2020年12月10日

デジタルトランスフォーメーション

コラム 事例

地域活性化のカギは地元情報メディアにあり「TOWN JOURNAL OMITAMA」の挑戦

※所属・役職は記事公開当時のものです。

地方創生を推進すべく、数々の自治体がローカルメディアを立ち上げ、運営しています。茨城空港の所在地として知られる茨城県小美玉市も、2020年11月からハイパーローカル(超地域密着)メディア「TOWN JOURNAL OMITAMA」を立ち上げ、その持続可能性を計るための実証実験を開始しました。

ハイパーローカルメディアとは、ローカルメディアよりもさらに狭い範囲を対象とした超地域密着型メディア。本当に市民主体で運営できるのか、どのように書き手を集め、育成するのか、広告媒体として育てることができるのか。さまざまな課題を検証する今回の実証実験は、電通デジタル、株式会社カゼグミ、株式会社茨城新聞社、市民団体Omitama Shigoto、小美玉市役所の3社2団体が委員会形式で実施。電通デジタルは、CMSの開発・提供を担当します。本稿では、「TOWN JOURNAL OMITAMA」立ち上げの経緯、運営方法、目標などを、委員会のメンバーに伺いました。

TOWN JOURNAL OMITAMAはどのようなメディアか

――小美玉市地元情報メディア「TOWN JOURNAL OMITAMA」は誰に、どのような情報を発信するメディアなのでしょうか?

加形コロナ禍の影響で外出や遠出がままならなくなり、改めて地元に目を向けようという人が増えてきました。そういった人が求めているのは、地元のお店やイベント情報、生活に役立つ情報です。ただ、大都市でも観光地でもない地域の地元情報は、地方新聞やローカルテレビでも拾いきれない。だったら、いっそ市民主導で自分たちに必要なメディアを作ってしまおうというのが、「TOWN JOURNAL OMITAMA」です。

市民から公募し、訓練を受けたタウンレポーター(ライター)が地元の情報を発信することで、読む人にも書く人にもメディアへの愛着を深めてもらい、エンゲージメントと媒体価値を高めることで自走できるメディア運営を目指します。

清水小美玉市では、2014年に施行された「まち・ひと・しごと創生法」を受けて、2016年に「ダイヤモンドシティ・プロジェクト(総合戦略)」を策定し、市民主体のシティプロモーションを推進してきました[1]。本施策はその一環です。

小美玉市には、市を拠点とするタウン誌やケーブルテレビがありません。これまではマスメディアに頼った広報活動をしてきましたが、シティプロモーションを推進するにあたって、それに代わるオウンドメディアの必要性を感じていました。

実は、今回の実証実験は来年度に実施予定でした。1年繰り上げたのはコロナの影響です。コロナ禍により、小美玉市でも多くの飲食店や農家が厳しい状態に直面しましたが、私たちはそのことを発信するメディアも仕組みも持っていなかった。やはり自分たち自身で発信できるメディアを持たなければダメだと痛感したのです。

鈴木現在、小美玉市に関するサイトは、移住に関する特設サイト、ふるさと納税特設サイトのほかは、小美玉市の公式サイトとFacebookぐらいです。これに加えてコミュニケーション主体のメディアがあれば、市としてのメディア戦略がかなり整ってくると思っていました。

鈴木高祥氏(カゼグミ)

鈴木高祥氏(カゼグミ)

運営は民間3社+2団体による実行委員会形式

――「TOWN JOURNAL OMITAMA」の運営に携わっている組織と運営体制を教えてください。

清水今回の実証実験に先立っては、プロポーザル形式のコンペを実施しました。選定の結果、実証実験はカゼグミを契約主体とした3社+2団体(市役所と市民団体Omitama Shigoto)による実行委員会形式で実施します。

鈴木カゼグミが担当する事務局では、タウンレポーターの管理や、プロモーションのマネジメントを行います。われわれはこれまですでに、市民の皆さんと協力して「ダイヤモンドシティ・プロジェクト」を行っており、今回の施策にもそこで培った人脈が活かされています。

