電通デジタルでは、2024年1月から世の中のコマースニュースをお届けするウェビナー「電通デジタルコマースニュース」を開催しています。本記事では、ソリューションディレクターの髙田拓之が、開催したウェビナーの内容を振り返りながらお届けします。今回のテーマは、2023年のコマーストピックス振り返りと、2024年のAI事情についてです。
2023年コマース業界振り返り
コロナ禍を経て、リアルとデジタルの共存というテーマが注目されました。物流、OMO、BOPIS(Buy Online Pickup In Store)などが採用され、マーケティングではGA4への切り替えや3rdパーティCookieの利用制限などが話題となりました。マーケターやコマースに携わる皆さまの業務にも、変化が生じた年だったのではないでしょうか。
さらに、TikTokの台頭やInstagram、ライブコマースなど様々なチャネル活用に加えて、生成AI / ChatGPTの普及も進みました。また、リアル店舗ではインボイス制度の対応が進むなど、コマース業界では様々な事柄がありました。
2023年 EC業界の主なトピックス
- 1月:物価高で運送業が痛手。2024年問題も
- 2月:ZHD、ヤフー・LINEとの合併を発表
- 3月:政府、ステルスマーケティング広告規制を閣議決定。商品レビューの依頼はNG行為に
- 4月:Chat GPTがコマース業界にも参入し始めるように
- 5月:TEMU日本上陸を発表
- 6月:ヤマト運輸、ネコポス終了へ
- 7月:GA4本格稼働
- 8月:ふるさと納税、返礼品を納税額の5割以下へを発表
- 9月:経済産業省、22年のBtoC ECの市場規模を発表
- 10月:経済産業省、23年上期の小売業販売額発表。前年5.9%増
- 11月:ブラックフライデーは11月24日から。各地で好調な推移
- 12月:消費者庁、解約料に関する実態調査を発表
上記はごく一部ではありますが、1年間にこれだけのことがあった2023年。ここでは、さらに「物流2024年問題」「ヤフーLINEの統合」「リテールメディア」について解説します。
物流2024年問題
通称「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限(※1)することによって発生する問題の総称のことです[注1] 。
通販事業に焦点を絞ると、労働時間が短くなることで物流会社の輸送能力が低下し「物が運べなくなる」可能性に加えて、物流業界全体の課題でもある人手不足、ガソリン代などの原価高騰がのしかかるといわれています。結果として、通販事業においては運賃の値上がり問題が発生することが容易に想像できますし、皆さんも感じていらっしゃることかと思います。
この問題に対して通販事業各社では
- 再配達の削減
- 配送効率化(まとめ配達:荷物の仕分けや配達コースを効率化したり、AIで最短ルートを示唆)
- コンパクト化(梱包サイズの見直し、配送リードタイム緩和等)
などが対策として掲げられてきています。
「送料無料」の表記については、有料化と、買い控えを懸念し変わらず表示しているものと二極化しています。生活をする上でなくてはならない事業となった通販サービスを営む事業者だけではなく、我々も一消費者としての意識改革を求められる問題です[注2] 。
LINEヤフー統合[注3]
2023年10月にヤフーとLINEが正式に経営統合し、LINEヤフー株式会社として新たに再編・発足しました。
電通デジタルでは、これまでLINE、ヤフー各社のパートナーとしてクライアント企業のマーケティング支援を行ってきましたが、今回の統合によるコミュニケーション設計やデータ活用の幅が広がりに大きな期待を寄せています。
統合直後には、それまで各社が保有していたデータ基盤を統合することによりLTVを最大化するソリューション基盤が設けられ、同4日よりLINEとヤフーのアカウント連携したサービスが開始されました。
統合されたデータ基盤
- ユーザーアカウントの連携(LINE IDとYahoo! ID)
- ビジネスアカウントの共通化
- データソリューション / 広告プラットフォームの統合
なお、2024年にはPayPayとのアカウント連携も準備を進めているとのことで、決済プラットフォーマーとして、ユーザーの生活がより良くなるようなバリュージャーニー型の事業展開が織りなされているように見て取れます。
その中で、コマース事業者がいかに立ち回り、メーカー・サービサーとして機能提供していけるかが、これからのビジネスの鍵になるのではないでしょうか。
リテールメディア
商品の動画広告を目にする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。
「リテールメディア」とは、「小売事業者が外部向けに広告媒体(=メディア)として提供している媒体そのもの」を指しており、小売業者が自社で独自に収集した顧客の購買データや行動データ(ファーストパーティデータ)を活用し、広告を配信することができるメディアとして、昨今、注目が集まっています[注4] 。
ドラッグストアや家電量販店などが先行して導入を進めてきた中で、2022年9月にはコンビニエンスストア最大手のセブン–イレブン・ジャパンがリテールメディア専門組織を新設したことも注目を集めました。
電通グループのCARTA HOLDINGSの調査[注5]でも、データ活用における顧客接点として予想を上回る成長スピードを見せており、導入展開する店舗事業者の割合も増えてきているようです。
