2024.06.06

Xが目指す新しいプラットフォームの形と電通デジタル独自のXマーケティング理論とは

2023年7月、TwitterはXに名称変更しました。TwitterからXに進化していく中で、どのようなプラットフォームを目指していくのか、企業はどのようにXを活用したマーケティングを展開していくべきなのか。

ソーシャルメディアプランニングへの深い知見をもち、広告活用とオーガニック運用の一体化を推進するプロフェッショナル集団「Social Connect Group」の中野美蘭がインタビュアーとなり、X社(旧Twitter Japan)で国内電通グループを担当する荒川慶多氏と、X独自のマーケティング理論を提唱するSocial Connect Groupの芝﨑穂岳に話を聞きました。

Xが目指す新しいプラットフォームの形

電通デジタル・中野美蘭:まずはX社 荒川様にお話をお伺いします。2023年7月、TwitterはXに名称変更し、大幅なリブランディングが行われました。Xのユーザーにとって、このリブランディングは様々な利用体験の変化を生んでいる状況ですが、改めてどのような変化が起きているのか、教えていただけますでしょうか?

X・荒川慶多氏:まずUXを大幅に改良しました。コンテンツを公開したり、ユーザー同士がつながったりするための新商品や新機能を集中的にリリースしています。Xでは、自由な表現ができることがプラットフォームの価値だと捉えており、それを後押しするためにモデレーションやルールを見直しながら、より安全性が担保された環境を実現しています。

中野:最近、「おすすめ」に表示されるポストのレコメンド精度が上がったと感じていますが、その点はいかがでしょうか?

荒川:そう感じていただけるのは嬉しいです。実際、レコメンド機能はパワーアップしていて、よりパーソナライズされた、ユーザーの皆様にとって興味があるコンテンツが表示されるようになっています。

中野:続いて、ビジネス視点でもお伺いします。昨年は特に広告メニューの増加、多数のアップデートなど非常に大きな変化の年となり、ビジネス視点においても非常に大きな動きがあった1年だったかと思いますが、TwitterからXへのリブランディングはどのような変化を生んだのでしょうか?

荒川:ビジネス視点での重要な変化の1つとしては、「動画」「パフォーマンス」「ブランドセーフティ」の3つを核とした、フルファネル広告の提供を開始したことです。広告機能の強化は、広告主だけでなく、Xを日々利用するユーザーにとっても、利便性向上という点でメリットは大きいと思っています。また、広告を活性化するという点においては、クリエイターやコンテンツパートナーへの投資強化も重要な変化の1つです。

中野:検索機能の強化、広告の効果改善、ユーザーの理解促進まで含めたXのユーザー体験なども進んできていますよね。

荒川:はい。おっしゃる通り検索機能の強化、広告の効果改善、ユーザーの理解促進まで含めたXのユーザー体験はもちろん、広告のAI活用によって、ますます広告の機能やマーケティング機能をパワーアップしていくという戦略を進めています。

また、これまでの収益の柱であった広告機能のパワーアップはもちろん、Xとしては今後データとサブスクリプションを加えた3つの領域をさらに注力していきたいと考えています。

データビジネスに関しては、Xになってから特に進んだ領域です。ソーシャルプラットフォームとして日頃から多くのユーザー様に活用いただいているXは多数の貴重なデータを保有しており、その価値を正しい形で引き続き提供したいと考えています。

サブスクリプションサービスは現在、Xプレミアムに代表されるオプトイン方式の有料制サービスで、 Xをより快適に活用するためのさまざまな機能を提供しています。企業様向けには Verified Organization(認証済み組織)も提供を開始しており、ユーザー様・企業様ともにXをさらに使いやすくなる機能を多数揃えています。 

 広告・データ・サブスクリプションの3領域を推進すると同時に、さらなる機能増強に投資することで、よりXというプラットフォームの価値を高めていきたいと考えています。

荒川慶多氏 (X 広告代理店事業本部 部長)

電通・電通デジタルと進める広告の形

中野:プラットフォーマーXが大きく変化していく中で、電通は日本に4社しかないX広告認定パートナーの「Gold Partner」に認定されています。日頃からX社と電通・電通デジタルにおいては広告領域の他、クリエイティブなど様々な領域において取組みを行っていますが、Xの皆様において、電通・電通デジタルとの広告ビジネスにおける取り組みはどのような位置づけになるのでしょうか?

