2024.04.17

今なぜヘッドレスコマースが必要とされているのか?

最新ECトレンドの新スタンダード「ヘッドレスコマース」徹底解説

CX(顧客体験)を重視するEC企業において、ヘッドレスコマースの導入が進んでいます。ヘッドレスコマースが注目を集める背景と導入のメリットについて、テクノロジートランスフォーメーション第1部門 CXプラットフォームデザイン事業部 オウンドコマースグループ 高無大誉と竹中啓雄が解説します。

ヘッドレスコマースが必要とされている理由

ヘッドレスコマースが注目を集める背景には、ユーザーデバイスの多様化とプラットフォームの増加があります。

ユーザーが購買行動を行う際には、PCだけでなく、スマートフォン、タブレットなど、さまざまなデバイスを利用することが増えており、その他にもスマートスピーカーやVR、チャットなどの新技術を活用した購買体験も注目されています。商品を掲載するプラットフォームも、オウンドEC、SNS、ECモールなどがあり、これからもさらに増加していくことが見込まれます。

消費行動が多様化し、カスタマージャーニーが複雑化してきている中で、コマースビジネスにおいてオフラインとオンラインを統合し、最適な購入体験を提供するには、従来型のECサイトの仕組みではスピーディーな対応が難しくなってきました。そこで登場したのが、ヘッドレスコマースという考え方です。


ヘッドレスコマースとは

ヘッドレスコマースとは、フロントエンド(ユーザーが利用する部分)とバックエンド(システムが動作する部分)を分離したコマースシステムです。

フロントエンドはWebサイトやアプリなどのインターフェースであり、ユーザーが商品を閲覧し、購入手続きを行う場所です。例えば、ECサイトがヘッドレスコマースに移行すると、フロントエンドはReactやVue.jsなどのフレームワークを使って構築され、柔軟かつパフォーマンスの高いユーザーインタフェースを提供します。これにより、スマホやタブレットなど様々なデバイスに対応し、CXを向上させることが可能です。

一方、バックエンドは商品管理、在庫管理、注文処理などの機能を担当し、実際の商取引を支えるシステムです。バックエンドはヘッドレスCMSやAPIを活用して構築されます。これにより、商品情報や在庫情報を一元管理して、複数のデジタルチャネルに同時展開することができます。また、マイクロサービスアーキテクチャを採用することで、柔軟性や拡張性を高め、新しい技術の導入もスムーズに行えます。

ヘッドレスコマースは、CXを向上させながら、効率的に商品を管理・販売することができる革新的なアプローチです。複数のデバイスやプラットフォーム、新技術に対応しやすいため、オムニチャネル戦略やOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)を実現したい企業に適している仕組みと言えます。


従来のECプラットフォームの課題

マルチデバイス対応やリアルタイムなコンテンツ更新、高度なカスタマイズが求められる環境において、フロントエンドとバックエンドが融合した従来のECシステムは、以下のような課題が顕在化してきています。

  • 様々なデバイスで統一されたリッチなUXを提供することが難しい
  • Webサイトやアプリケーションのフロントエンド部分を柔軟に変更しにくい
  • 大幅な変更には、プログラムやテンプレートの開発対応が必要
  • 便利な開発環境や新しいフレームワークの採用が難しい
  • チャネルの再利用や、別の目的での活用が制限される
  • 同一コンテンツを複数のチャネルに展開している場合、コンテンツの修正に多くの工数がかかる
従来のECプラットフォームの仕組み
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ヘッドレスコマースのシステムを使えば、これらの課題を解決することができます。


ヘッドレスコマースのメリット

ヘッドレスコマースでは、APIを介してコンテンツが配信されるため、フロントエンドはバックエンドから分かれて、独立したコンポーネントとして動作します。このような分離が行われることによって、運用者に以下のようなメリットをもたらします。

①CX最適化に対応しやすい

ECサイトの売上を最大化させるには、UIを絶えず改善し、UXを最適化することが必要です。

しかし従来のECシステムの場合、フロントエンドとバックエンドが密接に関係していることが多く、UIの細かな調整であってもシステムの改修が必要となり、高額費用や工数が発生するケースもありました。またECパッケージ側の仕様により制約で、改修ができないケースもあります。

ヘッドレスコマースでは、フロントエンドとバックエンドは分離されているため、デザイナーやマーケターが望む形で、フロントエンドのUIを自由にデザインし、UX最適化を図ることが可能になります。

ヘッドレスコマースプラットフォームの仕組み
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②複数チャネルの展開が容易

現在の顧客は、SNSや、動画コンテンツ、店舗など、様々なチャネルからECサイトにスムーズにリーチできる環境を当たり前と考えています。ECビジネスを進めるうえでは、顧客のニーズを把握し、適切なチャネルをタイムリーに提供することが、顧客満足度の向上や売上向上に直結します。

ヘッドレスコマースを採用すれば、APIを介して、顧客接点となるチャネルをスピーディーに用意することが可能になります。顧客とのコミュニケーションや関係構築が強化されるだけでなく、購買体験がより豊かになり、リピーターの獲得や顧客ロイヤルティの向上にもつながるのです。

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③複数のECサイトを一元管理できる

ヘッドレスコマースを活用すれば、複数のブランドや複数店舗の要望にも柔軟な対応が可能になります。バックエンドに共通のECシステムを使い、ブランドや店舗別にECサイト(フロントエンド)を構築できるため、ブランドや店舗ごとにデザイン、UIを最適化することもできます。

また、それぞれのAPIを介することで、複数ECサイトのデータもバックエンドで一元管理できます。例えば、売上が伸びている店舗のサイトや、新ブランドのポップアップストアを一時的に公開しつつ、在庫管理や商品管理を共通化するといった柔軟なマーケティング戦略も実現可能です。

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ヘッドレスコマースへの移行で考慮すべきこと

ここまでヘッドレスコマースのメリットについて触れてきましたが、従来のECシステムからヘッドレスコマースへの移行は簡単ではありません。

各企業がこれまでに構築してきたシステムや蓄積してきたノウハウを、いったんゼロに戻して構築し直さなくてはなりません。これから5年後、10年後を見据えて、自社のコマースビジネスはどうあるべきかというビジョンを踏まえて、最適なシステム環境を設計する必要があります。

電通デジタルはこれまでに、多くの企業においてヘッドレスコマースの導入を支援してきました。ヘッドレスコマースを導入したい、運用に困っているなどお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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