2024.11.13

サイト改善効果を定量的に予測。デジタル顧客体験分析ツール「Contentsquare」とは?

電通デジタルは、デジタル顧客体験分析のグローバルリーダー企業である Contentsquare (コンテンツスクエア)と協業を開始しました。Contentsquareとはどのようなツールなのか、利用することでどのように顧客体験の向上に寄与するのか、Contentsquare Japanカントリーマネージャー伊奈憲一郎氏と、電通デジタル 倉井美歩、石原香里に聞きました。

従来のWeb解析ツールでは、ユーザー行動の理由をつかみにくい

――顧客体験の向上に取り組む企業に関して、昨今どのような課題を抱えているのでしょうか?

電通デジタル・倉井美歩:リアル店舗であれば、商品購入を迷っているお客様には販売員が声をかけ、適切なタイミングで手助けできますが、オンラインでは同じようにきめ細やかな対応がしにくい面があります。オンラインでの顧客体験向上を具体的にどう実現するかが、多くの企業が課題としているところです。

顧客動向を探るために、多くの企業ではGoogle AnalyticsやAdobe AnalyticsなどのWeb解析ツールを導入しています。これらは全体的な顧客の傾向を把握するにはとても良いツールですが、顧客一人ひとりの背景にある「なぜその行動をとったのか」を探るには、別のツールに頼ったほうが良い場合があります。

Contentsquare・伊奈憲一郎氏:ブランドのWebサイトへアクセスした顧客のうち、5人に2人は何らかのフリクションを感じてWebサイトを離脱しているということが、我々の統計データで明らかになっています。これは改善しなくてはなりません。

Webサイトの平均コンバージョン率は3.4%と言われています。これはつまり、Webサイトの至るところに顧客体験を阻む障害があるということで、我々は「ロストジャーニー」と呼んでいます。

ロストジャーニーを探るうえでは、従来のWeb解析ツールには限界があると私は思っています。Web解析ツールでは、オンラインのカスタマージャーニーを点でしか追えないため、問題のページは特定できても、そのページのどこで何に顧客が不満を感じ、離脱したのかはわかりません。

そのため、ブランド側の​​主観をベースにした仮説でA/Bテストを繰り返して改善するということになってしまいます。そのA/Bテストの勝率は平均25%と言われており、つまり“空振り”を繰り返してしまっているのが実情です。結果、改善が進まず、多くのユーザーの顧客体験を損ねているという現状があります。

伊奈 憲一郎氏(Contentsquare Japan カントリーマネージャー)

倉井:我々はこれまで長くGoogle Analytics、Adobe Analyticsを扱ってきましたが、この2つのツールをさらに補完するという意味で、今回Contentsquareと協業することにしました。Contentsquareは、Webサイト上の顧客が迷っている原因や背景を含めて、どこを重点的に改善していくべきかをサジェストしてくれるので、仮説立案の精度が上がるのではないかと期待しています。


簡単導入、柔軟な分析で収益インパクトを可視化

――Contentsquareとは、どのようなツールですか? 

伊奈:顧客体験分析に特化したツールです。フランス・パリで創業して13年、当社は「顧客体験分析」という市場を根付かせるために取り組んできました。導入したクライアント企業が自社内での活用を進められるよう支援するとともに、UI分析の民主化を助けるツールとしての地位を確立しています。

現在はエンタープライズ企業を中心にグローバルで2000社、日本国内で50社以上にご利用いただいています。

――Contentsquareの重要な機能、強みを教えてください。

伊奈:1つ目は「Easy to Start」で、導入が非常に簡単です。Webサイトにはタグ、モバイルアプリにはSDK(Software Development Kit/ソフトウェア開発キット)を埋め込むだけで、ユーザー行動のデータ、Webサイトやスマホアプリの構造データを収集します。​イベント設計や設定も不要です。

2つ目はアドホック分析です。分析データをあらかじめ決める必要がありません。Contentsquareでは全量データを取得しているので、データを見ながら分析対象や分析内容を考えることができます。ゴールデンパス分析はもちろん、先ほどのロストジャーニーも、迷っているユーザーのセグメントを抽出して、行動を再現するセッションリプレイを見ながらMoment of Truth(真実の瞬間)を見つけることが可能です。

3つ目はインパクト分析です。これはあるフリクションを解決した場合、どれぐらいコンバージョン率が上がり、収益が上がるのかをあらかじめ定量化して示してくれる機能です。改善することによるビジネスインパクトを事前に示せるので、施策の優先順位を決めていく手助けとなります。

この3大機能による分析で我々が重要視しているのが、「Time to Insight(インサイトをどれだけ早く見つけられるか)」です。分析担当者ではなく、ブランドマネージャー、キャンペーンマネージャー、マーケターといった現場の方々自身が分析をして、インサイトを見つけて、改善していく。それを直感的なUIとAIでアシストし、できるだけ短時間でインサイトを見つけられるようにするのが、我々のミッションです。

Zoom
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倉井:Contentsquareの強みとして1つ追加したいのは、検知範囲の広さです。我々アナリストが、問題探索や仮説立案を行う際にはUI起点になりがちですが、ContentsquareはWebサイトの表面だけではなく、裏側で起きているAPIエラーなども検知しています。顧客体験やコンバージョンに影響しているシステムエラーや入力エラーを検知できるというところが魅力的だと感じています。

伊奈さんにContentsquareの強みをお話いただき、導入が簡単かつ分析もしやすいツールだとお感じになったかと思います。ただし、​​​​細かい分析をしていくにはそのための設定が必要ですし、その前段のKPI設計なども必要になってきます。これらは電通デジタルが得意とするところで、そのような導入のご支援をクライアント企業にご提供しています。

