2023.01.11

教育大手サイトでCVR改善率116%達成 ポイントは丁寧なCROプランニング

オウンドメディアのCRO(Conversion Rate Optimization、コンバージョン率最適化)では、施策内容に注目が集まりがちですが、最速で最大の成果を上げるには、プランニングが大事です。

特に、複数のオウンドメディアを運営する企業においては、どのWebサイトからCROを始めるか、その選定が成否のカギを握っています。

電通デジタルは、教育業界の大手企業から依頼を受け、サービスサイトのCROを担当。定量&定性分析により課題を抽出し、改善優先度の高いサイトに施策を実施することで、短期間でCVR改善率116%を達成しました。

数あるCRO担当案件の中でも、特に丁寧にプランニングを実施した本事例について、メイン担当者の安達麻希子がご紹介します。

受注の経緯とクライアントの課題

紹介する案件の概要

クライアントの業種教育
事業内容 家庭教師派遣、個別指導塾、オンライン学習支援など
コンバージョンとして定めているアクションお問い合わせ・資料請求 
CRO実施によるCVR改善率平均116% 
A/Bテスト本数 9本(約3ヶ月半での実施) 
主なCRO施策改善優先度の高いサービスサイト/ディレクトリ/ページを洗い出し、お客さまのニーズに沿った改善策を実施 

このクライアントは教育分野で複数の事業を展開しており、事業ごとにサービスサイト(オウンドメディア)を制作・運営しています。

2019年2月に、すべてのサービスサイトで一斉にリニューアルを実施。その後、電通デジタルCROグループに、「リニューアルの効果を検証・分析してほしい」という依頼があり、それをきっかけとして、各サービスサイトのCRO、ならびにPDCA支援が始まりました。

どのような業種であれ、Webサイトの最終目的(KGI)は売り上げの最大化。その達成のためにCV(コンバージョン)数、CVR(コンバージョン率)を最大化するのが、CROの役割です。

ただ、どのWebサイトのどの部分から始めるべきか、どのような施策をどのような順番で行うべきかは、クライアントごとに異なります。CROの費用対効果を高め、最大の成果をもたらすには、CROのPDCAのうちの「P」、すなわちプランニングが重要です。

電通デジタルCROグループでは、CROのプランニングを以下の手順に従って進めます。

  1. KGIとKPIの設定
  2. 対象者(ターゲット)を明確にする
  3. Webサイトの健康診断(状態把握)
  4. ユーザー行動から主要導線を明確化し、課題特定へ

このような手順を踏むことで、課題をデータドリブンで可視化でき、どこにどのような対策をすべきなのかが明確になります(くわしくは過去の記事を参照してください[1])。

今回の例では、KGIは売り上げ、KPIはCV(問い合わせ・資料請求)です。対象者(ターゲット)はサービスサイトごとに異なるので説明を省略します。

Webサイトの健康診断(状態把握)ですが、Googleアナリティクスのクロスドメイントラッキングが設定されていなかったため、すべてのサービスサイトを横断したユーザーの行動の分析ができない状態でした。

そこでまずは各サービスサイトの利用状況を把握し、「どのサービスサイトからCROのPDCA支援を始めるべきかの選定作業」から始めました。


改善優先度をスコアリングし、CROを実施するサービスサイトを選定

各サービスサイトのユーザーの利用状況は、以下の3つのデータを中心に分析し、把握することにしました。

①セッション数の月別推移

Webサイトには通常期・繁忙期・閑散期があり、業界ごとに異なる型があります。CROの効果を正しく測定するには、その型を特定し、トレンドの影響を取り除かなくてはなりません。過去1年分のデータを用いて通常期の平均セッション数を算出し、これをベンチマークの数値として定めました。

②利用デバイス割合

各サービスサイトともにレスポンシブ対応がされていない状況だったため、PCサイトと スマートフォンサイト、どちらからCROを始めるのかの見極めが必要でした。通常期のアクセスデータを用いてお客さまの利用デバイスを分析し、利用割合が多かったスマートフォンサイトから取りかかることにしました。

③ページ別CVR分析

すべてのサービスサイトを対象に、ディレクトリとページにおいて「セッション数」「CVしたセッション数」「CVR」を分析し、改善優先度をスコアリングしました(図1)。「セッション数・CVしたセッション数が平均よりも多い」ディレクトリやページを優先度高として抽出し、その中で「CVRが低い」ページを最優先で注力すべきページと判定しました。

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このようにして算出した改善優先度をサービスサイトごとに比較し、