小松﨑「TOWN JOURNAL OMITAMA」のコアとなるのが、タウンレポーターです。大学生から60代まで幅広い年代の市民21人が自分たちの地域の情報を発信します。タウンレポーターの育成や記事の書き方については、地元メディアの茨城新聞社に研修をお願いしています。

細谷タウンレポーターの育成は、講座のほか、グループワークで実践的に取材と執筆のノウハウを身につけていただく予定です。

参加者の皆さんには、お互いに教え合い、スキルアップを目指していただく。足りないところは、私たち茨城新聞社がサポートします。

タウンレポーター募集の告知、Omitama Shigotoの田村美穂子氏(左)と小松﨑由美子氏(右)

タウンレポーター募集の告知[2]、Omitama Shigotoの田村美穂子氏(左)と小松﨑由美子氏(右)

清水市役所はタウンレポーターが活動しやすいようにサポートするのが役割です。既存のメディアでは拾いきれない情報をタウンレポーターが見つけて発信していく。地域で本当に必要とされている情報を市民主体で構築していくことが大事だと思っています。

――コミュニティマネージャーとは、どういう役割なのでしょうか?

慶野タウンレポーター主体の「TOWN JOURNAL OMITAMA」の場合は、情報発信者である書き手を増やすことが、何より重要です。まずは記事を読んでもらう、コメントしてもらう。次は、記事を一緒に書いてみない? と仲間になってもらう。段階を踏んで、参加しやすい雰囲気を醸成し、具体的なアクションにつなげていくのが、コミュニティマネージャーの役割です。

「TOWN JOURNAL OMITAMA」では、読んだ人が自分も関わろうと感じることで、行動する主体となってもらうのが最終目標です。そういう人たちが増えることで、まちがどんどんおもしろくなると思って活動しています。

慶野英里名氏(パラレルキャリア研究所)

慶野英里名氏(パラレルキャリア研究所)

――「TOWN JOURNAL OMITAMA」に関して、電通デジタルの役割は何でしょうか?

加形1つはこのプロジェクト全体設計。私は4年ほど前からマーケティングアドバイザーとして、小美玉市の地方創生とシティプロモーションに関わっています。情報発信に関する課題もOmitama Shigotoや市役所のメンバーと長年共有してきました。それを踏まえたプロジェクト設計をするのがまず1つ。

もう1つは、情報流通の仕組みを作ること。今回の実証実験では、電通デジタルの「ハイパーローカルメディアCMS」をカスタマイズして運用する予定でいます。

市民のメディアをビジネスとしてどう自走させるか

――「TOWN JOURNAL OMITAMA」をビジネスとして自走させるための運営資金、収益はどのような方法で獲得する予定でしょうか?

加形このメディアの特長は、自治体ではなく、市民の皆さんとそれをサポートする専門家の集団である実行委員会が運営しているという点です。「TOWN JOURNAL OMITAMA」は、市のメディアではなく、市民のメディアなんです。

だからこそ、小さくても自走する仕組みになっていなくてはいけない。そのために大事なポイントは2つ。①運営コストを少なくすること、②収入をある程度確保すること、です。

①に関しては、デジタルの恩恵を存分に活用することで、紙よりも格段にコストが圧縮できます。また、市民の皆さんが「TOWN JOURNAL OMITAMA」に記事を書くことが楽しいと思える仕組みを作ります。それによって、記事作成に関わる費用はそう多くはかからないのではないかと予測しています。

さらに、「TOWN JOURNAL OMITAMA」が地元で愛されるメディアになることによって、広告媒体、PR媒体としての価値が出てきます。それによって②の実現が可能になります。

たとえば、行政から市民へのお知らせは、今は紙がメインです。しかし、スマホしか見ない人も今は増えています。そういう人たちへの告知/連絡手段としても活用できるでしょう。

また、地元の事業者にとっては、ローカルテレビや新聞、タウン情報誌よりも、地域密着型メディアの方が広告の出稿価値は高くなるはず。「TOWN JOURNAL OMITAMA」を通じて、小さいけどきちんと回るローカル経済圏が作れるのではないかと考えています。

実証実験で検証したいこととは

――今回の運営/実証実験で検証したいことは、メディアがビジネスとして回るかどうかのほかに、何かありますか?

