2020年06月30日

エクスペリエンス

コラム

現在のコンテンツマーケティングの問題点と、その改善メソッド

※所属・役職は記事公開当時のものです。

デジタルマーケティングの世界では、コンテンツマーケティングはもう過去のもの、終わった手法なのではないか、という声もちらほら聞かれます。また、上司から「コンテンツマーケティングにこれだけのコストをかけるだけの事業貢献価値は何か?」と問われてご相談に来られる方も多くいらっしゃいます。しかし、コンテンツマーケティングを実施することで売上増加や利益増加に有効な手段となります。

今回は、現在のコンテンツマーケティングの定義を確認しつつ、その問題点と、改善メソッドの1つであるKPIの見直しについてご紹介します。

コンテンツマーケティングの定義

私は、「コンテンツマーケティングとは何か?」と問われたときは、米国で数多くの大手のクライアントを持つコンテンツマーケティングの第一人者ジョー・ピュリッジ著『エピック・コンテンツマーケティング』(日本経済新聞出版)にある一文を引いて説明するようにしています。

「コンテンツマーケティングとは、有益で説得力のあるコンテンツを制作・配信することによって、明確に定義・認識されたターゲット・オーディエンスを引き寄せ、獲得し、エンゲージメントを作り出すためのマーケティングおよびビジネス手法を指す。その目的は、収益につながる顧客の行動の促進である」(『エピック・コンテンツマーケティング』p.16)

これは「コンテンツマーケティングの正式な定義」と題された項目にある一文ですが、今なお通用する真理だと思います。

エピック・コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングを多くの人が誤解している

私は前職の事業会社で、ニュース・コラムを提供するオウンドメディアサイトの企画制作・編集・運用管理を経験しています。コンテンツマーケティングには草創期と言われる6年前から携わっていますが、その当時から現在もなお、コンテンツマーケティングについて、誤って理解をされている方が少なからずいるような印象を受けます。

特によく聞かれるのが、「コンテンツマーケティングとは、メディアを立ち上げること」「おもしろいWeb記事を量産して、たくさん読者を集めること」という誤解です。

しかし、先に紹介した定義に照らしてみればわかるように、メディアや記事を作ることは単なる手段であり、本質ではありません。

適切なターゲットを設定する。ターゲットに向けてコンテンツ(やメディア)を作る。エンゲージメントを測定し、マーケティングの最終目的につなげる。この一連の流れこそが、コンテンツマーケティングです。つまり、多くの人がコンテンツマーケティングだと思っている「メディアの立ち上げ」「コンテンツの投下」は、コンテンツマーケティングの全体像から見ると、ただの一部分にすぎないわけです。

「コンテンツマーケティング」という言葉の先にあるもの

「コンテンツマーケティング」という言葉は、初期の頃にSEOの一手段という位置づけでよく使われていたことから、それがいまも続く誤解につながっている側面があります。実際、そのイメージはいまだに尾を引いていて、日本では「コンテンツマーケティング」という言葉自体が陳腐化していることは否めません。

「Google トレンド」で「コンテンツマーケティング」という言葉を調べてみると、人気度がピークだった2016年6月を「100」とすると、2019年4月以降は50以下、ここ半年はおおよそ40以下にまで落ち込んでいます。

しかし、「コンテンツマーケティング」という言葉が使われてなくなったからといって、コンテンツマーケティングが不要になったわけではありません。クライアントの要望を丁寧にヒアリングしていくと、施策として、本来の意味での「コンテンツマーケティング」を必要とされていることが多いと感じています。しかし、これまでなんとなく進めてきた従来のやり方では、継続的に施策を進めていくことは難しいのもまた事実です。今一度精査し、コストとメリットのバランスをどう取るか、新しい視点が求められていると思います。

コンテンツマーケティングの運用効果

「コンテンツマーケティング」という言葉はマーケティングのトレンドではなくなっており、クライアント自身があまり強く意識しなくなってきているように感じます。

実際、この1~2年、新規でオウンドメディアを立ち上げて、コンテンツマーケティングを実施しようとする案件は以前より減っているように見受けられます。

一方で増えているのが、「オウンドメディアを立ち上げて、コンテンツマーケティングを実施しているけど、運用効果がよくわからないし、運用コストがかさんで困っている」というご相談です。

オウンドメディアというのは、キャンペーンサイトと違って、継続的に発信していくものなので一度始めるとなかなか止めることができません。マーケティングの全体設計から見ても、何のためにやっているのかよくわからないままズルズル続いているという状態の会社は、意外と多いのではないでしょうか。

コストがかさむ理由とは?

