2024.12.06

生活者のプライバシーを尊重した、新たな Cookieレス時代にどう向き合うべきか

生活者プライバシー保護の潮流の中で、世界各国の法規制の強化、AppleやGoogleをはじめとしたプラットフォーム事業者による技術的な規制(Cookie廃止など)の検討と導入が進んでいます。そうした状況の中で、Googleが米国時間の7月22日、Chromeでの3rd Party Cookie廃止を撤回すると発表 [注1] し、新たな仕組みの導入が検討されています。

デジタルマーケティング業界は、生活者のプライバシーが尊重される時代にどう向き合うべきかを前向きに考える局面に差し掛かっていると考えています。電通デジタルでは、Cookieレスの最新状況や、生活者プライバシーが尊重されるデータマーケティングのあり方、データ活用戦略について、連載形式で発信していきたいと思います。

Googleの発信内容

Chromeの3rd Party Cookieは、当初2024年3Qから段階的に廃止予定と発表、その後2025年1Qに延期すると再発表しましたが、2024年7月22日の発表で3rd Party Cookie の廃止が撤回されました。この7月22日に発表された内容のポイントは下記です。

※下記内容は、Googleの発表内容を電通デジタルが要約し、解釈したものです。

  1. 3rd Party Cookieの廃止ではなく、ユーザーが選択できる新しい機能の搭載を検討・協議
  2. ChromeのシークレットモードにIP保護機能を追加予定
  3. Privacy Sandbox API も引き続き提供・投資予定

今回の発表の大きなポイントは、「3rd Party Cookieの廃止は撤回」されましたが、その代替アプローチとして「ユーザーが選択できる新たな機能の搭載が検討・協議される」ということです。

その機能の内容次第ではありますが、例えばユーザーが従来よりも簡易的にCookieなどの識別子をオプトアウトできるようになった場合、そのユーザーの選択により、結果的に活用できる3rd Party Cookieは減少することも考えられます。新たな機能の詳細も含め、今後のGoogleの最新情報や動向を把握しておくことが求められるでしょう。


そもそもCookieとは?

Cookieとは、生活者がWebサイトにアクセスした際に付与されるテキストファイルのことを指し、ファイルには生活者のサイトへのアクセス履歴、訪問回数などの情報が記憶されます。デジタル広告においては、ブラウザ単位でCookieが付与され、それによってある程度個人を特定できています。

その中でも、3rd Party Cookieは、訪問したWebサイトのドメインではなく、第三者ドメインから発行されるCookieのことを指します。Webサイト上に掲載されている広告の配信サーバーなどから発行されることが多く、Webサイトを横断して生活者の来訪履歴などを判定し、ターゲティング等に活用されています。


Cookie含むシグナルレスの動向とその影響

Cookieは、生活者の行動を追跡・属性分析することで、広告配信を中心としたデジタルマーケティングに幅広く活用されてきました。

しかし、3rd Party Cookieのプライバシー侵害問題が顕在化するにつれ、生活者プライバシー保護の観点からその利用が次第に問題視されるようになりました。そうした状況を鑑み、各国の法規制の強化やAppleやGoogleをはじめとする事業者が、生活者プライバシー保護を重視し、技術的な制限(Cookie廃止など)の検討や導入を進めてきました。

今回Chromeについては、3rd Party Cookieの廃止方針を撤回しましたが、その他多くのブラウザでは3rd Party Cookieを制限しているため、既にターゲティング配信や広告計測・最適化等の精度が下がっています。

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また、Chromeにおいても決して3rd Party Cookieが自由に使い続けられるようになったわけではありません。先ほども述べた通り、代替アプローチとして検討されている新たな機能の内容次第では、3rd Party Cookieは減少していく可能性もあります。このような状況を踏まえると、Cookieに依存しない新たなデータ活用を検討する必要があります。


Cookieレス対策に万能薬はない

こうしたCookie含むシグナルレスが進む中で、企業はどのような対策をするのがよいのでしょうか。大前提として押さえなければならないのは、Cookieレス対策に万能薬はないということです。何か1つ対応策を講ずるということではなく、自社に必要なものをいち早く選択し、できることから面で対応していくことが大切になると思います。

その前提で、ポイントとしてお伝えしたいのが、プラットフォームをはじめとした事業者が提供する仕組みや最新テクノロジーを積極的に活用していく(使えるものは積極的に使う)ということです。そして、そのためには1st Party Dataの活用が重要になります。

具体的には、従来から注目されていたものも含まれますが、「①Cookie時代のエコシステムを維持する手法」、「②各プラットフォーム事業者が提供するAI自動最適化メニュー」が考えられます。

