「CRO(コンバージョン率最適化)を長期間やってきたが、最近どうがんばってもCVRが伸びない」という経験をしたことはありませんか? そのような状態になった際、新たなアプローチとして、電通デジタルではAIを活用した方法を提案しています。今回は、AIによるキャッチコピー生成とコンテンツアダプティブにより、CVRの頭打ちを打開したCRO事例をシニアCROストラテジストの薫森竜夫が紹介します。
CRO実施から1年、CVRの伸びが頭打ちに
クライアント企業の業種 | 情報・通信 |
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サービス | 電子決済サービス |
コンバージョンとして定めているアクション | Webサイトからの仮申し込み(一部、フォームへの到達) |
2020年6月から、上記サイトにて、加盟店の新規獲得を目的としたランディングページのCRO/LPOを開始。広告とファーストビューを連動して改善したことで、コンバージョン率の改善率173%を実現しました。この施策については、過去の記事で詳しく説明しています。
その後もCRO/LPOを続け、様々な施策を講じることで、サイト全体のCVRは順調に向上していましたが、2021年の終わり頃から伸び悩むようになりました。
一般に、WebサイトのCVRには「見えない天井」と呼ばれる上限値があります。CROを開始した当初、CVRは高い伸び率を示しますが、徐々に伸び率が下がり、ある時点で頭打ちとなります。
CROは陸上競技と同じです。人はどんなにがんばっても100mを5秒では走れませんし、走り高跳びで10m跳ぶことはできません。
CVRも10%、20%、30%と伸び続けることはありません。どこかの段階で伸び率は上限に達します。この上限値はWebサイトごとに異なりますが、それが何%なのかは、明示的にはわかりません。
今回の事例でも、それまで様々な施策を講じてきましたが、施策が頭打ちとなり、CVRが上限値に達したように見えました。
この段階に達すると、ヒトがどれほど施策を考えても、CVRの上限値を押し上げることはかなり難しいというのが実感です。
そこで我々は、この事態を打開し、新たなPDCAのアイディアをクライアントに提供するために、AI技術を利用することにしました。
当時、電通デジタルはCRO/LPO分野で、データアーティスト株式会社(2023年4月に電通デジタルと合併)、DLPO株式会社(A/Bテストツールベンダー)と連携し、共同研究開発を行っていました。そこで開発された技術を用いる「AIを活用したコピー生成施策」を提案しました。
AIで生成したコピーが、A/Bテストで勝率70%
対象としたのは、サービスページのファーストビューに掲載されている以下のキャッチコピーです。
サービスページのキャッチコピー(デフォルト)
導入コスト0でリスクなし
このデフォルトのキャッチコピーをA/Bテストで改善するにあたり、比較対象となるB案を、人間ではなく、コピー生成AIに作ってもらおうというわけです。
まず、独自のクローラーによって「クライアント企業のサービスページ」と「競合企業のサービスページ」から情報を取得し、解析用AIで解析して「解析データ」を作成しました。
一方で、コピー生成AIには、あらかじめ以下のデータを学習させておきました。
- 電通グループ独自のキャッチコピーの勝ちパターン
- 電通グループ独自のテレビ視聴データ(STADIA)
- Twitter(現:X)のAPIから取得した投稿の全量データ
学習済みコピー生成AIに、「解析データ」を併せて学習させ、クライアント企業のサービスページに適したキャッチコピーを数百パターン生成しました。その数百パターンをヒトの目で精査し(3週間程度)、最終的に残ったのが以下の10パターンです。
コピー生成AIが作成したキャッチコピー(10パターン)
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デフォルトのキャッチコピーをA案、コピー生成AIが作成したキャッチコピーをB案とし、順次A/Bテストを実施しました。結果は以下の表のとおり、AIで生成したコピー10個のうち、7個がデフォルトに勝利しました。
一般的には、A/BテストにおいてB案の勝率は3割ほどと言われる中、7割というのは非常に高い勝率です。
コンテンツアダプティブで1,008通りのパターンからチャンピオンを選定
続いて、勝ちパターンとなったファーストビューのキャッチコピー7案に対し、
- CTAボタン(ボタンの文言、色、形状も含む)
- ページコンテンツの順序
は、どのような組み合わせが最適なのか、導き出す施策に取り掛かりました。電通デジタルでは、この施策を「コンテンツアダプティブ」と命名しています。
組み合わせのパターン数は、全部で1,008通り(図3参照)。DLPOを用いて多変量テストで、最適な勝ちパターンは何か、検証を行いました。
DLPOとは、のべ800社以上の導入実績を誇るLPOツールです。A/Bテスト、多変量テスト、パーソナライズを用いて、CROのための高精度な分析を行うことができます。
DLPOで約3週間かけて検証データを取得した結果、もっとも数値が高かった要素のパターンを「チャンピオン」、次に数値の高かった要素のパターンを「次点」とし、チャンピオン同士、次点同士を組み合わせました(図4参照)。
「チャンピオンの組み合わせ」で、CVR改善率が124.79%に
チャンピオンを組み合わせると、本当にCVRがもっとも高くなるのか、最終的に判断するために、以下の3パターンで最終検証を行いました。
デフォルト vs チャンピオンの組み合わせ vs 次点の組み合わせ |
結果は、「チャンピオンの組み合わせ」のCVR改善率が124.79%と、もっとも高い数値となりました。
この後、さらにユーザー属性(初回訪問者、再訪問者、曜日、時間帯など)ごとに傾向を分析し、それぞれの属性に対しコンテンツアダプティブを実施することで、さらに各ページのCVRを引き上げることに成功しました。
その結果、上限値に達したかに見えていたWebサイト全体のCVRは、再度上昇傾向となり、CVRを安定させることができました。
AIを活用したCRO/LPOなら電通デジタルへ
「施策の頭打ち」という課題は事業会社、代理店、制作会社、どの立場でも起こり得ることです。特に真摯に様々な施策を実施されてきたご担当者が直面する課題だと認識しています。
その際に、新たな一手、新たなアイディアとしてAIを取り入れてみることで、本ケースでは「施策の頭打ち」を打破し、CVRの上限値を押し上げることができました。
昨今、AI技術の革新は目覚ましい状況ですが、今回紹介した事例のように、電通デジタルではAI技術をいち早くCRO/LPOに取り入れて、実績を積んでいます。
「CRO/LPO、Webサイト改善にAIを活用してみたい」とお考えの方は、ぜひこの機会にご相談ください。
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