前田:CXの取り組みは、一見遠回りに見えますが、患者の解像度を上げてアプローチすることは、きちんとビジネスにもつながるという点が非常に重要なポイントです。こうしたことへの理解が進んでいる企業からの相談が増えてきていますね。
登坂:例えば製薬会社では、薬の形状や投与法などを工夫することで患者への負担を軽減し、安全で適切な治療を行うために、創薬・開発の面から患者中心の医療の実現に取り組んでいます。これをコミュニケーション領域でも、CXを通して、医師とともに医療体験を患者中心にしていこうという考え方が、少しずつ浸透しつつあるように思います。
この考え方が先行する欧米では、“ファーマCX”として、製薬会社は医師と患者の顧客体験を進化させています。オンラインとリアルが融合し繋がり続ける時代、製薬会社がシームレスな体験デザインを新たに創造し、ビジネス成果を上げ、医療に真の変化を生み出すプロセス、それが“ファーマCX”です。
神松:私たちが考える「患者中心」とは、患者に向けたコミュニケーションのクオリティを上げるだけに留まりません。本質的には、医師と患者の治療体験を上げることが目的です。医師のニーズと患者のニーズのギャップが治療効率を下げてしまう場合もあります。こうした部分での気づきは、まだまだ発掘のしがいがあると思っています。
現場の医師は、患者と向き合う時間が限られているので、治療設計をする上でもいろんな歯痒さがあると思います。彼らが手に負えないことは、裏を返せば、患者が感じる「負」として現れるので、治療体験や薬剤選択におけるボトルネックが見える場合があります。そういう意味で患者の解像度を上げることが、すなわち医師や医療現場、ビジネスにとっての新しい一手につながると私たちは考えています。
前田:我々のメインの仕事は、こうした構造を紐解いて、どのように患者にアプローチすべきかというコミュニケーションを考えていくことです。こうした方針があるからこそ、それに基づいた、Webサイトやアプリの構築、資材の作成などが可能となります。
登坂:製薬・ヘルスケア企業と医療従事者が目標としているのは、患者の状態変化を評価する、いわゆる「医療のアウトカム」を最大化することです。その上で、私たちが目指しているのは、患者への負担を軽減し、安全で適切な治療を行うために、医師と患者の顧客体験をポジティブなものに変化させることです。ここで大切なのは、「あなたに何が起こったのか」だけではなく、「あなたにとって何が重要なのか」ということに着目することだと思います。
前田:私たちのアプローチとしては、患者も医師も企業も、みんなが良くなる「三方良し」を実現することで、クライアント企業のビジネスを成功させたいと思っています。