閲覧したいくつかのWebページに、「スキー」や「雪」などのキーワードが付与されていることから、ユーザーがスキー旅行に興味を持っていることを推測するなどの使い方ができます。これらの解析結果をリアルタイムで顧客プロファイルに紐付けていくことで、ユーザーの属性情報に頼らずに興味関心を理解し、パーソナライズを提供できます。
このようなDAM利用での集約管理は手動作業を削減し、デジタルアセットを効率よく正確に管理できるため、デジタルマーケティングの運用全体をスピードアップできます。
コンテンツ管理にはAdobe Experience Manager Sites
コンテンツ管理に関しては近年ヘッドレスCMSが話題ですが、CMSのAdobe Experience Manager Sitesは、APIファーストでヘッドレス型のコンテンツも容易に配信可能です。
1つのコンテンツをモジュール化し、柔軟に利用することで、さまざまなチャネルやデバイスへの配信を運用効率化でき、コンテンツの制作スピードが上がり、最適な情報を、最適なタイミングで配信する体制が確立できます。
このように、Adobe Experience Platform とAdobe Experience Managerのさまざまな製品によりコンテンツ管理を効率化し、市場投入までの時間(コンテンツベロシティ)を短縮することで、最適な顧客体験を提供することが可能になります。
金子 : 電通デジタルでは、アドビとの協業において、Adobe Experience Managerのプラットフォームを導入し成功を遂げた企業事例が複数あります。
今後も、電通デジタルとアドビの強みを生かしたパートナーシップによって、クライアント企業様のビジネス成長を支援してまいります。アドビ製品の導入や活用支援が必要な際は、ぜひお問い合わせください。
●脚注(出典)
1. ^ "The value of getting personalization right—or wrong—is multiplying". McKinsey & Company.(2021年11月12日)2022年8月24日閲覧。
2. ^ "Failure to Scale:The State of Personalization in Retail and Travel". Insiciv.(2021年7月)2022年8月24日閲覧。
3. ^ "業界初の、顧客体験管理のためのデジタル基盤 | Adobe Experience Platform".アドビ. 2022年8月24日閲覧。
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