リテールメディアは単純なサイネージメディアではなく、三方向で恩恵が得られるということが大きな理由です。
① 小売企業(リテールメディア提供側)
- 商品販売以外の収益(広告媒体)が得られる
- 元々あったオフラインデータを応用し、販路拡大に活かせる
② 広告主(リテールメディア利用側)
- 小売企業が保持しているデータを活かし、精度の高いマーケティングを実現できる
- 直接購入したアクションに結び付くプラットフォーム上で広告配信ができるため、親和性の高いアプローチが可能(認知拡大・ブランディング効果もある)
③ 消費者
- 興味関心の高い広告のみが表示され、購買への不快感が減る
- 興味関心に沿ったタイミングで表示され、購入体験の満足度が上がる
個人情報保護の観点による 3rdパーティCookieの規制や、プライバシーファーストな広告配信がより意識される昨今において、メディアの収益低下と広告主の広告効果悪化が懸念されてきましたが、そうした暗いムードを打破するメディアとしての貢献に期待しています。
ECによるAI活用
コマース業界でもChatGPTが活用され始め、AIが広く認識された2023年でした。2024年もEコマースにおけるAI活用として、これまでの顧客体験を代替し、さらに高度化していくことが予想されます。
顧客視点に立った場合のウェブサイト内検索やレコメンド、また運用側視点では、問い合わせに対するAIでの回答や商品登録やコンテンツなどにもAIが活用されている場面は出てきています。
運用側では、ChatGPTの普及により、商品説明文からSEOに根差したコンテンツの作成、メールマガジンの作成などでの活用も増えてきているようです。
問い合わせのカスタマーサポートでも、チャットボット・AIチャットは以前からありましたが、最近では音声を使ったAIチャット対応も登場しています。
株式会社ニュウジアでは、AI技術を活用した人間そっくりのデジタルヒューマンのサービスを日本市場に送り始めています[注6]。一目では見分けがつかなくなっているレベルまでクオリティも上がっています。
人を介さないメリットとして、日本語に限らず、英語や中国語などの多言語対応が可能だったり、企業側の思うようなイメージキャラクターを作り出したりすることができます。また、デジタルヒューマンは24時間・365日稼働できます。
ウェブサイト内検索やレコメンドにもAIは活用されていますが、今後は提案型のAI活用が見込まれます。
Google社では自社の高度な検索機能を活用して、ユーザーニーズに合わせた検索結果を表示させるRetail Searchを発表[注7]。ユーザーの買い物履歴を学習して、最適化されたパーソナライズな結果を表示させます。検索窓にあいまいな表現で入力しても、「欲しいもの」が表示されることが可能です。
また、Recommendations AIという機能もあり、ZOZOTOWNでは、ユーザーへのお勧めについて、自社開発のレコメンドとGoogle社のRecommendations AIをABテストし、レコメンドの効果と運用コストの最適化でGoogle社を採用[注8]したというコメントもありました。
AIにおけるビジネス成長は2024年も伸びていくと予想されますので、ご自身の業務にどのように活用できるか、活用シーンを想い描いてみるとよいと思います。
コマースのトピックだけでも様々な変化が起きています。最新の情報をキャッチアップし、積極的に活用していきましょう。本記事が皆さまの業務に少しでもお役立ていただければ幸いです。
電通デジタルコマースニュース
コマースウェビナー開催中
日々コマース事業に勤しむ皆さまに、最新のコマースニュースをお届けしていきます。
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- 会社内での話のネタに
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ご活用いただけたら幸いです。
ぜひご視聴ください。
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脚注(出典)
1. ^ 物流業界「2024年問題」を一から解説 働き方改革関連法制定の背景と物流業界の抱える課題
2. ^ 通販・EC企業に聞く「物流2024問題」への対応。「再配達削減」などの対策は?「送料無料」表示の見直しへの意見は?
3. ^ Yahoo!とLINEの経営統合で今後どうなる?合併の影響について解説
4. ^ リテールメディアとは?仕組みや取り組むメリット、活用事例を徹底解説
5. ^ CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査を実施
6. ^ 最先端のAIデジタルヒューマンを日本市場に本格投入!
7. ^ Google 品質の商品検索機能を手軽に構築「Retail Search」のご紹介
8. ^ ZOZO:A/B テストの結果 Recommendations AI により ZOZOTOWN 全体の注文金額、注文数、商品閲覧数で 101% 以上の効果を達成
※1:月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年960時間を限度)
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