2022.05.24

なぜGA4はなるべく早めに導入するべきか?(第1回)

大企業デジタル担当者のためのGA4入門

2020年10月、アクセス解析ツール「Googleアナリティクス4(以下、GA4)」がリリースされました。本連載は、主に大企業(ナショナルクライアント)のマーケター、EC担当者、広告担当者の方を対象に、GA4の導入や運用に関する悩みを解決することを目的とした連載です。

第1回はGoogleアナリティクスの歴史や、ユニバーサルアナリティクスとGA4の違いについて触れ、GA4の早めの導入を推奨する理由を解説します。

※この連載は主にGA4の無償版についての解説です。GA4の有償版の話をする場合には、「有償版」と記載します。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

エクスペリエンスプロデュース部門

馬場 建至

Googleアナリティクスの歴史

Googleアナリティクスの歴史は2005年から始まりました。最初は流入数しか見られず、機能もセグメントしかなかったのですが、少しずつ時代に合わせ、2番目のGoogleアナリティクスでは、イベントトラッキングやEコマースなどの機能が追加されました。

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3番目のGoogleアナリティクス「ユニバーサルアナリティクス」になって、カスタムディメンションやクロスドメインなどの機能が加わりました。現在「Googleアナリティクス」と呼ばれて使われているのは、ほぼこのユニバーサルアナリティクスです。

その後、アプリとウェブを横断して計測できる「アプリ+ウェブプロパティ」というGA4のβ版を経て、2020年10月に新しくリリースされたのがGA4です。GA4ではウェブとアプリの横断計測ができるようになったほかにも、ユニバーサルアナリティクスとはまったく異なると言っていいほどの大幅なアップデートが行われました。

ユニバーサルアナリティクスは2023年で計測停止

すでにご存じの方も多いと思いますが、「ユニバーサルアナリティクスの計測は2023年7月1日で停止する」とGoogleから発表がありました[1]。その後、6カ月間はデータが見られるとのことですが、それ以降どうなるかは未定です。

そのためユニバーサルアナリティクスからGA4へ移行するか、代替ツールを入れるかしないと、効果測定や分析ができなくなります。

まだ2023年7月までは時間的に余裕がありますが、各企業が代理店に導入作業を依頼することが予想されます。ギリギリだとリソースに余裕がなく受け付けてもらえなかったり、導入したとしても設定や実装が間に合わず、十分な効果測定ができなかったりする可能性もあります。

ユニバーサルアナリティクスとGA4の違い

GA4での大きな変更点は以下の5つです。これらは当然、日常の運用に大きな影響があります。

 

  • 見た目とUI(左メニュー)
  • アカウント構造
  • データの収集方法
  • データの保持期間
  • 無償版でもBigQueryへのデータ吐き出しが可能(一部制限はあり。BigQueryは無償枠を超えれば有償)

 

見た目とUI(左メニュー)が大きく変更

GA4では、見た目がユニバーサルアナリティクスから大きく変更されています。

ユニバーサルアナリティクスの「ユーザーサマリー」画面
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GA4の「ユーザー属性サマリー」画面
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また、左のメニュー(UI)も大きく変更されました。

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ユニバーサルアナリティクスは「ユーザー」「集客」「行動」「コンバージョン」でしたが、GA4は「レポート」「探索」「広告」「設定」となっています。不要な機能やメニューがなくなり、非常にシンプルになった印象です。「どんなメニューや機能があって、どのようなレポーティングや分析ができるのか」を、一から学びなおす必要があります。

アカウント構造が2階層に

ユニバーサルアナリティクスのアカウント構造は「アカウント」「プロパティ」「ビュー」の3つの階層がありました。GA4では「ビュー」がなくなり、「アカウント」と「プロパティ」だけになりました。これは一見地味ですが、大きな変更点です。

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たとえば日本語版・英語版・中国語版があるサイトの場合、ユニバーサルアナリティクスではそれぞれの計測を「ビュー」で切り分けていましたが、GA4では「プロパティ」単位で切り分ける必要があります。また、別ドメインの関連サイトが複数あり、データを切り分ける場合も、GA4では「プロパティ」単位で設定する必要があります(GA4のプロパティは、1アカウントにつき最大100個まで作成することができます)[2]

データの取得方式がすべてイベントに

ユニバーサルアナリティクスとGA4では、データの取得方式も違います。

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上図のように、ユニバーサルアナリティクスでは計測方式が混在していましたが、GA4ではすべてイベントに統一されました(ページビューもイベントとして計測されています)。これにより、コンバージョン数など一部指標の計測定義が変更されました。

