2025.01.22

電通デジタルコマースニュース

第11回 生成AIで進化するEコマースの購買体験

電通デジタルでは、2024年1月から世の中のコマースニュースをお届けするウェビナー「電通デジタルコマースニュース」を開催しています。第11回の本記事では、ソリューションディレクターの髙田拓之とコマースデザイン部のマネージャー岡田宣之が、開催したウェビナーの内容の中からコマースにおけるAI活用について振り返ります。

24年11月コマーストピック ファッション系EC利用者の約7割が価格を重視 

MA・CRMツールを提供している株式会社シナブルは、ECサイトにおけるファッションアイテムの購入経験者を対象に、ファッションECサイトの利用実態を調査しました。 

「ECサイトでファッションアイテム購入時に重視する要素は何か」という質問に対して、7割近くが「価格」と答えたそうです。次いで、SKUの豊富さ、セールやクーポンの有無と続きました。また、カートに入れた後に購入をやめた、いわゆるカゴ落ちの理由については、「送料が高く感じた」が35%ほどいたとのことです。気が変わった割合(31%)よりも高い結果となりました。

 これまでのコマースニュースでも度々取り上げましたパーソナライズ施策は、特にファッション系ECではユーザーにとっても有益な情報として利用される傾向にありますが、どのようなECサイトならばより購入したいかという問いにも、クーポンやセールがあるのと共に、自分だけに届く情報については着目されています。最近では実店舗来店と連動した事例もありますので、よりパーソナライズなお得な情報は有効な施策とされています。

ここからは、岡田より生成AIで進化するEコマースの購買体験についてお話をさせていただきます[1]


AIによる市場環境の変化

岡田:現在、生成AIの誕生をきっかけに第4次AIブームが到来していることはご存知の方も多いでしょう。AI市場は著しく拡大しており、今後10年間で平均27%の成長率が予測されています。中でもマーケティング領域での活用は全体の2割を占めると言われています。

当社の見通しとして、これによりマーケティングファネルにおける顧客の購買行動が変化し、「理解〜検討」のミドルファネルにおいて、「対話」という行動パターンが入ってくると考えています。

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市場が盛り上がる一方で、実際にAIをどのように活用すればよいのかイメージがつかないという調査データもあります。そこで、実際にECの中でどのようなポイントで活用ができ、どのように顧客の購買体験が変わるのかを、弊社で取り組んでいる内容をご紹介しながら解説していきます。


ECにおけるAI活用のポイント

ECにおけるAIの活用ポイントは、実際の売場での体験はもちろんのこと、それより手前の市場調査や戦略策定のフェーズでも活用ができると考えています。

市場調査は通常、多くの費用や時間がかかります。最初に市場調査を行い仮説を立てた後、その仮説の受容性を再調査したい場合があります。しかし、費用や時間の制約から、再調査が難しい場合も多いです。そこで、弊社では「AIペルソナ」というソリューションをご用意しております。AI人格にインタビューすることで、再度調査したい点を予測していくことができます。

弊社グループが持つ、過去の広告やキャンペーン、調査結果などの膨大なデータを学習し、クラスタリングしたAI人格を生成しており、これらのAI人格を使っていつでも簡単に再調査を行うことが可能です。

次に戦略策定では、担当者のバイアスがかかった客観性に乏しい戦略設計になってしまうことは、比較的起こり得る問題だと考えています。

それに対して、社内で保有されている膨大なテキストデータをタグ付けし、AIを使って分析することにより、客観性の高い戦略策定に生かすことができます。社内での情報共有という観点でも活用でき、業務改善にも役立てることが可能です。

また、このタグ付けからのAIによる分析は、社内での活用だけでなく、コンテンツデータにもタグ付けをし、顧客接点での分析に使用することで、顧客の行動に基づいたレコメンドモデルとして活用していくこともできます。

実際の活用事例として、アパレル企業様が膨大な商品情報にAIを用いてタグ付けと分析を行いました。これにより、競合他社のラインナップと比較して優れている点や劣っている点を明確にし、それを商品設計やMD戦略に活用した事例があります。

続いて売場での活用ですが、これは多くの企業が非常に多くの工数を費やしていると考えられます。例えば、キャンペーンの企画やLP・バナーの制作など、準備には多くの時間がかかります。また、これらは年に一度だけではなく、複数回にわたり断続的に行われることが多いため、PDCAサイクルを回して改善を図ることが非常に難しい業務となります。

こういったところでも、AIを活用して効率化していくことができます。

後述する販促のパートで詳しくご説明しますが、訴求軸を発見するところから、クリエイティブ生成、効果予測や改善まで、一貫してサポートすることができます。実際の導入事例では、広告の表示回数が700%以上増加したケースや、獲得単価が約50%削減できたケースもあります。これにより、工数の削減や業務の効率化だけでなく、施策効果の向上も期待できます。そのため、導入には非常に大きなメリットがあります。

