2024.08.28

電通デジタルコマースニュース

第6回 LINEヤフーの未来予想とB2Cにおける次の一手

電通デジタルでは、2024年1月から世の中のコマースニュースをお届けするウェビナー「電通デジタルコマースニュース」を開催しています。第6回の本記事では、ソリューションディレクターの髙田拓之とアカウントディレクターの坂井亮介が、開催したウェビナーの内容を振り返りながらお届けします。

2024年6月のコマーストピック ユーザーの購買・行動履歴でのマーケティングコミュニケーションは有効

髙田: 2024年6月で取り上げられたコマース業界のトピックの一部、ECのチャネルや将来像についてお伝えいたします。

今やレコメンドなどユーザー自身の購買行動から情報が追っかけられるのが当たり前となり、私は少し億劫だとも感じているのですが、株式会社WOW WORLDのユーザー調査レポートによると、企業側に求めるコミュニケーションは、「ユーザー側にとって欲しい情報は有意義である」[注1]という結果でした。

特に、位置情報を活用したジオマーケティングとして、会員登録をしている店舗に着いた瞬間、スマートフォンに割引クーポンが届くことへの印象は6割ほどが嬉しく思い、煩わしいと思う方は1割にも満たない結果でした。

また、再入荷や値下げの通知、Webサイトでのポップアップによるクーポン表示についてもほぼ同様の結果が出ており、Webサイトの閲覧履歴やお気に入り登録機能も依然として有効だというのが理解できる調査となりました。


SaaSの活用が進むも、9割近い企業がデータ連携に課題

ユーザー行動を把握するにはデータ連携は欠かせません。SaaSの活用が進んでいる中、実際に利用している企業側でも様々な課題が見えてきました。

BizteX株式会社の「企業のIT担当者536名が明かしたデータ連携の実態」[注2]によると、データ連携に課題を抱えている企業は90%ほどいらっしゃいます。特に部署ごと異なるSaaSを利用していて部署間でのデータ連携ができていないようです。

これらの解決のために、SaaS同士やSaaSとオンプレ連携をどのように行っているかについては、iPaaSの利用が多い一方、スクラッチ開発での拡張における課題や、そもそもCSV連携などの手動運用もまだまだ一定層存在しているそうです。iPaaSの検討も進んでいるものの、別途スキルが必要と思っていたり、コストがかかるという声もあるようです。

さて、iPaaSという言葉が出てきましたが、そもそもiPaaSとは何かも触れておきます[注3]

iPaaSとは複数のクラウドやオンプレなどに分散化されているデータを連携・統合するソリューションで、各システムが公開しているAPIを利用し、データの抽出、フォーマット変換、連携先システムへの受け渡しという一連の処理が行えます。

iPaaSは以下4つのタイプに分けられます。

  • BIツールやDWHへデータを集約・統合してデータ分析を行えるETL型
  • 多種多様なシステム同士をつなぐHubとなってフォーマットの異なるデータ連携も可能なEAI型
  • データ分析を目的とするETL型
  • アプリケーション統合や複雑な処理を目的とするEAI・ESB型

これらを用途に応じて利用するのが良いでしょう。

さてここからは、LINEヤフー株式会社の未来予想とB2Cにおける次の一手について坂井よりお伝えいたします。


LINEヤフーの未来予想とB2Cにおける次の一手

坂井:私はビジネスプロデューサー兼ディレクターとして日々、さまざまな業種業態のクライアント様の支援を行なっています。

ズバリ、今回のテーマはLINEヤフーの未来予想。昨年のLINE社とヤフー社の統合により、新たなデータ活用の期待が寄せられる同社ですが、ユーザーとしても、またサービス提供会社としても目が離せないプラットフォームに進化を遂げておられます。

コマース業界の皆様も、いかにしてこの巨大プラットフォームで価値を提供するか、考えられたことがあるのではないでしょうか。

UXの観点で考えても、日本国内においては無視できない潮流と捉えられます。

従来型のビジネスモデルだと、バリューチェーン型と呼ばれるプロダクトやサービスを知ってもらって売り切ることをゴールにされていた企業が多く存在しました。例えば、医療機関では「来院して施術を受けるだけ」ECサイトを展開する企業では「ECサイト上での商品購入だけ」と、考えうる接点が分断されている場合が多かったように思えます。

一方、この5年ぐらいはデジタルデバイスの普及に伴い、オンライン・オフラインの境目が曖昧になったことで、「ものを売る」から「顧客が達成したい目標に対してコミットをする」、それによってやるべきこと、発信すべき場所が拡大するというバリュージャーニー型の考え方が提唱され広がっていき、うまく取り入れている企業も増えてきた印象です。

一方で、「情報や製品を探す→サービスを予約する→製品を比較して購入する」といった一連の体験提供や接点の創出を自社だけで新たに作り出していくのは、リソース上、どの企業でも簡単にできるわけではないので、課題になると考えています。

この課題に対する一つの対策は、シンプルに人が多く滞留する場所で接点を設けていく。いわゆる場所を借りて、機能を提供するということです。

毎日のように人がたくさん訪れるプラットフォームは何かを考えると、思い浮かぶのは決済プラットフォームが挙げられます。

経済圏名Vポイント経済圏ドコモ経済圏PayPay経済圏au経済圏楽天経済圏
たまるポイントVポイントdポイントPayPayポイントPontaポイント楽天ポイント
会員規模約8600万人約9800万人6300万人以上約1億1611万人1億人以上
クレジットカード三井住友カードdカードPayPayカードau PAYカード楽天カード
スマホ決済VポイントPayアプリd払いPayPayau PAY楽天ペイ

