2024.07.30

電通デジタルコマースニュース

第5回 D2C事業を成長させる重要指標とは?

電通デジタルでは、2024年1月から世の中のコマースニュースをお届けするウェビナー「電通デジタルコマースニュース」を開催しています。第5回の本記事では、ソリューションディレクターの髙田拓之とコンサルタントの清水典が、開催したウェビナーの内容を振り返りながらお届けします。今回のテーマは、 D2C事業を成長させる重要指標 について詳しく説明します。

2024年5月のコマーストピックス ペット市場から見るECの割合

髙田:2024年5月に取り上げられたコマース業界のトピックスの一部、ECのチャネルや将来像についてお伝えします。

富士経済の発表 [注1] によると、ペットフードやペットシーツなどのいわゆるペット用品のEC市場は、2023年で2727億円にのぼります。そのうち、Amazonや楽天を筆頭とするECモールの割合が6割ほどを占めています。要因として、ECモール側の積極的な販促活動による需要拡大が考えられます。また、直販系は実店舗をメインにしていたメーカーのEC参入や、定期購買やブランドストーリーをPRしながら顧客ロイヤリティを高めている傾向にあります。かく言う私も、ペットフードは実店舗で購入するには意外と重いため、購入しやすいECを利用しています。こうした商材特性もあり、ペット用品のEC市場は2028年には27.9%増の3489億円まで伸びると考えられています。

業界に関係なく、ECモールと自社ECの割合はこの10年で変化してきており、ECモールの割合が高くなっています。2014年ではECの市場規模は6.1兆円に対し、ECモールと自社ECの割合は1:1でしたが、2023年には8割以上がECモールという数字が出ています。

とはいえ、ECモールのみで行えば良いということではなく、チャネルの多様化にしっかりと対応していくことが重要です。そのためにも、各市場規模や各チャネルの役割を把握しておくことは重要です。自事業において、今、何に注力するのが良いか、未来のロードマップを検討してみることをお勧めします。もちろん電通デジタルも一緒になって考えますので、自事業の拡大についてお悩みの方はお気軽にご相談ください。


ECで将来的に伸びるのは?

日経クロストレンドから発表された「トレンドマップ2024上半期」 [注2] を見ると、ECが将来性も経済インパクトもあるという結果になりました。ECは引き続きビジネストレンドであり、期待値の高いことがうかがえます。

また、ECの中でもさらに将来性や経済インパクトが高いとされる内訳は以下になります。将来性においては「サブスクリプション」「越境EC」「音声」「生成AI」などが並んでいます。経済インパクトは「パーソナライゼーション」「越境EC」「生成AI」となっており、コロナ後のインバウンド需要回復による越境ECへの活路を見出したいと考えたり、生成AIによる顧客との接点・対応に期待していることがうかがえる結果となりました。

また、今回新たなキーワードとして「リユース消費」が上がっていることにも注目。エコに対するブランド姿勢が共感を得ると共に、日本製の高品質・低価格商品が世界でも評価されていることが将来性として期待されているそうです。

前述したECの割合とともに、より自社事業の拡大のために何をしていくのが良いのか、市場動向を追いながら取り入れる検討をしていくと良いでしょう。


D2C事業を成長させる重要指標

清水:ここからは清水より「D2Cにおける事業を成長させる重要指標」についてご説明します。

D2C事業者の方々の課題として「とにかくやることが多い」「見る数字が多い」などが挙げられます。D2Cならではの醍醐味ではありつつ、戦略策定・KPI計画・プロモーション・サイト改善・CRM・フルフィルメント・商品開発など、その範囲は多岐にわたります。また、数字面においてもPL/BS・顧客データや購買データ、WEB行動データなど、様々な観点での改善ポイントが見えてしまう点もあります。そうした課題から「やるべきポイントに注力できない」「成果に繋がっているのか不安」などといった悩みを抱える担当者の方も多くいらっしゃるはずです。

限られた時間とリソースの中で、事業者としてまず必要なのは「見るべき数字をシンプルに。かつ、数字と施策を結びつける」ことで、取り組むべき優先順位を決めることです。つまり「正しくKPIを設計する」ことが重要になるのです。


D2CにおけるKPIとは?