またGA4では「拡張計測機能」をONにすることで、外部リンククリック、ファイルダウンロードなどを自動でイベント取得してくれるようになりました。

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これにより、ユニバーサルアナリティクスではGoogleタグマネージャーでの実装が必要だったイベント機能も、一部ではあるものの、GA4内でイベント設定できるようになりました。

データ最大保持期間が14カ月に

ユニバーサルアナリティクスではデータの最大保持期間が50カ月でした。GA4では14カ月に変更され、データの保持期間がかなり短くなりました。

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「昨年同月に実施したキャンペーンはどんな効果があったのか」「昨年の今頃はどんな傾向だったのか」など、昨年(度)対比を重視している場合は、GA4に移行して、今のうちからデータを溜め始めないと効果測定ができなくなります。

なくなった指標と新しい指標

GA4では、ユニバーサルアナリティクスでは重要な指標であった「直帰率」「離脱率」がなくなり、代わりに「エンゲージ」「エンゲージメント率」という指標が加わりました(2022年4月11日時点)。

ランディングページなど、重要なページの効果測定や分析をどのように行うかが問われますし、新しい指標を使って示唆を出すのにも、ある程度の習熟期間と経験が必要になるでしょう。

GA4導入を今から勧める理由

計測終了間際のリソース不足

2023年7月のユニバーサルアナリティクス計測終了間際は、駆け込み需要で代理店や制作会社のリソースが不足し、対応しきれないことも十分に考えられます。

ユニバーサルアナリティクスとGA4は併用が可能です。ユニバーサルアナリティクスの設定をスムーズに引き継ぐためにも、今のうちにGA4を導入して、少しずつでも設定を進めておくことが望ましいかと思います。

GA4での再定義が必要

GA4でも、ユニバーサルアナリティクスと同じ条件でデータを取得したいと考えている方もいるかと思います。しかし、先にも書いたように、データの取得方式や指標に変更があるため、GA4でユニバーサルアナリティクスの完全再現をすることはできません。

ユニバーサルアナリティクスで複雑なイベントや、カスタムディメンション、コンバージョン設定などをしていたプロジェクトは、その設定がGA4でも再現できるのか、再現できない場合はGA4でどのようにデータを取得していくのか、計測要件の再定義が必要になります。

また、イベントやコンバージョンなどは、実際にユーザーが行動をとらないとデータが計測されません。GA4を導入し、コンバージョンを設定してから、データを蓄積する時間もある程度必要です。

学びなおす時間が必要

私が早めの導入を推奨する一番の理由はこれです。先ほど説明したように、ユニバーサルアナリティクスとGA4では大きな変更点がいくつもあります。そのためGA4を導入してからも、

  • 欲しいデータが出せない
  • どのように設定したらいいかわからない
  • ユニバーサルアナリティクスとGA4でデータの乖離が発生する

など不慣れなことが起こるでしょう。ユニバーサルアナリティクスに慣れている人ほど、最初は使い勝手が悪く感じるかもしれません。特に広告などで毎月効果測定をしているプロジェクトにおいては、各レポートで表示されるデータやチャネルの定義が違うので、今のうちから慣れておく必要があります。

まとめ

繰り返しになりますが、GA4の導入を検討されているようであれば、とにかく早めに導入することです。GA4はユニバーサルアナリティクスと併用できます。今なら両方を比較したり、不足しているものを確認したりすることが可能です。

GA4は導入して終わりではなく、導入してからが始まりです。時間に余裕を持ち、少しずつ学び直しや環境の移行を進めていくことをオススメします。

次回は「ユニバーサルアナリティクスとGA4の計測の違い」について解説します。

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厳密に言うと、クロスデバイスで同一ユーザーとして認識できるのは、Googleアカウントにログインしていて、かつ広告最適化を許可しているユーザーだけになるので、一部ユーザーだけになります。

しかし、このような機能や計測が備わったことで、会員IDを発行していないサイトでもクロスデバイスの分析ができるようになりました。


脚注

1. ^ ユニバーサル アナリティクスのサポートは終了します". アナリティクス ヘルプ(2022年3月16日)2022年4月13日閲覧。

2.^ [GA4] Google アナリティクスの階層構造". アナリティクス ヘルプ. 2022年4月13日閲覧。

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