加形検証ポイントは、3つあります。1つ目はビジネスとしての持続可能性。2つ目は市民主導でメディア運営を続けられるか。3つ目は、メディア運営をする中で、どれだけの人がタウンレポーターとして積極的に関わってくれるのか。これも大事な検証ポイントです。

――実証実験のスケジュールは?

加形実証実験の期間は、2020年11月~2021年3月までを予定しています。

11月にタウンレポーターの募集と研修を行いました。12月には取材テーマの提出、取材、Webサイトへの記事のアップまでを行って、1周目を回します。1月からはその成果や課題を踏まえて2周目を回して、最終的には100本近くの記事をWebサイトで公開したいと思っています。3月までにこの2サイクルの成果と検証結果をまとめる予定です。

――小美玉市役所としては、特にどのポイントに着目しますか?

清水やはり、何よりも自走が可能かどうか、市の支援が必要だとしたらどのように支援したらいいのかを知ることが、今回の一番のポイントだと思っています。

清水弘司氏(小美玉市役所)

清水弘司氏(小美玉市役所)

TOWN JOURNAL OMITAMAでつくる小美玉市の未来

――「TOWN JOURNAL OMITAMA」によって、小美玉市をどのようなまちにしていきたいと考えていますか?

小松﨑自分の住んでいるまちの魅力を、書くことで外の人に伝えるという行為は、自分のまちに自信を持つきっかけになるんじゃないでしょうか。そんな人がどんどん増えていけば、市内の人だけでなく、市外の人にも小美玉を好きになってもらえるはず。そんな発信ができるように意識して取り組みたいです。

細谷私ども、既存のマスメディアが、地元情報や小さなニュースまで拾うのは難しい。今回、小美玉市の皆さんが自分たちのプラットフォームを作るプロジェクトに関わらせていただけるのは、弊社にとっても知見を広げるいい機会です。今後の弊社の社会貢献やCSRにも活かせればと思います。

細谷あけみ氏(茨城新聞社)

細谷あけみ氏(茨城新聞社)

鈴木市民が運営に参加できるメディアというのは、まだまだ茨城県内には少ない。「TOWN JOURNAL OMITAMA」が、見る、読むだけでなく、書ける、参加できるメディアの先駆けとなって、情報発信に興味を持つ若い人のベンチマーク的な存在になればいいなと思っています。

慶野コロナ禍の影響もあって、移住や2拠点とまでいかなくても、ワーケーションでちょっと郊外に行ってみたいというニーズは今とても高まっています。ガイドブックに載るような規模ではないまちでも、ハイパーローカルメディアがきっかけとなって、いろいろな交流が生まれれば嬉しいです。

清水「ダイヤモンドシティ・プロジェクト」と並行して、小美玉市の情報発信のDX化も進めています。市役所各課の広報物やイベントPRも、「TOWN JOURNAL OMITAMA」と連動した情報発信ができるようにしたいですね。

加形私は小美玉市に関わって4年ほどになります。電通デジタルとして何かお役に立てればということで、今回の実証実験に参加しました。今回の実証実験ではいろいろな課題も出てくるかもしれませんが、成果も課題もひっくるめて、他の自治体の皆さまにも還元できる知見としていきたい。自治体で情報発信に関する業務をされている方は、ぜひお気軽にお声がけいただければと思っています。

加形拓也(電通デジタル)

加形拓也(電通デジタル)

脚注

出典

1. ^ "ダイヤモンドシティ・プロジェクト".小美玉市. 2020年11月13日閲覧。