2020年05月13日

エクスペリエンス

コラム

※所属・役職は記事公開当時のものです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下"コロナ")は、人々の行動にどのような変化をもたらしているのでしょうか。2020年5月13日時点では、以下のようにまとめることができます。

「オフラインでの行動」での顕著な変化は、「外出の減少」と「睡眠時間の増加(欧米)」です。外出は、生活必需品・医薬品の買い出しを除き、エリア・世代を問わず減少しています。睡眠時間は、欧米の調査では最大で25分ほど増加。仕事・通勤関係の時間減少や、健康意識の増加が影響していると見られます。

これに対し、「オンラインでの行動」における変化ですが、業種別に見た場合、「在宅での仕事・学習・娯楽・生活に関わる商品・サービス」と「医療・健康」関連業種の需要が増加しているのに対し、「屋外での仕事・学習・娯楽・生活に関わる商品・サービス」の需要は減少しています。一方、サービス嗜好で見た場合、外出を避けるため、「デリバリー」「テイクアウト」「オンライン〇〇」のような在宅サービスの需要が増加しています。

本稿では、上記の各項目について詳細を解説いたします。

(最終更新日:2020年5月13日

1.1 オフラインでの行動

コロナによる外出自粛は世界規模で広がっており、2020年4月6日時点では90以上の国・地域で、39億人以上が対象(朝日新聞デジタル)となっています。「世界の半分が、外出自粛を勧奨されている」というこの情勢に、人はどのように対応しているのでしょうか。

1.1.1 エリアによる反応差異

「外出自粛」に対する反応は、地域・都市などのエリアごとに異なります。日本での都道府県別では、「特に大都市近辺で、外出を控える動きが強い」傾向が見られます。日本でのオフライン行動データとして、以下の2点を参照しています。

(1)Google の「COVID-19 Community Mobility Reports
「人が、どのような場所に滞在しているか」に着目したレポート。47都道府県の、以下6点の滞在時間データが確認できる。
  • Retail & recreation(レストラン・ショッピング・娯楽)

  • Grocery & Pharmacy(食料・雑貨・薬品などの生活必需品店)

  • Parks(公園・ビーチ)

  • Transit stations(駅・バスターミナル等の公共交通機関)

  • Workplaces(職場)

  • Residential(自宅)

(2)Appleの「移動傾向レポート
「人が、どのような移動手段で移動しているか」に着目したレポート。東京・大阪・名古屋・福岡の、以下3点の滞在時間データと、47都道府県のDriving(車内)データを確認できる。
  • Driving(車内)

  • Transit(公共交通機関)

  • Walking(徒歩)

赤字の項目は大半のエリアで減少。青字は増加。日本全体で、生活必需品の確保を除く外出を控える傾向にあります。増減幅は東京・神奈川・千葉・埼玉などの首都圏が特に大きく、大阪・京都・愛知・福岡などの大都市近辺でも大きくなる傾向があります。

世界各国の反応は、Fitbitの歩数データからうかがい知ることができます。

2月~3月初頭から在宅勤務や学校閉鎖に着手したイタリアや米国では3月初頭から歩数が減少し、現在も減少幅は大きいです。一方で、3月中旬まで「Herd immunity(集団免疫)戦略」をとり(Support The Guardian)、外出自粛の機運が高まるのが遅れたイギリスでは減少の始まりは遅く、現在の減少幅も少ないです。

Fitbitデータは、世代別の行動変化についても興味深い傾向を示しています。

米国でも「若年層は外出自粛・ソーシャルディスタンスなどを無視しがちで、コロナ拡散の一助となっている」という論調が一部で見られますが、Fitbitのデータでは若年層になるほど、歩数低下が顕著です。

もちろん、これは「高齢者が外出自粛に非協力的である」ということではありません。世代ごとに元々の歩数やコロナによる生活環境変化には差があるため、歩数への影響も異なります。ここから読み取れるのは、「どの世代も、外出自粛に協力的である」という良い傾向に尽きます。

1.1.2 睡眠時間の増加

Fitbitデータによると、欧米では「睡眠時間が増加している」という傾向が見られます。

3月16日~22日の週の睡眠時間の変化(Fitbit記事より引用。各州の数値は「増減した睡眠時間(単位:分)」を表す)

3月16日~22日の週の睡眠時間の変化(Fitbit記事より引用。各州の数値は「増減した睡眠時間(単位:分)」を表す)

「特に18歳~49歳までの世代で増加している」「イタリア・米国などで増加が大きく、イギリスでは小さい」という傾向は上記の「歩数データ」から読み取れる傾向と一致します。外出を控え、健康をより強く意識するようになったことが遠因と見られます。

1.2 オンラインでの行動

外出自粛による変化は、オンラインでの行動にも大きく影響しています。

1.2.1 業種別の変化

「在宅での仕事・学習・娯楽・生活に関わるもの」や「医療・健康」の需要が増加し、「屋外での仕事・学習・娯楽・生活に関わるもの」需要は減少するという、オフラインと同一の傾向が見られます。当社で確認できる範囲では、検索需要・検索流入が以下の増減を示しています。