オウンドメディアサイトの運営というのは、即効性のある施策ではありません。にもかかわらず、大きなコストがかかる手法です。コンテンツマーケティングの普及初期に、「(マスマーケティングに比べて)コストがかからない」という言説が広まったためか、低コストで実施できるというイメージがありますが、実際には非常に工数のかかる施策だということは、認識しておくべきと思っています。

オウンドメディアサイト運営のコストがかさむ原因を以下にまとめました。

原因1.コンテンツクオリティ向上の必要性

  • すでに数多くのメディアが乱立しているネット上で、多くの人にオウンドメディアのコンテンツを読んでもらうためには、コンテンツのクオリティが重要となる

  • クオリティの高いコンテンツを作るためには、有能なスタッフや制作会社が恒常的に必要なため、制作コストが増大する

原因2.メディア運営継続のための内部工数増大

  • メディア継続のためには、定期的なコンテンツの更新が必要となる

  • 内部工数(企画を決め、原稿を確認し、更新作業を行う)が増える

  • サーバーやCMS、各種計測ツールなどの維持費もかさみ、インフラコストが増大する

コンテンツマーケティングの見直しは、まずKPIの整備から

コンテンツマーケティングがうまくいかない最大の理由は、目的やKPIがブレることによって施策評価がうまくできないことにあります。これによって、上層部の説得が行えなかったり、投資すべき施策を見失ったりします。

ご相談にいらっしゃる担当者の方は、上司から「オウンドメディアを使ったコンテンツマーケティング施策は意味があるのか?」「これだけのコストをかけるだけの事業貢献価値は何か?」と指摘された、という方も多いようです。

この場合、われわれに求められているのは、担当者の方が上層部に「自社のオウンドメディアにはこういう価値があります」という説明をするための仕組み作りです。過去のデータや実績を分析し、事業貢献価値を測るための仕組み作り、すなわち、KPIの整備を行うわけです。KPIの整備を行った後は、KPIをモニタリングして、状況に応じて施策を設計し、コンテンツを企画し、最終的にサイトリニューアルまで担当することもあります。

ユーザーの質を測るKPIを設定する

「自分が担当している施策なのに、なぜ上層部から成果を問われて、すぐに答えられないのか」と疑問にお思いになる方もいると思いますが、コンテンツマーケティングの指標設定は難しいものです。コンテンツの価値は、単純に数字だけで測れるものでもありません。

たとえば、少し前であれば、「上層部にはPV数を報告していれば十分」という声もよく耳にしました。しかし最近は、「そのPVには何の意味があるのか?」と問い返されることも多く、表面的な数字を報告するだけでは納得していただけないことが多くなりました。実際、私自身も最近は、「PVだけ見ていても、意味はないです」とクライアントにはアドバイスしています。

では、何が重要なのか。そもそも、オウンドメディアとは、集客から成約までのマーケティングファネルにおいて、主に「潜在層ユーザーニーズの顕在化」を目的として立ち上げ、運営されているものです。つまり、オウンドメディアを立ち上げる前にはまず、商品やサービスの購入につながる、質の良い潜在ユーザーへのリーチと、ユーザーの購買意欲を向上させるコンテンツ企画、この双方のバランスの良い全体設計が求められるわけです。

オウンドメディアの運営に対して、上層部が求めているのは、「なんとなく多くのユーザー」を集めることではなく、「購入の見込みの高い潜在的ユーザー」を集めることです。だからこそPVではなく、ユーザーの質を判断するためのKPIが必要になってくるのです。

そうした観点から、一般的なKPIの設定の考え方を説明しておきます。マーケティングファネルごとにターゲットユーザーを設定し、コンテンツを「入り口」「中継」「出口」の3つに分けてKPIを設定するのです。

  • 入り口:流入ユーザー数

  • 中継:再来訪ユーザーの数

  • 出口:コンバージョンサイトやECサイトへの送客数

それぞれのKPIを計測することで、コンテンツの効果と役割を把握します。これである程度、オウンドメディアサイトの評価と、コンテンツマーケティング施策の成果を見える化することができるはずです。最低でもこの3つのKPIを継続してモニタリングすれば、施策の改善点が見えてきます。あとは、目的に応じて見るべき指標を増やし、施策を精緻化していけば良いかと思います。

これらを踏まえ、第2回では、オウンドメディアを含めたコンテンツマーケティング全体の設計を行うにあたって重要な、「5W1Hの設計」について、具体的にご説明します。