2025.01.16

電通デジタルコマースニュース

第10回 顧客理解に対するコマース観点でのアプローチ

電通デジタルでは、2024年1月から世の中のコマースニュースをお届けするウェビナー「電通デジタルコマースニュース」を開催しています。第10回の本記事では、ソリューションディレクターの髙田拓之とプロデューサーの松居壮人が、開催したウェビナーの内容の中からBtoB業界への顧客アプローチについて振り返ります。

24年10月コマーストピック 23年のEC市場の話

髙田:9月下旬に経済産業省からEC市場規模の発表がありましたので紹介します。

 2023年のBtoC- EC(消費者向け電子商取引)規模は24.8兆円、前年比9.23%増で、物販系分野のBtoC-EC化率は9.38%でした。前年比約2.1兆円と堅調に伸びている状況で、特にサービス分野の規模は前年比で22%強。主な要因はコロナ渦収束における消費者の外出需要に伴い、旅行サービス、飲食サービス、チケット販売の市場規模が拡大したことによるそうです。 
 
また、BtoB- EC(企業間電子商取引)の市場規模も前年比10.7%増の465.2兆円となり、EC化率も40%に達しました。同じく外出機会が増えたことによる影響が大きく、食品業界では外食やホテル需要の拡大で、業務用食品市場規模等の拡大およびEC化率も75.0%(前年70.7%)に増加したとのことです。一方卸売業の総売上は微減しているものの、BtoB -EC市場は前年比7.4%増の121兆2,500億円ほど、EC化率は37.5%と増加しています。大手総合スーパー、大手スーパーを中心とした、流通BMSに代表されるEDIの標準化がEC化率増加の後押しとして挙げられています[1]

BtoC -ECの物販系分野に話は戻りますが、カテゴリごとのEC化率にも触れておきます[2][3][4]。 

  • 【食品】コロナ禍によりECで食品を購入する消費行動が定着し、事業者側のネットスーパー強化と新規参入により市場が拡大したと見られています。また、健康食品もシニア層のECシフトが進み、「今後も市場規模の拡大は継続する可能性が想定される」と見られています。
  • 【生活家電】外出が増えたことで家電利用シーンが少なくなったことと、物価高などによる買い控えはあったものの、省エネ製品ニーズなどにより高単価商品の需要増などもあり、微増しています。今後はリユース家電にも期待されています。 
  •  【書籍】生活家電と同様の理由で微増となったものの、電子書籍やサブスク配信は拡大しています。
  • 【化粧品】コロナ渦収束の影響によりマスク需要は減りましたが、男性化粧品が拡大しています。ECの伸長はライブコマースやオンライン接客などEC販売の進化が見られています。医薬品のEC売上は規模はまだ小さいものの右肩上がりで伸びており、オンライン診療や服薬指導が普及すれば、一般用医薬品のインターネット販売に対する消費者の心理的ハードルが下がり、市場拡大が一層進む可能性も示唆されています。 
  •  【生活雑貨】日用品についてはクイックコマースにおける取り扱いが拡大しており、新たな需要につながる可能性があるとしています。またARの技術を使い、家具やインテリア商品を自分の部屋に置いたイメージをスマートフォンで確認できる機能を提供する事業者が増加。さらにAIを活用してECサイト上で消費者の好みに沿った商品を提案する技術も進化しています。  
  • 【衣類】暖冬傾向もありアンダーウエアの不振などもあったそうです。ECでは店舗と連動したOMO推進のほか、メタバースやNFT領域の進出が増えており、新たな市場拡大が示唆されています。

マーケットプレイス(モール)EC化

今月、アイリスオーヤマとサッポロドラッグストアーが相次いで自社ECをマーケットプレイス化にすると発表がありました[5][6]

 マーケットプレイス化とは、自社のWebサイトに他社の商品やサービスを出品できる仕組みです。また今年度には、ニトリもマーケットプレイス事業に参入することを発表しています。プラットフォームはMiraklを導入するということです。 
 
