2025.04.11

∞AIにAIエージェントを導入!電通デジタルが描く次世代のマーケティング戦略

電通デジタルは3月24日、AIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」の各ソリューションにAIエージェントを導入し、大幅なアップデートを実施しました。これにより、ユーザーは専門的な知識や複雑な準備をせずに、AIエージェントとの対話を通じてデジタルマーケティングのさまざまな業務を支援してもらえるようになります。今回のアップデートの概要や意義、今後の展望について、開発を率いる山本覚CAIOに話を聞きました。

AIエージェントとは何か

――AIエージェントは生成AIとどのように違うのでしょうか?

山本:一般的に、生成AIやLLM(大規模言語モデル)は、1回の入力に対して1回だけ回答を返すのが基本です。

一方、AIエージェントは、通常であれば複数回のやりとりを経て導き出されるような解答を、裏側で複数のプロセスを統合し、1回のやりとりで提供できるのが大きな特徴です。

AIエージェントに問いを入力すると、まず必要なマーケティングプロセスを特定し、ブラウザ検索を行って情報を収集します。次に、それらの情報を自らインプットし、解釈を加えながら、さらに必要な情報があれば追加で検索を行います。

このプロセスを繰り返した後、最終的に得られた情報を要約し、解答として提示します。その結果、ユーザーは1回質問するだけで、ある程度結論の出た解答を得ることができます。


∞AIの大型アップデート――3つの進化ポイント

――今回のアップデートの概要を教えてください。

山本
:今回の∞AIの大型アップデートには、大きく3つのポイントがあります。

1つ目は、∞AIの各ソリューションにAIエージェントを搭載したことです。

現在∞AIは、大きく3つのソリューション(∞AI Ads、∞AI Chat、∞AI Contents)と、これらを統合する基盤として∞AI Marketing Hubを提供しています。今回のアップデートにより、すべてのソリューションにAIエージェントが搭載され、対話型で高度な分析や施策の提案、改善を実行できるようになりました。

2つ目は、∞AI Marketing Hubに新たに4つのソリューションが追加されたことです。これらはAIエージェントと対話するためのデータ整備や、実際に対話を施策に活用することができます。

・∞AI Customer Data Hub:さまざまなデータを自動で構造化

・∞AI Customer Twin:仮想顧客AIの生成

・∞AI MC Planning:マーケティングコミュニケーション領域の業務支援

・∞AI CX Planning:顧客体験(CX)改善のアイデア支援

これらを既存の∞AIソリューションと組み合わせることで、より高度なマーケティング支援が可能になります。

3つ目は、∞AI Adsのアップデートです。対話型での運用が可能になり、各プロセスの精度とスピードが大幅に向上しました。

――∞AIの各機能にAIエージェントを導入することで、どのようなことが可能になるのでしょうか?

山本:最大の利点は、さまざまな操作を対話形式で行えるようになることです。曖昧な指示にも対応し、サポートできるように設計しました。

たとえば∞AI CX Planningでは、まずカスタマージャーニーを作成し、その上で「これをもとに新しいプロダクトのアイデアを出したいけど、どう進めたらいい?」といったざっくりした質問をするだけで、AIが「このようなアイデアが考えられます。具体的にはこういった形です。また、ここを調整することも可能ですが、いかがでしょうか?」と提案し、必要に応じて実行までしてくれます。

他のソリューションでも同様に、直感的な対話で操作が可能です。


電通デジタルの強みは、蓄積された知見とデータ活用

――デジタルマーケティングAIエージェント市場には、今後さまざまな企業が参入すると考えられます。その中で、電通デジタルならではの強みや特徴は何でしょうか?

山本:まず挙げたいのは、電通デジタルのメンバーが持つ知見や思考プロセスをAIに組み込んでいる点です。

電通のコピーライターが長年培ってきた思考プロセスを学習したAI広告コピー生成ツール 「AICO2」の開発時にも経験しましたが、たとえば「このコピーが良かった/悪かった」という評価は、単純にインプレッション数などの指標で判断されがちです。しかし、それだけではなく、「なぜその結果になったのか?」という解釈をマーケターやクリエイターの知見として整理し、一定のルール(フラグ)を設定することで、AIの精度が劇的に向上するケースを何度も見てきました。今回のデジタルマーケティングAIエージェントも同じアプローチで開発しており、これが電通デジタルならではの強みだと考えています。

