2023.11.17

協創で実現するグロースデザイン~NTTドコモに見る事業グロース成功のカギ~

電通デジタルは2023年8月28日~9月28日、「Transformation Forum~DX戦略から現場業務まで企業の未来を創るアクション最前線」と題し、オンライン&リアルのハイブリッドにてセミナーを開催しました。※1

DAY8では、4つのセッションを開催。多くの事業責任者・担当者が抱える代表的な課題を取り上げ、具体的な解決の糸口を提供しました。

そのうちの1つであるセッション#2では、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)で会員基盤の価値向上を担う白井拓也氏(ドコモ スマートライフカンパニー コンシューママーケティング部 dポイント戦略 担当課長)をお招きし、どのような視点を持ってグロースに取り組むべきかについて、事例を中心にお話しいただき、事業グロースのための成功のカギを探りました(電通デジタルは、2019年からドコモに常駐し、dポイント事業の会員獲得やその後のコミュニケーション、そして現在は新たな価値創出の取り組みで協創しています)。

※本記事は、2023年9月28日に開催されたセミナーの内容を採録し、再構成したものです。
※所属・肩書は2023年9月時点の情報です。

ドコモが取り組んでいる事業の紹介

はじめに、現在ドコモが取り組んでいるスマートライフ事業について、白井氏から説明がありました。

現在ドコモは、通信・回線領域だけでなく、dポイント、ヘルスケア、電気、金融/決済、エンタメなど、スマートライフ領域の事業に取り組んでいます。スマートライフ事業に関しては、2022年度から「スマートライフカンパニー」が発足し、サービスの創出・提供・開発、カスタマーサクセス、会員エンゲージメント強化などに関する業務を行っています。

白井氏の所属するコンシューママーケティング部は、カンパニー内の生活者向けマーケティングの横串機能を持っていて、顧客接点/コミュニケーション、マーケティング企画、dポイントクラブの会員基盤を使ったデータ活用/顧客理解などを実施しているとのことです。白井氏は、コンシューママーケティング部の取り組み例として、次の2つを挙げました。

1つ目の取り組み例は、「カボニューレコード」です。これは、利用者のdアカウントに基づく行動データおよび手動記録情報から、CO2の削減量や環境貢献度を数値化するサービスで、2023年1月に開始しました。

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2つ目の取り組み例は、「社会OS構想」です。これは、ドコモの会員基盤のデータやポイント/決済、顧客接点といった機能を金融、人流・交通、購買・消費、エネルギー/まちづくり、医療/ヘルスケアなど、いろいろな領域で活用することで、社会課題を解決し、社会を豊かにするプラットフォームに進化させていく取り組みです。

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グロースの陥りがちな罠

続いて、電通デジタルの川原真哉が、グロースの陥りがちな罠について解説しました。川原は2019年からドコモに常駐しながら、伴走型でDX推進、事業のグロース支援を行っています。

日本企業においてはDXの取り組みが広がり、新規事業や新規サービスの立ち上げも増加しています。しかし、こうしたDX関連のプロジェクトでは、「マーケティングツールを導入したがいまいち活用できていない」「新規事業/サービスを立ち上げたが、その後の成長が見えにくい」といった悩みも多く聞く、と川原は言います。

「導入・立ち上げ後の検討が十分になされない結果、グロース活動ではUX視点、すなわち『ユーザーにどのような価値を提供するか』の視点が抜け落ちてしまい、事業やサービスのグロース(成長)に直結しないPDCAが日々実行されてしまっている状態も見受けられます」

顧客視点を持って業務に当たってはいるものの、全体の顧客体験の考慮や、最初に構想していたUXをさらに深掘りしていく、などが若干不足している状況を、電通デジタルでは「グロース活動におけるUX深化の壁」と呼んでいます。

そういったUX深化の壁にぶち当たってしまうと、部分最適の活動になってしまうというところが「陥りがちなグロースの罠」であると川原。「正しいグロースは、顧客体験全体やバリューチェーン全体の最適化を考慮した活動/施策」であるとし、その違いを図で説明しました。

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「我々が考えるグロースは、主に2つあります。1つは、現状のサービス/プロダクトの活性化。もう1つは、既存の事業全体も対象に含め、現状の提供価値をアップデートし、新たな価値を生み出すことによる市場創造です」

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そして、ドコモにおける「現状のサービス/プロダクトの活性化」の例として「カボニューレコード」、新たな市場創造の例として「社会OS構想」を挙げ、白井氏につなぎました。


ドコモはどのようにしてグロースを実施しているのか?