マーケットプレイス化、別名自社モール化とも言いますが、実は電通デジタルにもモール化のご相談をいただくことも少なくありません。弊社もMirakl含め、自社モールECが可能な国産ECプラットフォームの取り扱いはございますので、最適なプラットフォームのご提案が可能です。 
一見、在庫も持たずにEC事業を展開できると思われがちではありますが、モール化において重要なのは、以下を同時で行うことであり、ゼロからのスタートはかなりの投資と根気がいる事業です。

  • エンドユーザー(利用者)を集めて販売するスキームを作ること 
  • 出店社を集め、商品ラインナップを増やすこと

 アイリスオーヤマやサッポロドラッグストアーのように、基盤が既にしっかりしており、また販売ルートも整備され、既に自社ECとして売上の基盤がある場合は、そこに追加するという形で実現が可能ですので、まずはしっかりと自社の売上の基盤を作る、または販売可能な商品ラインナップ/出店社を確保することから従事した方が事業リスクは少ないでしょう。 

こういった戦略のところからも弊社はご支援可能ですので、マーケットプレイス化を検討したいという企業様がいらっしゃいましたら、是非お気軽にお声がけくださいませ。

 ここからは、松居よりBtoBビジネスにおけるEC活用のポイントについてお話をさせていただきます。 


BtoBのEC市場規模が伸びている背景 

松居:まず、経済産業省のレポートを基に、BtoB-EC市場が成長している調査情報をご紹介します。BtoB-ECが拡大している背景として、主に以下の3つが挙げられます。

  • 背景1:ITインフラ/デバイスの普及
    ITインフラとデバイスの普及により、ベンダーやユーザー双方にとってECが使いやすい環境が整っています
  • 背景2:働き方改革、DX推進
    政府の改革方針により、生産性を高める施策の一環として、多くの企業が取り組んでいます 
  • 背景3:BtoB-ECシステムベンダーの増加
    ECシステムのベンダーが増え、大企業から中小企業まで、業界や規模に合わせた適切なBtoB ECシステムを選びやすくなっています。
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企業のBtoB-EC活用における課題 

BtoB-ECを運営の目標として「売上獲得」と「業務効率化」を掲げている企業が多く、それぞれの目標によって運営の課題が異なります。 

  • 課題1:業務効率化の課題 
    業務効率化における課題としては「基幹システムとのデータ連携」や「社内全体の業務フローの見直し」等、ECの現状業務への組込みに関する課題が多いです 
  • 課題2:売上獲得の課題
    売上獲得における課題としては「顧客ニーズに合わせたオンライン体験の提供」や「画像等のeコマースで販売するためのコンテンツ」等、顧客体験に関わる課題を持っている企業が多いです

BtoBで顧客体験を考えるには 

ECビジネスにおいて、BtoBとBtoCでは購買プロセスが大きく異なります。そのため、商品特性に応じた体験設計が必要です。以下の2つのポイントを重視してください。

  • ポイント1:購入・契約を決める意思決定の数 
    BtoB企業では、一人の担当者だけで契約が決まることは少なく、複数人の確認と合意が必要です
  • ポイント2:購入の目的 
    BtoB企業の顧客は一般的に組織であり、商品の購入は「材料調達」「課題解決」「業務効率化」「売上向上」など、組織にとってのメリットを基に検討されます。感情に訴えるのではなく、明確なメリットを示す必要があります
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「DMU」を明確化し顧客の解像度を上げる 

購入意思決定関与者を「DMU(Decision Making Unit)」と呼びます。企業には、コストを抑えたい経理担当者や、現場のキーマンなど、複数の意思決定関与者がいます。DMUを明確に理解することで、購入検討段階ごとに適切なコミュニケーションを図ることができます。

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CRMでより高度な顧客体験提供

BtoBビジネスにおいて、ECは強力なツールですが、DMUが複数存在するため、万能ではありません。デジタルでは広告活動による集客、既存顧客へのメール、オフラインでは展示会への参加や営業としての商談など、データを統合的に管理することが可能で、これを支えるのがCRMです。電通デジタルは、ECプラットフォームとCRMを活用したマーケティング全体支援を提供しており、お困りの際はぜひお問い合わせください。

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BtoB業界でもコマースの活用が増えてきておりますが、「顧客」として見た時の特徴やタッチポイントについてお話させていただきました。皆さまの業務に少しでもお役立ていただければ幸いです。



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