ただし、どれだけ知見があっても、もともとのデータがなければ活用できません。その点、電通デジタルは豊富なデータを保有していることも大きな強みです。

具体的には、 過去のさまざまな提案資料を大量に蓄積しており、これを適切にマスキング(情報保護)したうえで活用しています。さらに、デジタル広告配信のデータに加え、AIチャットとの対話データやコンタクトセンターのデータ、電通デジタル独自の調査データなど、さまざまな領域を横断したデータを保有しています。これらの内容を構造化し、知見として∞AI Marketing Hubに反映させることで、より高度なマーケティング支援が可能になります。こうしたデータと知見を組み合わせて開発したAIエージェントだからこそ、電通デジタルならではの価値を提供できると考えています。


AIエージェントがもたらす未来と、ビジネスの新たな可能性

――デジタルマーケティングAIエージェントの活用によって、どのような未来を描いているのでしょうか?

山本:これまで、私たちは日本の総合デジタルファームという枠組みの中で知見を磨くしかなく、そうした知見を業界や国を超えて共有・活用することはほとんどできませんでした。しかし、AIエージェントを活用することで、これまで分散されていた知見が統合され、より広範囲で活用できるようになると考えています。

また、AIエージェントは単なる業務の代行だけでなく、使われるたびに学習し、どんどん賢くなっていきます。そして、このAIエージェントを私たち自身で活用するだけでなく、企業にも提供できるようになれば、より多くのビジネスの発展に貢献できるでしょう。

たとえば、AIエージェントを企業に導入することで、近い将来、企業のインハウスマーケティングを推進する役割を果たすようになると考えています。さらに先の未来では、複数のAIエージェントが専門家と協力しながら、新しい施策を次々と展開する時代が訪れるかもしれません。そして、最終的には多くの企業が、それぞれの分野に特化したAIエージェントを持つようになり、それらが連携しながら新しい社会システムを形成する可能性もあると考えています。


デジタルマーケティングから経営支援AIへ

――∞AIに搭載したデジタルマーケティングAIエージェントの今後の展開について教えてください。

山本:今後も国内電通グループ(dentsu Japan)や電通インターナショナルと連携しながら、AIエージェントの活用領域を広げていきます。

現在のAIエージェントはデジタルマーケティングが中心ですが、事業創出やHR(人事)、インナーマーケティングなど、より幅広い分野で活用できるように進化させたいと考えています。たとえば、∞AI CX Planningを発展させれば、抜本的な事業開発にも応用することが可能です。

また、将来的には経営の意思決定を支援する「AIエージェント for CEO」の開発も視野に入れています。現在、個々の業務を支援するAIは存在しますが、それらを統合し、企業全体の運営を支援するAIはまだ実現できていません。この領域に挑戦し、AIが経営を支える時代をつくりたいと考えています。

マーケティングAIエージェントに関しては、すでに想定の95%の機能が実現できており、今後は品質向上や機能拡張が中心となります。ただ、新しいビジネスモデルの創出には、より高度な意思決定を促すAIが求められるでしょう。

SNSがインターネット技術の上に成り立っているように、マーケティングAIエージェントも既存のマーケティング技術の延長にあります。今後AIエージェントの精度をさらに高め、その先は経営レベルで活用できるAIエージェントへと進化させていきたいと考えています。

事業創出や経営は、データが十分にない領域では予測が難しくなります。しかし、電通デジタルは生活者との豊富な接点を持ち、深いインサイトを蓄積しているのが強みです。この知見を活かしながら、AIエージェントによる高品質な支援を提供していきたいと思っています。

――デジタルマーケティングAIエージェントの導入に関して関心があるクライアント企業の担当者に向けて、メッセージをお願いします。

山本:今後、電通デジタルをはじめ電通グループでは、デジタルマーケティングのエージェント化をさらに加速させていきます。これにより業務効率化やコスト削減だけでなく、豊富な知見を生かした高付加価値なマーケティング支援を提供できると考えています。

AIエージェントを活用することで、より的確なマーケティング施策を実行し、生活者にとって価値のある体験を創出できるようになります。その結果として、売上向上やブランドの成長につながる好循環を生み出せると確信しています。また、今後は当社の知見を生かしたインハウス支援を提供し、クライアント企業のデータと組み合わせることで、各企業に最適なマーケティングAIエージェントの構築にも貢献していきます。


関連プレスリリース

「∞AI」を大型アップデート デジタルマーケティングにおけるAIエージェント運用開始
https://www.dentsudigital.co.jp/news/release/services/2025-0324-000211

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