荒川:電通デジタル様は弊社ビジネスにおいて非常に重要なパートナー様の一社です。多くのクライアント企業に向けたX広告を活用した施策のご支援をご一緒することはもちろん、そのご支援をさらに強固にすべく、「広告パフォーマンス」「クリエイティブ」はもちろん「プランニング」「データ」「コマース」など多岐にわたる協業を行っています。また、そうした幅広い取り組みを集約し、事例やトレンドとして紹介する大型のイベントの共催もご一緒に行っています。

中野:数多くの協業を通じて、X社としては今後どのような取り組みを強化されていきたいとお考えでしょうか?

荒川:ブランド広告の強化はもちろん、ダイレクト領域・コマース領域・さらにはコミュニケーションインフラでもあるXを活用したマーケティングコミュニーション領域などもより一層連携を深めていきたいと思います。 そして、そうした様々な領域を支える重要な1つとして、「データ」があると考えています。電通様・電通デジタル様とは共同でX版データクリーンルーム「X Data Hub Omusubi」を開発しています。 OmusubiはX広告が購買や来店などの具体的な行動変容にどれだけ貢献したかを可視化できるデータ分析基盤であり、クライアント企業のニーズを汲みながら進化を続けています。

データ活用をベースとしながら様々な領域で、クライアント企業のさらなる支援ができるように電通様・電通デジタル様と引き続き強力なパートナーシップ連携ができればと考えています。 

中野美蘭 (電通デジタル プラットフォーム部門 プラットフォーム部 ソーシャルコネクトグループ )

電通デジタルが考える新しいXプランニング

中野:では、ここからは電通デジタルにおけるXを活用したマーケティング支援についてのお話をしたいと思います。Social Connect Groupは、Xを活用した戦略プランニングにおいて、独自のプランニングメソッド「Pure Engagement理論」を開発しました。開発に携わった芝﨑さんに伺います。改めて、Pure Engagement理論とはどのような理論でしょうか?

電通デジタル・芝﨑穂岳:「Pure Engagement」とは、「ユーザーが能動的に企業やブランドに関与し、何らかのアクションをとる状態」のことです。この状態を実現するために、企業はX上でのコミュニケーションにおいて大きく5つの「パフォーマンス」を提供できるようなコンテンツを発信していく必要があると考えています。

  • Love (好き、愛)
  • Interest (面白さ)
  • Beneficialness (有益さ)
  • Empathy (共感性)
  • Surprise (発見・驚き)

 

先ほどX・荒川様からもお話がありましたが、Xへの進化と共にユーザーにはパーソナライズ化された自分が好きな・興味があるコンテンツがX上で提供されていきます。 

その中で企業公式アカウントにおいても、一方的な情報発信を行う形ではなく、「Pure Engagement」を意識したコミュニケーションをとる必要があるというのがPure Engagement理論の根幹です。

中野:先ほど荒川様からは広告ビジネスとしてのXの進化の話もありましたが、TwitterからXに進化する中でも、Pure Engagement理論は非常に多くの共通項、そしてシナジーがあるように思っていますが、その点はいかがでしょうか?また、どのように連携されているのでしょうか?

