2023.11.20

患者中心の視点をビジネスへとつなげる伴走型の一気通貫サポートとは

【第4回】DDMEX VOICE

製薬・ヘルスケア業界の課題に向き合う電通デジタルのCXプロフェッショナル達が、医師と患者の治療体験の刷新を実現するためのノウハウを解説するDDMEX VOICE。第4回では、患者中心の視点を基点にした仮説の精緻化、調査、プランニング、データドリブン施策までを一気通貫で提供できる電通デジタルの強みをお伝えします。

仮説を精緻化することで、患者理解の解像度を上げる

――最近では、製薬・ヘルスケア企業も患者中心のペイシェントジャーニーの重要性に注目し始めています。その理由をどのように捉えていますか?

田中:「治療のゴールは何か」という考え方が、時代とともに変わってきているのだと思います。これまでは、迅速に病気を治すことがゴールだと考えられてきました。しかし今は、患者がどのように生活をすることが幸せなのかをきちんと考え、治療を継続してもらうことを重要視するようになってきているのです。

特に難病や希少疾患など、その病気と長く付き合わなければならない場合では、患者が治療をやめてしまわないような取り組みが大切になってきます。患者の肩をそっと押すような形で、患者自身が治療を続ける/やめないという選択を、主体性を持って選びやすい状況を作る「ナッジ理論」などを応用して、患者のQOL(Quality of life)を考慮した、寄り添い型の治療が求められています。

こうしたニーズから、患者中心のペイシェントジャーニーに注目が集まってきているのだと思います。

――患者中心の考え方への理解が進む中で、製薬・ヘルスケア企業として、どのような取り組みが必要になってくるのでしょうか。

田中:医薬品のマーケティング戦略を立てる際には、製薬会社は調査をしますが、そのときの仮説の立て方が、プロダクト中心になってしまうと、プロダクト中心の考えに基づいた調査結果が出てくることになるでしょう。こうした調査結果ももちろん大切なのですが、医療従事者が求めるような、患者のQOLに寄り添った治療を実現するためには、より患者中心の視点での仮説の立て方が重要になってくるのです。

田中 扶美子(電通デジタル CXトランスフォーメーション部門 CX戦略プランニング事業部 CX戦略プランニング第2グループ マネージャー)

――仮説の精緻化が必要になってくるということですね。

田中:製薬・ヘルスケア企業は、これまでの調査結果などから、すでに多くの仮説を持っている場合があります。社外の人間である我々は、まずその仮説を疑うところから始めます。

デスクリサーチはもちろん、電通グループの持つデータやツールを活用したり、社内インタビューをしたりしながら、ありとあらゆる仮説を検討します。そこで立てた仮説を一つひとつ潰していきながら、生き残った仮説をまたブラッシュアップしていく。電通デジタルには、こうした仮説の緻密化に長けた環境があり、経験豊かなメンバーがいるのが強みだと言えるでしょう。

また、社外からの視点で見るということも重要です。自社のことを自分たちで分析するのは、とても難しいものです。我々が、客観的にデータやファクトを分析したり、取り巻く環境を俯瞰して見られたりする立場であるのも大きなポイントだと思います。


企業をインスパイアし、一気通貫でサポートできる強み

――製薬・ヘルスケア企業も自社で、多くの調査データを持っていますが、それを客観的に見る視点が必要だということですね。

田中:製薬・ヘルスケア企業も、一つのことに深く従事しているからこそ得られる、患者の深いインサイトをお持ちです。そこに電通デジタルが得意とするCX視点での仮説を合わせて議論すれば、何を本当に深掘りすべきかすべきでないかが、見えてくるように感じています。

あるクライアント企業に言ってもらってうれしかった言葉があります。「電通デジタルには製薬や医療のプロとしての知見を持ってほしいわけではない。我々とは違う視点でインスパイアして欲しい」と言っていただいたのです。