  • 改善優先度のページが多い
  • CROを実施することで最大の効果が見込める

上記2つの観点から「最初にCROを実施するサービスサイト」を選定し、クライアントに提案。了承を得ました。


市場分析、競合分析、自社分析で課題を特定

2019年は教育業界の変革期でもありました。2020年度から始まる大学入試改革の一環で、2021年1月から「センター試験」に代わって「大学入学共通テスト」が開始されることなどが発表。「学んだことを理解する力」から「知識や技能の習得を元に、“自分で考え、判断し、実際の社会で役立てる”力」へシフトした教育に変わることもあり、業界についても理解が必要な状況でした。そのため、上記の洗い出しと並行して、市場分析、競合分析、自社分析で課題を特定しました。

まず、クライアントの営業担当者やカスタマーセンターの方に特にヒアリングをしたい事柄(大学入試改革の対応/業界マップの認識合わせ/親子別の入塾傾向の違いなど)をピックアップした分析資料を準備しました。

資料をもとに、クライアントの営業担当者やカスタマーセンターの方にヒアリングを実施。クライアント自社のサービスの強みと弱み、お客さまがクライアントサービスに求めていること、今後の課題、お客さまと電話する際に参照しているWebサイト、などを引き出すことができました。クライアントのWebサイト担当者も同席していたため、これらの認識を共有し、課題や改善の方向性など、スムーズに話を進めるきっかけとなりました。


顧客分析により、具体的な改善ポイントを抽出

続いて顧客分析では、サービスサイトを利用するお客さまの行動や心理を理解するために、主に以下の3つのことをクライアントの担当者と一緒に行いました。

①コールセンターのお問い合わせデータを取り寄せ、シーズンごとにお客さまのニーズを可視化

ヒアリング(定性調査)によりお客さまのニーズを引き出せたものの、あまりに主観が強すぎると改善の方向性を見誤る可能性もあるのではないかと一抹の不安が生じました。特にお客さまが求めていることは定量的なデータをもとに裏付けたいと考えました。そこで繁忙期にあたる春~夏のコールセンターのお問い合わせ内容と詳細のデータを、テキストマイニングすることをクライアントに提案し、了承を得ました。

各月のお問い合わせ内容の詳細をテキストマイニングすることで、ヒアリングから明らかになったニーズの裏付けをとることができ、さらにシーズンごとのお客さまのニーズと既存のページに不足している情報を得ることができました。

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②ユーザー行動分析ツールを用いて、お客さまのサイト内行動を可視化 

この時期、ユーザー行動分析ツールUSERGRAMの無料利用が実現したためサービスサイトに導入。一人ひとりのお客さまがどのようにサイトを見ているのかを可視化し、クライアントの担当者とともに勉強会を実施。お客さまの行動は大きく4つのパターンに分かれていましたが、クライアントが想定した順にはサイトが見られていない事実などが浮き彫りになりました。 

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③改善優先度の高いページを中心にヒートマップ分析を実施

最後に、特に課題のある改善優先度の高いページを中心にヒートマップ分析を行いました。

  • 対象のページがどれくらい下まで読まれているのか(スクロール)
  • じっくり読まれているコンテンツエリアはどこか(アテンション)
  • ページ内がどのような順番で読まれているのか(ストリーム)

これらを中心に見ていきました。ここでもクライアントの担当者が想定していなかった課題が見つかり、さまざまな気づきと改善を行うポイントなどを洗い出すことができました。

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ここまで実施した内容をすべて整理し、クライアントと改善方針のミーティングを実施しました。実施した内容はこまめに報告し共有。さらにクライアントの担当者とも勉強会を重ねていたため、改善方針の擦り合わせは認識のズレが生じることなく合意に至りました。


A/Bテストの実施と現在

改善方針の合意を得たため、CROを先に実施するサービスサイトの「改善施策リスト」(参照:図5)を作成しました。改善優先度の高いページ順に、

  • 課題(仮説)/施策/テスト開始時期/想定改善数値

を記載。このリストをもとにA/Bテストの実行フェーズへと移行しました。

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約3カ月半の間に9本のA/Bテストを実施。CVRの改善率は約116%と好調な滑り出しを見せ、現在に至るまでご支援を継続させていただいております。 


最後に

CRO開始当初に、定量分析・定性分析・クライアントとの勉強会、これらを丁寧に行ったことで共通の課題認識を持つことができたと考えています。また、そのおかげで現在でも「お客さまファースト」でCROのPDCAを行えていることは電通デジタルの強みとも言えます。

これからも、コロナ禍によるサービスの進化やお客さまの心境の変化など、さまざまな要因に対し臨機応変に対応していくことが重要です。電通デジタルCROグループとして改善効果のある打ち手を準備し、クライアントの期待に応えられるようサポートをしていきます。


脚注

1. ^ "データドリブンで課題は見つかる:CROの注力ポイント(1)". 電通デジタル(2020年10月22日)2022年12月16日閲覧。

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