国内の決済プラットフォーム、2024年は激動の年になっているように思えます[注4]

  • TポイントとVポイントが合併
  • 国内決済プラットフォーマーは通信キャリア、銀行、クレカ5強の時代に突入
  • LINE Payのサービス終了が報じられる[注5]

 そしてこの次に待っている大きな動きが、LINEとPayPayのID統合と我々は考えています。

決算発表でもPayPayをサービス成長の軸に据えるということが伝えられており、国内9,700万人(2024年3月時点)の利用者を有するコミュニケーションアプリに、プロモーションツールとしての役割と、これまでより利用者数の多い決済プラットフォームとしての機能が備わるわけです[注6]

Zoom

以上のことから、今後はバリュージャーニーを意識した事業計画や施策を考える上で、今まで以上にLINEは無視できない存在になっていくでしょう。では、LINEをビジネスに活かしきるにはどういう選択肢があるかを考えてみていただきたいと思っています。

これまで、企業のLINE活用、オンライン上での取り組みは、大半がLINE公式アカウントを活用したものですよね。ただ、先ほどもお伝えしたようにオンラインとオフラインの境目が曖昧になった際にオフラインの取り組みはどうすればいいのでしょうか?

現状、LINEヤフー社がオフラインに位置付けているプラットフォームが「LINEミニアプリ」です。サービスや機能を提供するLINEミニアプリ、その利用者に対してコミュニケーションを行うLINE公式アカウントという位置付けが理想系として発信されています[注7]

Zoom

LINE公式アカウントとLINEミニアプリの連動をシームレスに行うために、LINEミニアプリの利用者は友だちに追加されますし、ユーザーの行動データも分析対象として取得することが可能になります。
※ユーザーが同意の上、友だち追加されます。

この行動データが、LINE公式アカウントだけでは見えてこなかった要素となるわけです
※LINEアカウントと紐づいた行動データの取得・活用にはユーザーの許諾が必須となります。

LINEミニアプリの概要は以下です。

Zoom

LINEミニアプリは決して真新しいものではなく、すでに多くの企業、事業が機能提供をしているプラットフォームです。すでにスマホユーザーのほとんどが利用しているLINEアプリ内で動くので、ネイティブアプリと比べてダウンロードする必要もなく、LINE公式アカウントだけでは実現できなかった機能を実装することで、顧客との接点を増やすことができます。

また、アプリですから、基本的にはあらゆる機能を構築することが可能です。LINEミニアプリの有無で、LINE公式アカウントの友だち獲得数も平均で1.6倍になると言われています。

LINEミニアプリの展開方法は2パターンあります。

  • すでにある機能に自社のデザインを乗っけて機能提供するパッケージ型
  • スクラッチでの機能提供する個別開発

パッケージ型

パッケージ型の代表的なモデルとしては4つあります。【モバイルオーダー】や、LINEミニアプリ上で利用される【デジタル会員証】、【来店の予約機能】と、「あと何組待ってて、何分後に入店できるか」といった【順番待ちを通知する機能】です。

これらの通知は「LINEミニアプリ お知らせ」というアカウントからサービスメッセージとして無料で自動配信されますので、ユーザーの利便性も考慮されています。

こうしたLINEミニアプリ支援企業が保有するパッケージを用いて、LINEミニアプリに機能を実装しサービス展開する企業も増えてきていますが、我々に相談を多く寄せていただいているのは個別開発です。

個別開発

  • ネイティブアプリをすでに保有されている
  • 機能を新たに構築する

どちらも対象となり、事業・サービスごとに必要な機能をスクラッチで開発し、LINEミニアプリとして実装する方法となります。

セミナーでは弊社の事例をいくつか開示させていただいておりました。事例含めた情報共有をお求めの方は問い合わせ窓口まで気軽にご連絡くださいませ。

問い合わせ先:https://www.dentsudigital.co.jp/contact


まとめ

  • デジタルマーケティングにおける顧客体験は製品・商品毎ではなく、小さな体験の連続により顧客の成功へ導くプロセス構築にシフトしている
  • 海外では日々の営みを支える決済プラットフォーマー(アリババ、アマゾン、テンセントなど)が強く、企業側は製品・サービスを提供することでプロセス構築を行なっている
  • 日本でもLINEヤフーがPayPayと(機能的に)統合することで今よりも消費者の生活に根付き、利用され、より良い暮らしの実現のために機能提供を行う企業が増えてくると予測
  • LINE公式アカウントだけでは難しかった機能提供はLINEミニアプリで展開され、企業は顧客の理想像に対して製品・サービス以外の面でも伴走し、パーパスを実現していく。

オンラインとオフラインの境目が曖昧になってきたことで、従来のバリュチェーン型から、小さな体験の連続により顧客を成功導く、バリュージャーニー型のビジネスモデルが増えてきています。

ただし、自社でそのジャーニーを描いて実践するには時間・人・スキルの面で課題が生じる企業も多く出てくることを踏まえると、決済プラットーフォーム上にサービス・プロダクトを機能的に実装することで対策を講じられると考えています。

国内だと、LINEとPayPayの統合により、LINEミニアプリがLINE公式アカウントだけではできなかった機能提供を担える場所になっていくことを現時点での未来予想とさせていただき、皆様の事業貢献を描き続けられればと考えております。


コマースウェビナー開催中

日々コマース事業に勤しむ皆さまに、最新のコマースニュースをお届けしていきます。

  • お昼のちょっとしたブレイクタイムに
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ご活用いただけたら幸いです。

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脚注(出典)

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