次に体験のフェーズでは、多くの企業様が豊富な商品を取り揃えている一方で、最適なオススメができていない、商品が探しづらいといった様々な課題を抱えているかと思います。

この点に関しては、対話型ECやバーチャル試着、レビュー収集といった機能を活用することで、顧客体験を向上することが可能です。

対話型AIを導入することによる顧客メリットしては、商品が見つけにくい、サービスが分かりにくいといった問題を解決し、顧客が決断しやすくなる手助けをします。また、親しめないという負の解消も可能になります。

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やはりシナリオ型のチャットボットなどでは、通り一辺倒の返答になり、親しみは非常に感じづらいところではないかと考えております。

アーカイブ動画から対話型ECのデモをご覧ください。顧客視点ではECサイトの中で商品のことがイマイチ分からず、FAQにも知りたい情報が載っていないといった課題や、運営視点では店頭のような接客が再現できずに機会損失が発生するといった課題に対して、AIに話しかけることによって商品を代わりに探してレコメンドしてもらえたり、アパレル商品であれば、顧客が自身で持っている商品の画像をアップしてコーディネートを見せてもらえるバーチャル試着も提供でき、接客の品質を向上することができます。

また、おもしろい使い方として、レビュー収集での活用があります。一般的には、レビューを書いていただいた方にクーポンやポイントを提供するというアプローチが多いかと思います。しかし、顧客視点から見ると、「何を書けば良いのか分からない」「インセンティブをもらっているので、つい良いレビューだけを書いてしまう」といった懸念が生じることがあります。一方で、事業者視点では、「せっかくレビューを集めても、他のユーザーに役立たない内容が多く、それでもインセンティブを渡さないといけない」といった課題があると思います。

こちらもデモをご覧いただきたいのですが、AIを活用することで、AIから顧客にインタビューを行い、写真とのギャップや着心地、フィット感などをヒアリングすることで、AIでレビュー文を作成することができます。最後に評価点を聞くことで、インタビューの回答のファクトと組み合わせて書き振りを調整することが可能です。

としては、質問されたことに答えるだけで勝手にレビューを作ってもらえますし、事業者視点では、他のユーザーに役立つレビューを収集できることや、観点・軸を揃えることができますので、非常にメリットのある活用になります。

最後に販促での活用についてです。売場のパートで紹介したソリューションと同一のものになりますが、訴求軸の発見から改善のサジェストまで一貫してサポートできます。訴求軸の発見では、世の中の公開情報や自社の保有する情報など、様々なデータソースから学習し、その商品をどのような軸で訴求していくのがよいか導き出し、その軸での訴求キーワードを抽出。これを元にキャッチコピーの生成を行います。 

このキャッチコピーの生成について、弊社のAIでは電通グループのコピーライターのノウハウを学習しており、通常のLLMで生成したキャッチコピーに比べて、インスピレーションに富んだキャッチコピーの生成が可能となっています。

実際の広告配信では、コピーライターが書いたもの、通常のLLMで生成したものと比べて、すべての項目でパフォーマンスが上回っており、通過率1%と言われる宣伝会議の賞で一次審査を通過するという非常に精度の高い生成を実現しています。

さらに、生成したクリエイティブを使用して実際に広告配信をしたらどの程度のパフォーマンスが見込めるかを予測し、複数あるクリエイティブ案の中でどれが一番効果的かを推測することができます。また、出稿後の結果も学習させることで、統計的に判断してクリエイティブのどこを改善すれば、よりパフォーマンスを向上することができるかというサジェストも可能です。

結果分析では、また別の軸としてECでの顧客の行動ログや、カスタマーセンターに寄せられるVoC、あるいは商品レビューなどを学習・分析し、戦略策定や施策の立案に役立てることもできるので、マーケティングの精度向上や効率化に寄与します。


今後のマーケティングの変化

今後は、顧客接点においてエージェントAIが稼働し、その結果などを受けてマーケターが業務AIを使用して施策を立案・実行していくというワークフローになっていくと考えられます。これが主流になることで、顧客体験をリッチにしながら業務効率を改善していくという両立が実現できると考えております。

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電通デジタルのAIケイパビリティについて

最後に電通デジタルのAIケイパビリティについて紹介します。2023年電通グループ内のデータアーティストというAI開発の会社と経営統合し、電通デジタル内にAIの専門組織ができました。またデータアーティストのモンゴルの拠点と開発を推進しております。他にも、ソリューションとして「∞AI」シリーズを提供しており、私たちコマース領域では「Commerce AI Lab.」を立ち上げ、ECにおけるAI活用の研究も進めております。

様々な企業様とモンゴルでAI活用のワークショップやPoC推進などを行っておりますので、AI活用についてご興味をお持ちであれば、まずはお気軽にご相談ください。

・・・

2024年もAI活用については度々お伝えしておりましたが、既に実践的に活用されている例も増えています。AIで全て解決できるということではないですが、有効的に活用することが当たり前になる日も近いかもしれませんね。皆さまの業務に少しでもお役立ていただければ幸いです。



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