顧客データの活用に欠かせないCDP(顧客データ基盤)。データのハブとして利活用できる幅が多い反面、しっかりプランニングしないと構築後に修正箇所が発覚し、その対応に新たな費用や時間がかかってしまうケースもあります。
電通デジタル 高橋司と小西良太が、お客様から実際に相談された3つの事例をベースにしながら、本来あるべきCDP利活用を実現するための考え方とノウハウを解説します。
顧客データの活用に欠かせないCDP(顧客データ基盤)。データのハブとして利活用できる幅が多い反面、しっかりプランニングしないと構築後に修正箇所が発覚し、その対応に新たな費用や時間がかかってしまうケースもあります。
電通デジタル 高橋司と小西良太が、お客様から実際に相談された3つの事例をベースにしながら、本来あるべきCDP利活用を実現するための考え方とノウハウを解説します。
※2022年11月に開催したウェビナーの内容を採録し、編集した記事です。
高橋 : 1つ目の事例です。ある金融会社からご相談を受けました。経営層からデータ統合のための基盤刷新を求められ、CDPを構築したものの、データを蓄積し名寄せ(複数に分散されているデータベースから、同一人物や企業のデータを1つに統合すること)するための単なる箱になっており、活用意図が不明瞭だと経営層から指摘されてしまったという内容でした。このような場合、どのようなことを意識して進めれば良いでしょうか?
小西 : どういう世界観を目指すか、そのためにどういう打ち手をするかは、初期段階でプランニングをされていると思いますが、それを「最後まで共有し続ける」「GOALイメージを持ち続ける」ことが大事です。プロジェクトは一人でやるものではないので、多くの人と共有することを意識すると良いのではないでしょうか。
例えば、CDPの構築段階に入ってしまうと、担当するエンジニアは自分たちに見えている範囲で部分最適するしかありません。「当初計画が達成できるストーリーが組まれているか、全体を通してチェックし続ける」というのが、1つ目のポイントです。
また、CDPの目的は、構築ではなく施策を行うことです。施策を実施する方々の協力がなければプロジェクトは完遂しません。ですから、彼らの要望を初期段階で可能な限り採り入れて、ブラッシュアップすることが大事です。「関連部署の巻き込み」を怠ると、関係者に当事者意識を持ってもらえず、「最低限のことをやっておけばいい」ということになってしまいがちです。これが2つ目のポイントです。
さらに、「この施策を実施することで、業務フローがこう変わり、こういうメリットがある」という、Before/Afterを語ることも大事です。
データ活用で何ができるかですが、典型的な流れを図にまとめました。CDPは、さまざまなデータを集めていったん貯蔵し、加工や計算をして施策ツールにつなげるためのものです。
データ活用には、収益向上や付加価値創出などの「攻めの活用」と、リスク低減やコスト削減などの「守りの活用」があります。例えば、以下のような活用例があります。
CDPデータ活用では、アナリティクス(分析)によるデータ可視化が最もポピュラーな用途です。これは、KGI/KPIのロジックツリーを設計することから始めると、可視化のフォーカスや目的が明確になります。さらに、機械学習を活用すると以下の図のようなことが可能になります。このとき、一度作ったモデルをCDP側でアップデートするように仕組み化することが、失敗しないためのTipsになります。
高橋 : 2つ目の事例です。あるアパレル会社からご相談を受けました。施策実施に向け、外部連携するデータを幅広く設定しました。その結果、MAやBIなどの施策ツールに大量のデータを連携したため、施策ツールの動作が重くなり、稼働しにくい状況になったという内容でした。
小西 : この場合は「ありたき世界/ToBe像」から考えると良いです。そこから遡って、それを実現するための施策を想定し、施策実現のためにCDPで何を検知すべきか明確にするという順です。
このときに大事なのが、「データテーブルを意識する」ことです。施策ツールによって扱いやすいデータの形が異なりますので、そこを意識すると施策ツールの真価が発揮できます。
もうひとつ意識していただきたいのが、「データパイプラインの確認」です。パイプラインとはつながりのことで、以下の順番で確認/設計しましょう。
データだけでなく、ツール、IT環境、業務環境などもきちんとつながっているか確認する必要があります。つながっていない場合には、どのようにギャップを埋めるかを考えます。どうしても無理ということもあるでしょうから、その場合には「ありたき姿」を見直して、修正するところに戻りましょう。
また、施策ツールが稼働しにくいという話がありました。最近のツールには簡易的なデータベースや加工機能を搭載したものもありますが、そのような処理はできるだけCDP側に寄せ、可能なかぎりCDPに仕事をさせると、施策ツールの負荷が減ります。そのためには、実際に施策ツールを操作する情シス部門などとのコミュニケーションが大事です。
高橋 : 3つ目は、メディア運営会社の事例です。「CDP導入による増収が投資費用を上回ると期待されていたが、そこまでの効果が出ない。どう改善すればいいのか」というご相談で、PDCAがうまく回せていないという課題感をお持ちでした。
小西 : この場合は、「データ利活用戦略を意識する」ことが重要です。世の中には、さまざまなデータ活用ソリューションがあふれています。どれも魅力的に見えますが、それぞれに特徴や強みが異なります。自社の課題との相性を事前に検討せずに導入すると、思ったような効果が出ないことが多いのです。
だからこそ、ビジネスゴールなどの「課題」から逆算して、理想と現状とそのギャップを理解した上で、適切な打ち手を検討し、ソリューションを選ぶ必要があります。ゴールを定めて、その打ち手に最適なソリューションを選びましょう。
また、施策は一度実行して終わりではありません。PDCAを回し、施策の内容や精度を改善し続けることが必要です。そのためにはまずKGI/KPIツリーを設定しましょう。
もう1つ、「Go/NoGoのバー」の設定も大事です。KPIをただモニタリングするだけではあまり意味がありません。モニタリングは判断するために行うもの。「この値を上回ったらGo」「下回っていたらNoGo」という、判断のための基準値がどうしても必要です。
下回っていた場合には、その施策をやめるか、チューニングや改善をするかなどの対処も、あらかじめ決めておきましょう。そうすれば、分析結果が出てから右往左往することもありません。
さらに、システムができただけでは不十分です。システムからのアウトプットをどう活用し、どうビジネスに活かすかを描かなければ意味がありません。そのような役割を担える人をビジネストランスレーターと呼びますが、そういう要素が必要になると思います。
今回ご紹介したような課題をお持ちの場合、電通デジタルでは、以下のようなデータ活用支援サービスをご用意しています。
上の図にある「5.分析環境構築」「6.マーテクツール導入支援」については、ベンダーフリーの立場から最適なツールを選定します。また、マーケティングツールについては、インストールするだけでなく、運用して成果を出すところまで、データ活用をトータルで支援します。
これからCDPを構築したいという場合だけでなく、すでに構築済みで何かお悩みがある場合も、お気軽にご相談ください。解決策を一緒に模索していきます。
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