①Cookie時代のエコシステムを維持する手法

Cookieに依存しない形で、従来のターゲティング配信や広告計測(最適化)、分析を代替するためのアプローチや手法は多数存在していますが、方向性は大きく3つに分類することができます。自社のCookieレスによる影響範囲を把握し、必要な手法を適切に判断したうえで、実施していくことが重要です。

  • そもそも人単位でない手法
    例:コンテキストターゲティング、モーメントターゲティング
  • 人単位ではなく、集団単位にまとめた手法
    例:Topics API(Privacy Sandbox)
  • 人単位を維持する手法
    例:カスタマーマッチ(カスタムオーディエンス)、共通IDソリューション
    Conversion API、データクリーンルーム

②各プラットフォーム事業者が提供するAI自動最適化メニュー

Cookieレス対策と合わせて注目したいのが、プラットフォーム事業者が提供する自動最適化メニューです。ターゲティングや掲載面、入札の最適化が、媒体のアルゴリズムによる運用で完結するように変わってきています。Cookieレスでデータが欠損する中で、AIが取得できるデータを基に類推し、最適なユーザーへのターゲティング等を実現できるため、積極的に活用していくことが1つポイントになると考えています。

アルゴリズム時代と呼ばれるAI自動化に向かうからこそ、こうした最新テクノロジーをフル活用しながらも、人間の介在余地を高めていくことも重要になっていくでしょう。

 具体的には、データの連携を強化、工夫することがあげられます。Conversion APIや拡張コンバージョン等によるコンバージョン計測の補完、より事業成果に近いKPIを最大化するための最適化の工夫、定期的な戦略を立てるためのデータクリーンルームを用いた分析など、データ活用を工夫することで、AIによる自動最適化を高度化することが期待できます。また、クリエイティブにおいてもターゲットに沿った表現をすることにより、パフォーマンスを高めていくことが考えられます。

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こうした最新テクノロジーをフル活用するためには、企業の自助努力が不可欠です。共通して特に重要になるのが、「1st Party Dataをいかに活用するか?(活用するための準備をするか)」になってくるでしょう。


新たな時代のデータ活用の考え方

1st Party Dataの活用が主軸となるこれからの時代においては、顧客との信頼関係を築き、その信頼のもとでデータを預かり、パーソナライズされた体験を提供し、データサイクルをどう形成するかを検討することがポイントになると考えています。顧客に便利さや良い体験を感じていただければ、企業にデータを提供することに納得し、企業にとってもそのデータが資産となります。

しかし、企業が直接取得できるデータは、既存顧客のデータが中心となります。顧客から直接お預かりした1st Party Dataだけでは、新規顧客のインサイトを発掘できず、新規顧客獲得になかなか繋がりづらいことも考えられるでしょう。未顧客・新規顧客を開拓していくためには、もちろん企業の1st Party Data を軸として活用しながらも、多くのデータを保持している、プラットフォーム事業者をはじめ、外部データも活用していくことが重要になるのではないかと考えています。


プライバシーに配慮した事業成長

これまで様々な視点から、1st Party Dataの活用が重要であるということを説明してきました。1st Party Dataを活用するためには、生活者のプライバシー保護に向き合わなければなりません。デジタル広告領域においては、2022年の個人情報保護法の改正を皮切りに、データ活用をする際、生活者プライバシー保護対策をどのようにしていくのかを考えることがテーマになってきました。

そもそもCookieレスの背景は、生活者のプライバシーを尊重および保護することであり、今後のデータ活用においては、プライバシーに十分配慮し顧客からデータをお預かりすることは一丁目一番地です。プライバシー保護対策は、法令の準拠と捉えられがちですが、生活者の予見性に配慮しながら、データの利用目的等を明示し、理解をいただいた上でデータをお預かりする。こうした信頼関係の構築をする上で欠かせない要素であることを念頭に置かなければなりません。法令の遵守(守りの対策)だけではなく、生活者との信頼関係構築をしたうえでデータを活用する(攻めの対策)ことが、今後のカギであり、その結果として事業成長につながっていくと考えています。


電通デジタルの取り組み

電通デジタルでは、Cookieレス環境下のデータ活用カタログ資料をご用意しています。また、Cookieレス対策を代表するデータクリーンルームや、コンバージョンAPIの活用・導入等の全般的なサポートはもちろん、法令遵守や生活者との信頼関係構築のための対策など、最終的なデータ活用を見据えたバックキャスト型のプライバシー対策を推進しています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

※本記事の内容は、現時点の情報を基に、弊社が独自に推測した内容も含みます。


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