芝﨑: はい。Pure Engagement理論の大きな特徴の1つに、単純な「オーガニック活用論」ではないという点があります。X上で5パフォーマンスの効果を最大化するコミュニケーションは、オーガニックによるコミュニケーション活用はもちろん、目的・課題によっては広告出稿もしっかり活用していく必要があると考えています。 

 例えば「Interest(面白さ)」を提供していく中では、昨年リリース後に様々な企業様での採用が進んでいる「ブランドアニメーション」の機能などもしっかり活用していく必要があると考えています。 

Pure Engagementをつくるには、ユーザー・プラットフォームへの理解や、適切な広告出稿、継続的なオーガニック投稿の掛け合わせが重要です。

今後さらにソーシャルメディアの数が増えていくと、ユーザーの利用目的や利用態度が細分化されていきます。その中でXは、飾らない本当の「好き」を共有・共感・応援する場として、より一層ユニークなプラットフォームになると想像しています。Xでマーケティングやコミュニケーションを行うあらゆるクライアント企業に、Pure Engagement理論をご活用いただきたいですし、Social Connect Groupの先進性・専門性を示す意味でも、Pure Engagement理論の実効性を明示的にお伝えできるような成果を上げていきたいと考えています。

芝﨑穂岳(電通デジタル ソーシャルメディアエクスペリエンス部門 プランニング第2事業部 ソーシャルコネクトグループ)

パートナーとして、新たな価値や効果を作り出していきたい

中野:最後に、お二人にここまでのお話を踏まえ、改めてX社と電通デジタル・国内電通グループがどのように協業していくべきかをお聞かせください。

荒川:まず、パートナーとして一緒に新たな価値・効果を作り出して、市場を牽引していきたいです。そのために、Xでしか収集できない生活者インサイトの発掘、国内電通グループならではのデータを活用したプランニング、それらを一気通貫で実施するためのフレームワークの設計などに取り組んでいきたいと思っています。また、発掘したインサイトをもとにしたクリエイティブ制作、コミュニケーション開発も強化していきたいと考えています。Xは、日本で非常に支持されていますが、その拡大に大きく貢献いただいたのが国内電通グループだと認識しています。こうした日本での取り組みが、世界に通じるところまでご一緒していければとても嬉しいです。

芝﨑:まずは、ペイドメディアとオウンドメディアのソーシャル活用を統合して、ワンストップでサポートすることを目指しています。もちろん、ペイドとオウンドを切り分けて運用し、それぞれの効果を最大化することも可能です。ただ、広告・オーガニック・データを統合することで、ターゲティングとブランドパーセプションを統一したコミュニケーションの中で、既存の「好き」を活かした短期施策の効果最大化や、短期施策による新しい「好きの芽」を中長期的に育てていく相乗効果を狙うことができます。また、広告とオーガニックで良いパフォーマンスを発揮するクリエイティブを双方のデータを見て検証するなど、より正確なPDCAも可能になります。

次に、他メディアとソーシャルメディアの連動による広告効果の最大化です。Xは特に「ながら利用」も強みの1つです。即時性/拡散性/匿名性が高く、ユーザーはTVやイベントを消費しながらXを利用し、その反響がXに集まります。それであれば、あらかじめ「どのような反響を生むか」や「反響をどのように加速・増加させるか」というソーシャルメディア視点で戦略をつくることが可能です。そのために、広告の専門家、オーガニックの専門家、データの専門家が集うSocial Connect Groupが広告効果の最大化にも貢献できると考えています。

広告・オーガニック・データをしっかりと連動させてソーシャルに力を入れるとどうなるのか、その成果は近いうちに世の中にお披露目できるはずです。我々は日々、クライアント企業の様々なお悩みに寄り添っています。「今までありそうでなかった」「こんなことできたらいいのに」というような新しいチャレンジをご一緒できる意気込み・体制が整っているグループであることが大きな魅力であり、価値だと考えています。

中野:Xと電通デジタルは、日々定例ミーティングを行い、情報共有しながら新たな取り組みを模索しています。そうした最新情報や、プラットフォームの価値観、世界観を密に共有したうえで、Pure Engagement理論に従って、クライアント企業が今本当に求めているコミュニケーションをプランニングできるという、私たちの独自価値を大きな強みとして、これからもクライアント企業の解決課題に寄り添っていければと思います。

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