日々、企業のデジタルマーケティングと向き合う担当者の皆様は、「マーケティングとデータ/テクノロジー」を考えるにあたり、以下のようなお悩みをお持ちではないでしょうか?
「CRMを導入したが、うまく使いこなせているのだろうか」
「MarTechの先進事例はよく紹介されているが、自社でどのように進めたら良いのか分からない」
「データ活用の方針やデジタルマーケティングの進め方は今のままで正しいのだろうか」
この記事では、データ/テクノロジーを活用したマーケティング施策立案にあたっての考え方と、より効果的な施策実行を実現するためのヒントを解説します。
※この記事は、2023年8月に開催したウェビナーを採録し、再構成したものです。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
なぜデジタルマーケティングは「難しい」のか?
まず、「データ/テクノロジーを使ったデジタルマーケティング施策の作り方」を考える前に、なぜ、そのような施策を考えることが難しいのか?を考えてみましょう。
言わば、なぜデジタルマーケティングは難しいのか?ということです。それには大きく3つの理由があると考えています。
理由①「手段が目的のふりをしてやってくる」から
いざ、デジタルマーケティングを実施しようとして動き出すと、とにかく具体的な打ち手の話題になります。
例えば、
- オウンドメディアがとにかく大事
- メールマーケティングをやらなくちゃ
- SNSの活用は欠かせない
等、マーケティングが「デジタル」「データ」にまつわるものになると、途端に「どうやってやるか?」という「How」の議論にウエイトが置かれてしまう、という話はよくあります。
というのも、これらの打ち手をひとつ実行するにも、予算や時間、人員体制など、相当のリソースが必要になり、「その打ち手をやりきる」こと自体に相当のパワーを必要とするからです。
本来、打ち手は、目的を達成するための手段に過ぎません。しかし、その手段の実行に没頭しているうちに、手段を実行することが目的となり、本来の目的を忘れてしまう、ということがデジタルマーケティングの現場では起きてしまいがちです。その結果、目的がバラバラの施策を多数抱え、整理に苦慮しているという方も多いのではないでしょうか。
理由②システムとマーケティングの間の翻訳が難しいから
デジタルマーケティング施策の目的を定め、いざ具体的な施策を作っていこうとすると、また新たな障壁が出現します。それは、「目的から施策を作る道のりが分からない」ということです。ある種抽象的な目的から具体的な施策を作る、という作業は決して容易ではありません。さらに、マーケティング施策をデータ/テクノロジーを使って実現するには、「マーケティング施策」を「データやシステムを用いた仕組み」に翻訳することが必要です。
「翻訳」には、その施策を実現するためにどんなデータやシステムが必要か、それは今のデータやシステムでできるのか、主にフィジビリティという観点で、さまざまな検討が必要です。その難易度から、ことデジタルマーケティング施策となると、「かご落ちのフォロー」や、「定期メルマガ」等の王道の施策を網羅し、自社のビジネス課題に即した施策を立案するまでに至っていない、という状況も多く見られます。
理由③シンプルに、やることが膨大だから
やりたい施策も決まり、その施策に関するフィジビリティも明らかになり、いざ施策の実現に動き出そうとすると、やらなくてはいけないタスクの多さに驚いた、という経験のある方も多いのではないでしょうか。
デジタルマーケティング施策を実行するまでには膨大なタスクが待ち受けており、何から手をつけていいかわからない。そして一気に大きな予算を取るのも難しい。ゆえに、まずはスモールスタートで、PoCを実施して様子を見よう、という結論になることが多いです。PoCとは「Proof of Concept(概念実証)」の略ですが、スモールに実施する、という側面が大きく取り上げられ、「実証したい仮説の結果を知る」という側面が置き去りにされてしまうということが多々あります。その結果、何度もスモールに施策を実施したものの、次のステップになかなか進めない、言わば「PoC迷子状態」という状況も散見されます。
デジタルマーケティングを前に進めるヒント
ここまで、データ/テクノロジーを活用したデジタルマーケティングが難しい3つの理由についてお話してきました。
ここからは、そんなデジタルマーケティングを前に進めるヒントについてお話できればと思います。
まず、ここからの論のベースとなる考え方は「優先順位付け」です。どんなビジネスにおいても、予算、時間、人員などの資源は有限です。そのような中で最大限の結果を出すには、実行する事項に優先順位付けをする必要があります。それはデジタルマーケティング施策の立案においても変わりません。大切なのは目的を整理し、施策の優先順位付けをすることです。
次に、その「目的を整理し、施策の優先順位付けをするプロセスを解説していきます。
自社の売上を構成する要素を俯瞰してみる
「目的」は、自社の売上を構成している要素をブレイクダウンし、デジタルマーケティング施策によってそのうちの何にインパクトを与えればよいのか、ということを考えると整理できます。まずは、自社の売上を構成している要素を俯瞰して整理してみましょう。
