植木:時代の変化によって、タイパ重視や動画の早送り、SNSでの短文でのコミュニケーションが多くなっていると思います。コピーライターの大川さんは、ライティングで求められていることが変わってきている、など感じることはありますか?
電通デジタルコピーライター・大川歩(以下、大川):SNSでのコミュニケーションが一般化し、画像や動画など、テキスト以外の表現方法も普及したことで、世間的に長い文章を読まない・書かない、そして長文が受け入れられにくい状況が生まれていると感じています。
アクセシビリティを高めるためにも有効な「見出しをつける」「箇条書きを使う」ライティングテクニック以外にも、記事の冒頭に「まとめ・概要をつける」「目次を表示する」といった手法は、今の時代を象徴する書き方だと思います。
植木:アクセシビリティの観点で言うと、最初に要約があると、文章を読むことに困難を抱えている人にとって、全文を読むかどうかの判断がつきやすくなります。また、見出しや箇条書きが適切に使われていると、情報が整理されて読みやすくなります。これは急いでいる人や時間がない人、情報をたくさんチェックしたい人などにとってもメリットがあります。
そう考えると、アクセシビリティ向上は特定の人だけのためではなく、さまざまな人にとって、より良いデザインになるという実例になるのではないかと思います。
間嶋:私もニュースサイトの「ざっくり言うと」という要約機能はありがたいと思っています。
一つのエピソードをお話しします。
ある会社が、ECサイトの売り上げを上げたいと考えていました。その会社のECサイトのユーザーは高齢者の方が多く、小さい文字やたくさんのテキストを読むことが苦手な人が多かったそうです。そうした方々にとって、テキストを読みやすく、記憶に残りやすくするための試行錯誤をした結果、「大事なことをしっかりと目立たせる」「見出しをこまめにつける」などを行ったそうで、それらはすべてアクセシビリティ確保のテクニックと同じでした。
「ウェブアクセシビリティの向上に取り組んでいます」ということを明確に掲げていなくても、売上を上げるために「使いやすい」「読みやすい」「わかりやすい」という工夫を重ねた結果、アクセシビリティを高めることにつながっているということは、よくあるのだと思います。