  • 増加:EC(インターネット通販)、メディア、音声・動画配信など

  • 減少:旅行・宿泊施設、外食、小売店、レンタカーなど

Yelp(米国の大手ローカルビジネス情報サービス)の利用状況にも、同じような傾向が現れています。また「銃砲店」の需要増加も、コロナに対する不安を示しています。

  • 増加:生活必需品、食品デリバリー、フィットネス機器、銃器店など

  • 減少:レストラン、娯楽施設、お出かけスポットなど

こうした業種別の変化は、企業の業績にも反映されています。東京商工リサーチの4月16日時点の業績調査では、小売店・サービス業・娯楽分野での業績下方修正が相次ぎ、同、4月17日時点の倒産調査でもこれらの業界への影響が目立ちます。

1.2.2 サービス嗜好の変化

外食産業では「デリバリー」「テイクアウト」、他産業でも「オンライン〇〇」のような在宅サービスの需要が大幅に増加しています。

Yextの「COVID-19: Yext Search Data Hub」からは、業種ごとの検索需要だけでなく、「経路をクリック」「電話をかける」などの行動をもうかがい知ることができます。日本では書籍・家電分野で「検索需要に比べて、電話の伸び率が大きい」傾向が見られますが、これも在宅需要の増加によるものと考えられます。

COVID-19: Yext Search Data Hub

COVID-19: Yext Search Data Hub

1.3 コミュニケーション不全の増加

政府・医療団体・企業などの「発信者」が、自分たちの知見やサービス情報を発信しても、それらを必要とする「受信者」に正しく伝わりにくくなっている点にも注意が必要です。主な原因としては、「インフォデミック」と「チャネル別対応の不備」があげられます。

1.3.1 「インフォデミック」とは

「インフォデミック」とは、「正確な情報と不正確な情報が混在し、かつ大量に流通することで、受け手が信頼できる情報源にアクセスしにくくなったり、必要なガイダンスを手に入れにくくなったりすること」を指します(WHO、2020年2月)。

コロナによって「肉体」「精神」「金銭」への不安が高まっており、それに便乗したフェイクニュース・差別的情報・詐欺などが多数出現しています。一方で多くの公的機関・医療機関・専門家などは、信頼できる正確な情報を自身のWebサイト・ソーシャルアカウントなどで発信しようとします。こうしてコロナに関する玉石混淆の情報が、Webの各地で氾濫することになります。

情報の受け手である個々人は、ソーシャル・検索エンジン・メディアなどの各種媒体を通じて、ある程度取捨選択された情報に接触します。しかし、これらのメディアによる取捨選択は完全ではありませんし、メディアが高品質な情報源を見落としてしまうこともあります。

その結果、受け手に正確な情報が届かなかったり、ノイズの多い情報が届いてしまったりします。WHOは4月15日発レポートの中で「インフォデミック対策には、送り手・メディア・受け手など当事者各位の対策が必要」との提言をしています。

1.3.2 「チャネル別対応の不備」とは

「チャネル別対応の不備」とは、公式サイト以外のチャネル(情報サイト、アプリ、Web検索、ソーシャル(SNS)、Google マップなど)に正しい情報が掲載されていない状態のことを指します。

公的機関・医療機関などは、さまざまなコロナへの対処法や支援策を打ち出しています。また一般企業でも、コロナの影響で営業形態を変更することが多々あります。

  • 営業時間や曜日の変更

  • 臨時休業

  • サービスの変更・追加(例:レストランでデリバリー・テイクアウトに対応)

  • 移転、店舗統合、閉店

などが代表例です。

こうした情報は日々変化し、人々にいち早く伝達すべきものです。しかし、「公式サイトに掲載する」だけでは、お客さまにそれが届かないことがあります。

人々は情報を探すときに、「情報サイト」「アプリ」「Web検索」「ソーシャル(SNS)」「Google マップ」などのさまざまなチャネルを利用します。そして、各チャネル上に転記された情報を見れば満足し、公式サイトをわざわざ訪問しないことがあるためです。例えば、レストラン選びの場合「情報サイト・アプリ」「Google マップ」「Instagram」の3つが主な情報収集源となります(日経クロストレンド)。

そのため、公式サイトだけではなく、「情報を届けたい相手がいるチャネル」全体への対応が必要になります。

特にGoogle マップ(Google マイビジネス)には、自動的に収集された情報が掲載されることがあるため、店舗の不正確な営業情報が掲載される可能性があります。その影響は大きく、古典的な事例では「"土日は休業"と誤って掲載されたレストランが、レイオフ・閉店に至った(Support The Guardian)」というものもあります。

一方で、正しく設定をすれば「現在は臨時休業中」などの正確な情報を、Google 検索・Google マップ上で伝えることができます。

Google マップを適切に設定した例。Google 検索結果で「臨時休業」であることが明示される

Google マップを適切に設定した例。Google 検索結果で「臨時休業」であることが明示される

こうした行動変化の背景には、心理や需要の動きがあります。Part 2では、そうした心理・需要の動きを考察します。