ここからは、架空のアパレル企業DD社の例を使って説明します。例えば、DD社の「一定期間の売上」が何から作られているのかを分解すると下図のようになります。
この例では、一定期間の売上を客数と客単価という要素に分解し、さらにそれらをブレイクダウンしています。結果、「リピート率」を追いつつ、「1購入あたりSKU数」も重要な要素として目的を整理しています。
定義して解像度を上げる
ところで、目的を整理する際に気を付けなければならないのが、言葉の定義です。
例えば、一般的に「リピート率」とは、「一定期間に2回以上の購入を行った顧客の割合」という意味ですが、DD社では以下のようなことがデータ分析から分かったとします。
データから、
- 1シーズンに1回ペースで購入するお客様が多い
- 初回購入の次のシーズンで2回目の購入をしているお客様は、3回目、4回目も購入する確率が高い
すると、
リピート率を「初回購入の次のシーズンで2回目を購入する人の割合」
と定義するほうが、DD社のビジネスにおいては適切な指標設定であると言えます。これにより、初回購入の次のシーズンで2回目を購入してもらう施策を考えることになり、施策の目的がさらにクリアになります。
また、言葉の定義をそろえることは、チーム内のコミュニケーションを円滑にすることにもつながります。
何気なく使っている言葉でも、一度立ち止まってどのような意味で使っているのかを考えてみることが、より効果的な施策を作るポイントと言えるかもしれません。
目的達成を阻む事象と要因を整理する
施策の目的は決まりました。次にやるべきことは、今なぜその目的が達成されていないのか、つまり目的達成を阻む要因を深掘りし、優先的に取り組むべきことを定めることです。
例えば、DD社デジタルマーケティング部では、初回購入の次のシーズンで2回目を購入しない理由の具体ケースを列挙し、パターンと要因に分けて以下のように整理してみました。
これらの具体ケースのうち、目的達成に最も影響している要因は何か、定量データや定性データを用いて分析します。結果、最も解決すべき問題を課題として設定し、施策を組み立てていくというプロセスを踏みます。
仮に、「ブランドのことを忘れてしまう」ということが一番の解決すべき課題であるということが明らかになった場合、その課題を解決するために、顧客との関係を維持するような施策を重点的に実施する、という風に施策の方針決定ができます。
その場合、初回購入後にDD社のブランドを忘れてしまっている人たちに対して、
- 初回購入後に関係を維持して
- 次のシーズンに購入ブランド候補として想起してもらう
というように、打ち手の方向性をさらに明確化することができます。
往復運動を意識して施策を具体化する
次に整理すべきことは、以下のWho(誰に)、What(何を)、How(どのように)です。
- Who……誰にこの施策を実施するのか
- What……どのようなメッセージを送るのか
- How……どのようなチャネル・タイミングでコミュニケーションするのか
Who、What、Howをデジタルマーケティング施策で決める際に、特に重要になってくるのが、「目的」「マーケティング施策」「データ・システム」といった異なる概念の間の往復運動です。
目的、マーケティング施策、データ・システムの3概念の間を往復し、目的にかなった施策がデジタルで実装できているかを常に確かめ、チューニングをしながら進めることで、ブレのない施策の実施を実現できます。
デジタルマーケティング施策に欠かせない「専門性」
ここまで、効果的なデジタルマーケティング施策を立案するための進め方とそのポイントについてお話してきました。
このような施策立案のポイントがある中、実際に施策を実現していくにはもう一つ必要な要素があります。それは「専門性」です。
先ほど具体の打ち手はあくまで目的を達成するための手段である、とお話しましたが、その手段が専門性を以て実行されなければ、デジタルマーケティング施策の成功は難しくなります。
デジタルマーケティング領域では、日々新しい技術が登場し、それに対応してマーケティングの形もどんどん変化していきます。事業を推進する一方で、デジタルマーケティングのトレンドの全てを自社でキャッチアップするのは容易なことではありません。そのサポートを行うために存在しているのが、我々のようなデジタルファームです。
デジタルファームは、多様な業種のデジタルマーケティングを支援することによって、知見と経験が蓄積されることが強みです。技術の最新情報やトレンドが常に集まってくるという「知見」面での強み、多様な業種のデジタルマーケティングを通じて培われる「経験」面での強み、その双方を活かした支援が可能です。
デジタルマーケティングに必要な専門性がますます細分化していく中、「専門家の力」をチームの力に変えていくことは今後一層必要になっていくと考えられます。マーケティングのビジョン構築、戦略策定、シナリオプランニング、基盤の構築やテクノロジーの導入を検討しているご担当者の方は、ぜひ電通デジタルへお気軽にお問い合わせください。
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