もちろん基本的な薬機法など規制に関する知識は必要ですが、我々が、クライアント企業をインスパイアできる存在として、同じゴールに向けて新しい道を一緒に進んでいくような、伴走型のサポートができるのが理想です。

――こうして深掘りすべき仮説が見えてきたのちに、インタビューなどでその仮説を検証するのが次のステップになりますね。

田中:患者が本当に何に困っているのかを紐解くのには、患者だけを紐解いても見えてこないことがあります。インタビュー対象は、患者をサポートする家族であったり、医師や看護師、薬剤師であったりする場合もあるでしょう。誰にインタビューするかも、仮説によって決まってくるのです。

また、実際にインタビューしてみると、仮説とは真逆の結果が出てくることもあります。定量的なアンケートでは、細かなインサイトまで深掘りすることは難しく、大きく困っていることはないけれど、実は小さな困りごとはある、などというようなことは、インタビューだからこそ深く聞くことができるのです。

例えば、病気に対して不安があると言っても、いろいろな要素があります。今の治療が不安というよりも、歳を重ねるとどういう変化があるのか、周りに同じような病気の人がいないので悩みを共有できないなど、その人その人の生活や状況に応じた不安があるのです。そうしたさまざまな不安を知ることで、私たちが製薬会社と共に実現できる患者サポート支援の施策も変わってきます。

――こうした仮説の精緻化や調査から継続して、プランニング、データドリブン施策まで、一気通貫で提供できるのも、電通デジタルの強みです。

田中:患者の中には、医師によく思ってもらいたいがために、薬を飲んでいなくても「飲んでいます」と答えてしまう方もいらっしゃいます。その患者の生活を理解し、前向きに治療に取り組んでもらえるようにする仕組みがあれば、医師の薬の処方行動にも変化が出てくるはずです。例えば、その患者の家族をサポートしたり、同じ病気のコミュニティに参加してもらい患者の不安を和らげたりするなども有効でしょう。

こうした戦略立案・プランニングを実施し、取得したデータからPDCAを回すデータドリブン施策まで、一気通貫したサポートができるのは、電通グループの総力を生かせる電通デジタルだからこそです。こうした一連の支援によって、患者の治療への貢献にとどまらず、医療従事者へのアプローチの機会の拡大にもつなげられると考えています。


患者のニーズと企業の課題、伴走型の支援で両者をつなげる

――最後に、DDMEXを通して貢献していきたいことや、今後の抱負をお願いいたします。

田中:ある製薬会社の担当者の方が、熱い思いを語ってくれたことがありました。「患者は、治療に向き合いながらもすごく我慢している人が多い。我慢しなくていいよと伝えてあげたい」。私はこの言葉に非常に感銘を受けました。

この思いを実現するべく、我々の知見を生かして一人でも多くの患者を救うことができればと、日々取り組んでいます。ただ、患者のニーズと製薬・ヘルスケア企業のビジネス課題が直結しない場合があることも事実です。その両者をつなげるコミュニケーションプランを、患者視点で考えることが大切です。このコミュニケーションプランがうまく設計できれば、一見すると社会貢献とも言えるような施策でも、医療従事者の評価につながり、企業の信頼感を増すことにもつながるでしょう。結果として、患者や医療従事者の納得感を高め、ビジネスとしても貢献できるようになると思っています。

最近では、こうした患者視点を製薬・ヘルスケア企業が自社で持ちたいという要望も高まってきており、CX研修のご依頼を多くいただくようになりました。経営層だけでなく、現場で活躍するMRの方にも、CXの重要性を深く理解いただくことで、ペイシェントセントリックな活動がさらに広がっていくと考えています。

我々が伴走型でご一緒させていただき、患者中心の視点で見るとはどういうことなのかを体験していただければと思っています。

CX視点で「患者中心」の医療を実現することが、ビジネスチャンスの拡大につながる
医師と患者のより良い体験設計を実現するペイシェントジャーニーの作り方
リアルワールドデータ×患者視点のファーマCXが、新たな打ち手を生み出す

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