D2C、つまりDirect to Consumerは、製造者がダイレクトに顧客と取引をすることです。重要なのは「顧客」という部分になりますので、「顧客」を中心としたKPIの設計が必要になります。

「顧客」中心の観点でいうと、まず必要になるのが「顧客数」の推移です。該当の商品やサービスを利用している顧客数が何人いて、その数が一定期間の中で増えているのか、減っているのかという点を抑えておく必要があります。

顧客が増えている状態は、「商品(サービス)がお客様に満足されている」「広くお客様に認知されており、正しく訴求できている」状態を指しますので、事業にとっては非常に良い状況(売上が増加)となるはずです。

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さらに、細分化して見ていきましょう。先ほどの顧客数は「既存顧客」か「新規(復活)顧客」かを分類していきます。顧客数全体が増えている状態の中で、どちらが増えているのかを分解します。よく聞く話の1つとして、既存顧客と新規顧客のコスト効率を表した「5:1の法則」というものがあります。この法則の通り、既存顧客が増えることで事業全体のコスト効率は上がり、さらに投資しやすい環境が生まれますので、既存顧客が増えているかどうかは事業の成長性を図るコンディションの1つと言えます。

この「既存」と「新規」の他に「リピート率」の指標を追加します。先ほどの「新規顧客」はプロモーション活動によって計画が立つ指標ですが、「リピート率」を加えることで、事業全体の顧客数の見通しを立てることができます。

現時点の「顧客数×リピート率+新規顧客数」という計算式の中で、数年後の見通しを立て、目標とGAPとなりうる部分に対して、リソース配分していくかの戦略を定めていくことが重要になります。

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ここまで、D2CのKPIの基本となる「顧客数」の見方について説明しました。上記を踏まえて、このKPIからどのように事業としてのKPIや施策と結びつけていくか、一例を紹介します。

事業の指標としていくためには売上というKGIを設定する必要がありますので、「既存顧客」「新規顧客」のそれぞれ「購入単価」という指標を結び付けます(一回当たりの購入単価や年間のLTVを当てはめることも可能)。

売上=「既存顧客数×購入単価」+「新規顧客数(復活)×購入単価」

という計算式が成り立つように分解していきます。これらをさらに分解し「新規顧客数=プロモーション+自然流入」や「既存顧客数=前年度顧客数×リピート率」といった形で細分化していきます。ここは事業によってさらに細分化する方法もありますので、事業に合わせて設計していくことが重要です。

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細分化できたら、今度は「可変可能な数値」と「そうでないもの」を分類します。

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ここも、どのKPIであれば施策によって可変できるかは事業や取り組みによって大きく異なります。

可変可能と切り分けたKPIに対して、何をすれば可変できるのか、施策を結びつけます。
さらに可能であれば、数値目標も合わせて設定していきます。それによって、KPIからKGIまでどの程度成果として影響が出せるのか目標設定し、数値管理すると良いでしょう。

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そして、最も重要なのが施策実施後に各KPIと目標値に対してどのくらい効果があったのかをフィードバックすることです。各KPIが正しく機能するのか、施策の粒度とKPIの粒度が合っているのかなどは、事業の特性や組織の成熟度によっても異なります。また、担当者がどの程度、解像度高く事業理解をしているかによっても変わってきますので、このフィードバックによって各KPIの置き方を成熟させていくことが必要になります。一方でこの解像度が高いと、限られたリソースの中で正しく、かつ確率高く事業を成長軌道に乗せることができると考えられます。

最後に、下記を意識しながら改めてご自身の事業を振り返っていただくと、取り組むべき部分のヒントや見えていなかった事業のコンディションが図れるかと思います。

  • KPIは「顧客」を軸に考える
  • 見るべき数字はよりシンプルに
  • 事業計画と施策が連動するように
  • 施策によって可変可能な数字とそうでないものを切り分ける
  • 施策によるKPIの可変目標を数値化する
  • 得られた効果をフィードバックする

 

今回はKPIの概要を説明しました。

  • 事業のKPIを設計してほしい
  • 事業のコンディションをチェックしてほしい
  • そもそも上記のようなデータの分析方法がわからない

 

といったお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

コマースのトピック情報、EC事業を成長させていくための重要な考え方について、皆さまの業務に少しでもお役立ていただければ幸いです。


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