「カボニューレコード」「社会OS構想」でどのように顧客視点を取り入れ、グロースを実施しているのか、白井氏が説明しました。

カボニューレコードでのグロースの取り組み

白井氏はカボニューレコードについて、「本当に新しいチャレンジで、サステナビリティ領域においてお客様情報を記録・可視化することで、習慣化・行動変容を促すサービスです」と切り出しました。

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カボニューレコードのグロースは、システム開発部署、研究開発部署、コンシューママーケティング部が部署横断で連携してスクラム開発チームを組成し、日々改善を実施しています。ここをうまく回すポイントについて白井氏は、「実務者に権限委譲してクイックに進行できるような体制をとっていることと、意思決定をする際に、必ずユーザー視点を決定基準にしていること」を挙げました。これにより、各担当者はサービスのグロースに集中して取り組むことが可能になっていると言います。

「ただ、ユーザー視点を持っていても想定どおりにいかないこともありました」と話す白井氏。「UI/UXの再検討に関しては、電通デジタルに加わってもらって、UXの深化をサポートしてもらいました」

UXを深化させる上での検討ポイントを、白井氏は2つ挙げました。1つは、顧客体験を網羅的に捉え直し、ファネル上のボトルネックを把握したこと。もう1つは、体験設計に基づいてKPIを再設定し、細分化し、見える化した上でモニタリングすることで、グロースを進化させるようにしたことです。

「その結果、サービス内の動線が改善できたり、獲得キャンペーンによるターゲット設定や施策仕様を工夫したりしたことで、改善を実施した翌週以降の訪問率が、導入当初の10倍にアップしました」

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社会OS構想におけるグロースの取り組み

次に白井氏は、社会OS構想の取り組みを紹介しました。社会OS構想は、範囲がとても広いこともあり、各業界パートナーやNTTグループ各社との連携・協創も必要な取り組みです。白井氏は今回、その中から「まちづくり」の取り組みについて説明しました。

「まちづくり」においては、ドコモとグループ会社であるNTTアーバンソリューションズ両社のアセットや、パートナーとの連携により、生活者が豊かになるプラットフォームを実現することを目的としています。

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「ドコモの強みは、ユーザーをデータで把握できるという点」と白井氏は言います。「まちづくり」では、ユーザーを位置情報データにより、「就労者」「居住者」「来街者」「観光者」の4分類に分けて把握。その上で、エリアを起点とした多様なソリューションとマッチングするためのデータをパートナーに提供していけるようなことができないか、パートナー企業と議論を進めていると話しました。

ある程度「まちづくり」構想の方向性が固まってきたところで、クイックウィン施策のPoC実施を検討していると白井氏。「ただ、構想からPoCに移る際にUXの検討を十分に行うことは難しく、結果うまくいかずに構想が中止になることもあります。しかし、PoCの時点でもしっかりUXの検討をしていきたいと考え、ここでも電通デジタルに協力を依頼しました」

構想とクイックウィン施策実施の間に、「そのまちにはどんな人がいるか」「どんなペインがあるのか」などについて、データをもとにペルソナや共感マップ、カスタマージャーニーマップを作成。しっかりUXを作り込んだ施策を検討したと話す白井氏は、「その結果、トライアルとしても実のあるものになり、次につながるような取り組みになりました」と施策の成果を高く評価しました。

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川原は、「ドコモの取り組みは総じて非常にうまくいっているが、全体最適も考慮した活動/施策を進めるのは難しいことも多い」との見方を述べ、正しいグロースのためのキーワードとして「曖昧力」を挙げました。

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「曖昧力とは、曖昧なまま進めるという意味ではありません」と注意を促した上で川原は、「先行きが不透明かつ予測困難なVUCAの時代においては、最初に検討していたプランニングや計画は常に変わっていくことが当然」と続け、「常に状況を見極め、正しいグロースを実行するためには、少し引いた視点から曖昧力を持ちながら判断し、OODA(ウーダ)ループを回していくことが重要」と語りました。

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「OODAループとPDCAサイクルを掛け合わせながら、データや根拠に基づいて、意味のある正しいグロース活動を行うことが必要」という川原は、最後に「PDCAサイクルだけだと、最初にプランニングした数値にこだわってしまうというところもありますが、そもそもプランニングをする段階からOODAループによって正確に情勢を判断して、今やるべき施策や打ち手を実行することを細かく回していく。そういった方法が現在のグロースには求められるのではないかと思っています」と語り、セッションを終えました。

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