2023.02.13

コンタクトセンターにおける顧客体験設計のあるべき姿とは?

顧客との接点が複雑化・多様化する中で、電話だけでなく、メールやSNSなどからの問い合わせにも対応するコンタクトセンターと、その顧客体験設計が重要視されています。

しかしながら、コンタクトセンターの顧客体験設計に成功している企業は、まだ少ないのが現状です。

実現に向けて必要なものは何か? コンタクトセンターのエキスパートであるCXMコンサルティング株式会社 秋山紀郎氏、トレジャーデータ株式会社 栢菅裕介氏、電通デジタル 高橋司が、コンタクトセンターの現状と、顧客体験設計のあるべき姿を探りました。

※本記事は、2022年9月に行われたウェビナーの内容を採録し、編集したものです。 

コンタクトセンターにおける顧客体験設計の現状と課題

高橋 : すでにカスタマージャーニーマップの作成を実施している企業は、けっこう多いのではないかと思います。ただ、事業部単位で実施しているというケースが多く、評価指標と実際の業務を連動させた落とし込みに苦労されていることが多いように見受けられます。

栢菅 : 私は前職で企業のカスタマージャーニーのワークショップに携わったことがあります。多くの部門の方が参加されてアウトプットを作るのですが、持ち帰ると自部門だけのものになっているというケースがけっこう多かったと思います。全体設計としてあるべき形にまとめ上げるというところに、どの企業も苦労されているようでした。

秋山 : 顧客体験設計のプロジェクトをコンタクトセンターがリードすることはありましたか?

栢菅 : コンタクトセンターやカスタマーサポートが主導して全体設計を考えましょうというケースは、私の経験ではほとんどありませんでした。

秋山 : 顧客体験設計を行うには、お客様の現状や体験に詳しい部署の担当者に参加してもらわないといけませんよね。電話や問い合わせを受けた経験のない部署の人たちがリードできるのでしょうか? 

高橋 : 多くの会社では、事業部ごとにジョブが分断されてしまっているので、例えばマーケティング部の方が、コンタクトセンターの業務をイメージするのは、なかなか難しかったりします。


コンタクトセンターにおける顧客体験設計のあり方とは

秋山 : 顧客体験はどのように設計していったらいいのか、ご説明いただけますか? 

高橋 : 事業部ごとにジョブが分断されているのは、顧客体験設計を行う際の課題の一つです。

電通デジタルでは、ワークショップを開催して、カスタマーサポート部門を中心に、マーケティング部門、IT部門、情報システム部門の方にも参加していただくことで、各事業部の壁を超えてカスタマージャーニー設計を行っています。

また、カスタマージャーニーには、現状の主要なチャネルだけでなく、今後重要になっていくと思われるデジタルチャネルも加えながら、設計するようにしています。

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カスタマージャーニーには、サービス全体を評価する指標をリンクさせていかないと、絵に描いた餅になりがちです。

例えば、下の図の「①サービス全体を評価する指標」が、サービス全体の売り上げに関わるマクロ的・経営的な指標です。

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これを実現するべく、「②カスタマージャーニー」をAs-is(現在)からTo-Be(理想)に向かって描きます。

もちろん、いきなりTo-Beを実現するのは難しいので、カスタマージャーニーを3つのステップに分け、ステップごとに「③KPI設計」を行います。

施策を実現するためには、コンタクトセンターにおけるデータの集約・整理と、それを下支えするプラットフォームのデザインが大事になります。これらをすべて考慮して、カスタマージャーニーと評価指標を設計しています。

下の図が実際のイメージです。カスタマーサポート部門だけでなく、マーケティングやIT(情報システム)など関連する部署からそれぞれ代表者1、2名に参加していただき、カスタマージャーニーを作り、オペレーション設計を行います。

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オペレーション設計では、施策単位の評価指標を決めていきます。どの指標をどの部門の現場担当者が追うのか、マーケティング担当者か、カスタマーサポート担当者か、それともIT担当者なのかというところまで落とし込んで設計し、サービスブループリントとして提供しています。

栢菅 : トレジャーデータとしては、顧客体験設計をするためには、部門間の情報格差をなくし、どの部門も同じデータを見て、活用し、施策を実行していくべきと考えています。

そのために、会社の全部門がデータを共有し、カスタマージャーニー全体をカバーできるようにソリューションを設計して、2021年9月、「Treasure Data CDP for Service(旧Treasure Data CDP for Contact Center)」を改めて提供開始しました。

これまでマーケティングでは、顧客体験をファネルで表してきました。われわれはこの考え方を変え、円で考えるようにしました。真ん中にTreasure Data CDP for Serviceを置いて、それぞれの接点で何ができるのか考えて業務設計していくといいのではないかと思っています。

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秋山 : 部分最適から全体最適へ、ですね。

栢菅 : はい。例えば、お客様が商品に対して興味を持っていそうなタイミング、比較検討を始めているタイミング、そういった状況をすべて理解し、最適なチャネル、最適なタイミングで最適なアプローチを行うということです。そのような設計をコンタクトセンターの方がカスタマージャーニー全体を俯瞰して作っていくことで、よりコンタクトセンターの役割や、企業内での価値が上がっていくのではないかと思っています。


全体的な顧客体験設計には、どれぐらいの期間が必要か?

高橋 : ステップの粒度によります。各ステップに施策やKPIを詰め込むと、期間もそれだけ延びてしまいます。なるべくそこは欲を出さずに、簡潔に、まず一つひとつこなしていくことが大事です。

秋山 : 顧客体験設計というビッグピクチャーを掲げる一方で、小さな課題を一つひとつクリアしていく、そういうことの積み重ねではないかと思います。

栢菅 : 例えば2年というスパンで全体設計を完成させると計画しても、2年後にはまた状況が変わっています。そう考えると、小さなことから手を付けて、できることからやって効果を出していくというアプローチが有効だと考えています。


顧客体験の質を測るのに最適なKPIは?

秋山 : 私はカスタマーエフォートスコアがいいと考えています。「お客様があることを成し遂げるために、どのぐらい苦労したか、時間がかかったか?」を示す指標です。複数の部署が連携しないと、カスタマーエフォートスコアはよくなりません。部署の壁を越えて協力をするということにもなるし、カスタマーエフォートスコアは大事だと思います。

高橋 : 具体的にKPIの値を何にするかというのは会社によって異なるので置いておきますが、まずは手がつけやすい指標の改善から始める。あとは、売り上げなり顧客満足度なり、インパクトが出そうなものから着手するというのが大事なのではないかと思います。


ビッグピクチャーを描いてPDCAを細かく回す

秋山 : ビッグピクチャーを描いてPDCAを細かく回していくこと、KPIとしてカスタマーエフォートスコアを見ていくこと、多くの人を巻き込むこと、この3つを大事なこととして挙げたいと思います。また、PDCAを回していく中で、少しずつデータを統合していく、改善していく、データをつなげていく、データの質を良くしていくということが、顧客体験設計には欠かせない第一歩だと、改めて感じました。

栢菅 : 顧客体験設計を考えるには、自分の部門だけでなく、他の部門の仕事も見る。日常の業務の中でそのような習慣をつける必要があるのかなと思います。データ活用に関しては、われわれも多くのユースケースを持っています。気になることがあればご相談ください。

高橋:顧客体験設計はどうあるべきか、われわれも日々精進して精度を上げていきたいと思います。コンタクトセンターの業務改革や、顧客体験設計でお困りのことがあれば、電通デジタルへお問い合わせください。

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