また、分析・改善案実施の代行や、クライアント企業がスムーズにContentsquareを使いこなせるよう、スキルトランスファーサービスも行っております。ニーズに応じて、クライアント企業がContentsquareの強みを十分に生かして分析をできるようサポートしています。

倉井 美歩(電通デジタル テクノロジートランスフォーメーション第2部門 データアクティベーション第1事業部)

電通デジタル・石原香里:導入を検討している企業にとっては、インパクト分析がかなり魅力的なようです。改善によりどのぐらいコンバージョン率が上がるか、収益が増えるかが事前にわかるという機能は、経営層に説明するときにとても役に立ちそうだと興味を示した担当者の方もいらっしゃいました。

石原 香里(電通デジタル オウンドメディアエクスペリエンス部門 オウンドメディアプランニング事業部)

伊奈:あるダイレクト型損害保険サービスの見積もり申し込みフォームの改善事例を紹介します。WebサイトをContentsquareで分析してみると、電話番号入力フィールドの再タップ数が他の項目に比べて多いことが判明しました。

電話番号のハイフンを入力しないとエラーになるため再タップしている可能性が高いとみて、さらに分析したところ、「電話番号フォームを複数回クリックしている(エラーを経験している)ユーザー」は、「1回しかクリックしていないユーザー」よりもお客さま情報登録の完了率(コンバージョン率)が約4%も低いことがわかりました。

そこで、「数回クリックするお客さまは、エラーが発生することでフラストレーションがたまり、離脱してしまっているのではないか」と仮説を立て、電話番号に自動でハイフンが追加される仕様に変更したところ、フォームの入力完了率が2%上がりました。お客さまをロストジャーニーに追い込むポイントが特定でき、それを改善することで成果を得られたという一例です。


ロストジャーニーを撲滅し、最高の顧客体験を提供するために

――Contentsquareが電通デジタルを協業パートナーとして選んだ理由は何ですか?

伊奈:2つあります。1つ目は「dentsu CX-Connect」​[1]の取り組みに見られるように、テクノロジーとクリエイティブの力を掛け合わせて顧客体験の全体最適を図り、それを実現できる会社であるということです。我々の将来的な戦略になりますが、ContentsquareはVOCやオフラインデータなど、分析できるデータの幅を増やしています。これらを使って顧客体験を改善できる会社ということで、電通デジタルにお声がけしました。

2つ目は、ユーザー軸でマルチデバイス、マルチセッションの分析ができるようにしていきたいと考えています。これにより、セッションをまたいだ複数の顧客接点でのコンバージョン率の向上施策や解約抑止、LTV向上など、幅広い施策ゴールに対してインサイトを提供できるようになります。これらのインサイトを活用し、クライアント企業のお客様へのカスタマージャーニーの改善を支援していくには、電通デジタルが非常に良いパートナーだと​​考えています。

倉井:ありがとうございます。当社は様々な分野でクライアント企業を一気通貫にご支援できることに強みがあり、伊奈さんが仰った通り複数のタッチポイントで顧客の体験をより良くすることをミッションとしています。それを実現するために、当社としてもContentsquareを重要なピースの一つと捉えています。

Contentsquareの活用においては、私が所属するテクノロジー領域だけに閉じず、クリエイティブを専門領域とする部署とも連携し、部署横断でご支援をしています。そうすることで、分析を受けてサイト課題を抽出したうえでどのようにサイト改善していけばよいか、クリエイティブ的な要素も含めてクライアント様にご提案できる体制を整えています。

――両社連携によるこれまでの取り組みを教えてください。

倉井:6月に開催されたContentsquare主催イベント「CX Circle Tokyo 2024」では、電通デジタルはプラチナパートナーとして参加しました。また、エモーションドリブン・マーケティングをテーマとした当社セミナーでは、顧客のストレスや感情を定量的に評価し、顧客体験を向上させるためにはContentsquareが大変有用であり、エモーションドリブン・マーケティングの実現に近づくことができるという内容を紹介しました。

――今後2社が連携することで達成したいビジョン、展望をお聞かせください。

石原:Webサイトの顧客体験の改善を続けていくと、改善施策のアイデアが枯渇して、コンバージョン率の向上はだんだん鈍化しますが、Contentsquareを使うことで、さらにコンバージョン率を伸ばしていける可能性があります。コンバージョン率向上に課題を抱えている企業の支援を進めていきたいと思います。

倉井:我々の目指すゴールは、多くの顧客接点で生活者がより良い体験を受けられるようにブランドを支援することです。Webサイトやアプリの使い勝手が悪いと感じて離脱してしまう顧客を減らして、良い体験のまま購入まで至っていただくのが理想だと思っています。

それを実現するうえで、すばやくフリクションを見つけ、改善するPDCAを高速で回せるところに強みがあるContentsquare が、重要な役割を担っています。今後も順次機能拡張を予定されているとのことで、さらにさまざまな分析ができるツールに進化していくことに期待しています。

伊奈:ブランドの方々が、最高の顧客体験を提供できるようにする。そのためにはロストジャーニーを撲滅しなくてはなりませんし、改善が当たり前の世界にならなくてはいけない。オンライン上ではまだそこが遅れていると感じています。我々が理想とする世界を実現するには、テクノロジーの力だけではなく、クリエイティブの知見も必要ですし、運用の支援も必要になります。テクノロジー+クリエイティブ+運用に長けた電通デジタルとともに、その世界を一緒に作り上げていきたいと思っています。


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